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リアクション
2.活動開始!
放課後の蒼空学園は平和だった。
通りがかった教室内を見て、シャーロットはヤチェルの好みそうなショートカットの女の子を発見する。
すぐに携帯電話を取り出すシャーロット。
「ショートカットの女の子、見つけました」
その一つ下の階では、彼女のパートナー、ザフィーア・フェーリ(ざふぃーあ・ふぇーり)が廊下をさまよっていた。
シャーロットを手伝いたくて歩いているのだが、目的の生徒が見当たらない。
「うーん、妖精のチアリングしちゃ駄目かなー?」
人が寄ってくれば、きっとショートカットの女の子も見つかるだろう。
「でも騒がしくしたら、シャーロットに怒られちゃう……」
ザフィーアは溜め息をつくと、壁際に座りこんだ。
常に装備しているみかんを一つ、取りだす。
「いただきまーす」
そして幸せタイムに突入するザフィーアなのであった。
リストにチェックを入れ終えたラルフは勇へ目を向ける。
勇は見つけた女の子をどの角度から撮るか決めかねていた。
一方、その様子を陰からこっそり見ている者がいた。薔薇学マントに裸体のどう見たって目立つ奴、変熊仮面(へんくま・かめん)である。
「それじゃあ、撮るよ」
と、勇がシャッターを切ろうという時……!
カシャッ
緑髪のショートカットの女の子の背後に、見事なブリッジでこちらを見ている変熊の姿。
女の子のおかげで大事な部分は隠れているが……明らかに変質者である。
ラルフとニセフォールは目を合わせた。撮り直した方がいいと言う前に、勇が口を開く。
「協力してくれて、ありがとう」
彼女は気付いていなかった。
「ありがとうございました」
「どうもありがとね」
と、打ち合わせに沿って、ラルフとニセフォールは女の子へ礼を言う。
「よし、次行くよ!」
と、歩き出す勇。
「ねぇ、ちょっとアレ……」
未だにブリッジを続けている変熊を指さすニセフォールに、ラルフは言った。
「見なかったことにしましょう」
そして何事もなかったかのように勇の後を追う。
「ショートカットの良いところは、やはり顔立ちがくっきりするところだな」
「そうそう、場合によっては小顔に見えるから可愛いのよね」
ヤチェルとソールの会話は尽きなかった。最初は一緒に話していた篤子だったが、今ではすっかり口を閉じている。
「何も起こらなければ良いのですが」
と、翔がふいに呟いた。
「ああ、俺もそう思う」
叶月はそう言ってヤチェルを見つめる。正直、普段から大人しいヤチェルが、こんなに積極的に動くとは思ってもいなかった。
「ショートカット同好会というのは、お前たちか!」
ふとそんな声がして、一同は足を止めた。
見ると、すぐ近くの倉庫の上に人が立っているではないか!
「誰!?」
ヤチェルが叫ぶと、そいつは名乗った。
「俺はケンリュウガー! ただの正義の味方だ!」
びしっとポーズを決めると、ヒーローらしく屋上から飛び降りる。――地に着いた足がぐきっと鈍い音を上げた。
「……痛そう」
明らかに着地に失敗したケンリュウガーだったが、何事もなかったかのように言う。
「ロングにはロングの良さがある! しばらく一緒に行動させてもらうぜ!」
そしてヒーローは普段着へと着替え、武神牙竜(たけがみ・がりゅう)へと戻るのだった。
部室ではルースが恋人の写真を眺めていた。
彼女以外のショートカットには興味がなく、自慢話を聞いてくれる相手が現れるのを待つばかりである。
すると、突然扉が開いた。
「ショートカット同好会はここで合ってるかしら?」
九条院京(くじょういん・みやこ)、茶髪のショートカットの少女である。
すぐ外の廊下では、栂羽りを(つがはね・りお)がチラシを手にうろうろしていた。
面白そうだと思って来てみたは良いものの、何となく入るきっかけを掴めずにいた。
その時、りをのそばを葉月ショウ(はづき・しょう)が通り過ぎて行った。そして何のためらいもなく部室へと入って行く。
――これだ!
りをはすぐに追いかけた。
「さっそくだけど、これのショートカットを教えてほしい」
と、ショウがゲーム機を取り出し、みんなへ見せた。
そこにあるのはレースゲームと思しきコース。
「枝から枝へ移るのに、何かコツがあると思うんだけど」
はっとする京。
「ショートカット違いなのだわ」
それを聞いて、ルースとりをは状況を理解する。
「え、でもここ、ショートカット同好会だろ?」
と、真面目な顔で問うショウ。
こらえきれず、ルースは笑いだした。
「違いますよ、こっちのショートカットです」
と、恋人の写真をショウへ見せる。
銀髪のショートヘアの女性。そういえば、今目の前にいる女の子二人も…………。
「な、何だってー!?」
間違えた、と、ショウはその場でがっくり肩を落としたのだった。
写真を撮り終えたどりーむは、自然な動きで携帯電話を取り出した。
「また協力してほしいから、連絡先教えてもらえないかしら?」
女の子はすぐに携帯電話を出した。ふぇいとが不満そうにその様子を見ている。
用事のために蒼空学園へ来ていた御茶ノ水千代(おちゃのみず・ちよ)は、その光景を見て違和感を覚えた。
しかしどりーむの女の子に対する態度に、いやらしいところは見られない。
千代は気にしないことにし、通り過ぎて行った。
「だから、ロングの方がすげーんだって」
「ショートだってすごいわよ。濡れたら顔に貼りつくのよ?」
「そうだな、可愛さを取るならやはりショートだろ」
「でもロングはセクシーだ!」
「ショートには可愛さとかっこよさがあるわ!」
牙竜とヤチェルはロング対ショートの話題で盛り上がっていた。
たまにソールがヤチェルへ加勢するが、ほとんどスルーされている。
「大事なのは足元に落ちる水滴だ。ショートはすぐに乾いてしまう」
「だけどね、髪っていうのは、伸ばせば伸ばすほど枝毛が増えていくものなのよ」
「ぐっ……だが、きちんと手入れをすれば綺麗なロングだって作れる!」
「不可能とは言わないわ、でもショートの方が現実的よ」
「だが色気がない!」
「色気なんてのは、着る服によって――」
ふっとヤチェルの前を黒髪の女の子が通り過ぎて行った。見事なショートカットである。
ヤチェルはすぐにカメラを手にし、走りだした。
「ちょっと待って!」
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