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【慟哭】闇組織を討て

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【慟哭】闇組織を討て

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第2章 襲撃

 眩しい光が射し込み、朝の訪れを知る。
 正門正面に程近い場所にある陣に、遠距離攻撃班は既に集まっていた。
 通る者がいれば、自分達の存在は簡単に知られてしまうだろう。
「行きます」
 アレナは伽羅の指示に従い、弓を強く引いた。
 打ち出された光の矢が空へと舞い上がる。
「目標は門衛2人。討て!」
 はディフェンスシフトで皆の護りにつく。
「確り頼みまんねん」
 パートナーのフィルラント・アッシュワース(ふぃるらんと・あっしゅ)は、隆光黒実に、パワーブレスをかける。
「了解」
「任せとき!」
 遠距離攻撃班の一斉射撃と同時に、上空も慌しくなる。
「アクア、明りが点いている部屋を目指せ!」
「分かった。気をつけて」
「操縦頼んだぞ!」
 蒼空学園の葉月 ショウ(はづき・しょう)は、パートナーの葉月 アクア(はづき・あくあ)に小型飛空艇の操縦を任せ、右手にカルスノウト、左手に銃剣型の光条兵器を持ち、真っ先に上空から飛び込んだ。
 即座に気づいた警備員が銃を撃つ。運転に集中していたアクアが上手く躱し、ショウは窓ガラスに剣を叩きつけた。
 部屋の中に居た者達は、廊下へと飛び出ていく。飛翼種の姿も見えたが、飛び出してはこない。
「アクア、隣の部屋だ」
「うんっ」
 建物の中まで追いはせず、ショウは剣を振り回し、叩きつけていく。
「さて、行きますよ――!」
 イルミンスールの御宮 万宗(おみや・ばんしゅう)は、空飛ぶ箒を操り、館上空へ出ると、2階の窓に向けて煙玉を投げ込んだ。
 即座に魔法を唱え3階に火術を放った。
 斥候班が得た情報から、2階3階には人質はいないようだと参謀班は分析した。だが火事にするわけにはいかないので、火術は多用できない。
 万宗に続き、守護天使のジェーン・アマランス(じぇーん・あまらんす)が空を飛びながら煙玉を2階に投げ込む。
 大した効果はないのだが、正体不明の煙を出す玉に、室内に居た者達が飛びのく。
 イルミンスールの綾瀬 悠里(あやせ・ゆうり)は空飛ぶ箒を操りながら、禁猟区を発動する。
「こちらに注目していて戴きましょうか」
 悠里は地上で銃を撃つ敵兵達の上を緩急をつけながら飛び回り、魔法を上階へと打ちこむ。
「うっ」
「ふふ……っ」
 敵兵が小さな声をあげ、隣を飛んでいた守護天使、パートナーの千歳 四季(ちとせ・しき)が小さく笑い声を上げた。
 四季はロケット花火に点火をして、敵兵達に向けて発射している。ただ、風の影響により飛びながらの点火はなかなか難しく、敵兵の数が多くなるにつれ、ロケット花火を打ち込む余裕はなくなっていく。

 隆光の狙撃で、門衛の1人は既に倒れている。銃弾を盾で防ぐ残りの門衛の耳に、別の方向からのエンジン音が入る。
 正面の道を真直ぐに軍用バイクで突き進んできたのは白百合団のヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)をサイドカーに乗せた大岡 永谷(おおおか・とと)であった。
 門衛が銃を2人に向けるも、続々と現れる仲間達に、銃口が迷い四方八方に銃弾が飛ぶ。
 雷術が放たれ、門衛の1人が銃を落とす。
「わいがフォローしますわ。おぬしの好きにして良いですわ」
 薔薇学の早川 呼雪(はやかわ・こゆき)の白馬の上からヴァーナーのパートナーセツカ・グラフトン(せつか・ぐらふとん)が、声を上げる。
「悪い人はおしおきです!」
 門の前で降りたヴァーナーは、門衛の足に槍をつきたてる。
 次の瞬間に、黒実の銃弾が門衛の身体を貫いた。
 薔薇学のクリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)クリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)が、蒼空学園の空井 雫(うつろい・しずく)アルル・アイオン(あるる・あいおん)を白馬乗せて駆けつけ、全員で門を押す。
 その間に、小型飛空艇、空飛ぶ箒を所持している人物達は塀を飛び越えて敷地内に降り立つ。
「……何処にでも悪党はいる物だな……行くぞ」
 蒼空学園のクルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)が、敷地内に降り立つ。
「うん!」
「光、気をつけてください」
 蒼空学園の陽神 光(ひのかみ・ひかる)はクルードの後に従い、パートナーでプリーストのレティナ・エンペリウス(れてぃな・えんぺりうす)は門近くに立つ。
「私はあなた達を許せません!」
 クルードのパートナーユニ・ウェスペルタティア(ゆに・うぇすぺるたてぃあ)は、レティナの隣に降り立つ。
「クルードさん、皆さん! 援護は任せてください!」
「窓からの狙撃に注意です」
 後衛としてユニとレティナは周囲の状況に目を光らせる。
「……覚悟はいいか……【閃光の銀狼】の爪牙……見せてやろう……その身に刻め!」
 クルードが地を蹴り、上空の仲間に惑わされている警備兵に斬り込む。
 警備兵が剣で攻撃を受けるより早く、クルードの剣が警備兵の肩に叩き込まれる。
 即座にクルードは後方へと跳ぶ。敵の攻撃は空を割き、クルードには届かない。
「こっちこっち!」
 光は突出しない。屋敷から現れた武装した敵に、リターニングダガーを投げつける。
 魔法のナイフは、敵の腕を裂いた直後に光の元に戻ってくる。
「本当に、許しがたい行為です」
 小型飛空艇から降り立った蒼空学園の緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)は、火術を放つ。
 光に迫る敵の体が炎に包まれた。
「遙遠は下がっていて下さい」
 遙遠パートナーでヴァルキリーの紫桜 遥遠(しざくら・ようえん)は、カルスノウトを手に、炎に包まれた敵の足を狙い斬り裂く。
 止めは刺さず、前衛に出て屋敷から飛び出す者達と斬り結んでいく。
「よし、沢山出てきたな!」
「ゼロ、今です」
 蒼空学園の永夷 零(ながい・ぜろ)ルナ・テュリン(るな・てゅりん)は、最後に降り立ちプリースト達の前を自分達の位置とする。
 武装した敵が次々に飛び出てくる。
 頃合を見て、零は弾幕を張る。
 バーストダッシュで飛び出そうとした敵ヴァルキリーの動きが鈍る。
「チャンスッ」
「……甘い!」
 光がナイフを放つ。避け、隙ができた敵ヴァルキリーをクルードが斬り倒す。
「ゼロ!」
 ルナが零の前に立つ。
 2回からバルコニーに飛び出した敵が氷術を発動する。ルナの身体が凍り付いていく。
「ルナ!」
 零は即座にアサルトカービンを撃ち込む。腕を撃ち抜かれた敵が、室内へと飛び込む。
「大丈夫です」
 ルナは、カルスノウトをぎゅっと握り締める。
 自らは攻撃しない。零の傍で、彼を援護するつもりだった。
「百合園女学院、白百合団見参! ですっ!」
 開かれた門より、白百合団の純白の甲冑を纏ったヴァーナーが姿を現す。
「さあ……容赦しないぜ!」
 イルミンスールの緋桜 ケイ(ひおう・けい)が、皆の前に飛び出すヴァーナーの後に続く。
「隊列を組め。前衛は前へ!」
 ケイのパートナー悠久ノ カナタ(とわの・かなた)は、後衛の位置に立ち、全体を見回し声を上げる。
「百合園か!」
 2階の窓から声が上がる。
「陣を組め! 狙撃隊撃て!」
 中年の男性だった。こちらの遠距離攻撃班も狙撃を試みるが、弾丸が届く前に男は室内へと退いてしまう。
「学校は関係ありませんが、放っておけませんから」
 百合園の空井 雫(うつろい・しずく)がランスを構えて、後衛の前、ヴァーナーの右に立つ。
「遠慮無く油断無く容赦無く。良いトコ見せましょ、存分に」
 にやりと笑って、パートナーのアルル・アイオン(あるる・あいおん)が躍り出る。
 陣を築こうとする敵歩兵の元に素早く飛び込んで、カルスノウトを振るう。
「おおっと、これ以上先には行かせないぜ」
 避けて駆け込む歩兵の前に、大岡 永谷(おおおか・とと)が飛び出し、ランスを繰り出す。
 上空撹乱班や前衛が全てを引きつけていられるわけではなく、矢や銃弾、魔法が次々に放たれる。
「隠れられる方は隠れて。私の後ろでも構いません」
 雫が声を上げる。館以外の建物はなく、隠れられる場所は殆どない。 
「俺らは鎧纏ってるから大丈夫さ」
 そういう永谷の足を銃弾が掠め、血が滲む。
「散れ前衛」
 カナタが声を発すると同時に、前衛が横に飛ぶ。
「行くぜ、ファイアストーム!」
 ケイが炎の嵐を呼び出す。
 前衛、中衛が引きつけていた敵十数名が炎に飲まれた。