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【空京万博】ビッグイベント目白押し!

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 ラズィーヤによる、貴族流ゆるスターの可愛がり方講座が始まる頃。
「ばんぱくすごぉい!」
 様々な展示物を見て、彼方 蒼(かなた・そう)は大きな瞳をきらきらと輝かせていた。
 見たことのないものや、面白そうなもの。楽しそうなもの、美味しそうなもの。
 気を引かれるものがたくさんあって、目移りしてしまってしょうがない。
 あれも気になる、これも気になる。そうこうしているうちに、手荷物はいっぱい。
「お、蒼見っけ……って何だその大荷物」
「蒼くん、いっぱいお買い物したんだね! 楽しかった?」
 不意に呼びかけられて振り返る。振り返った先には、椎名 真(しいな・まこと)双葉 京子(ふたば・きょうこ)が並んでいた。
「にーちゃんねーちゃん、ばんぱくおもしろいねー!」
「楽しんでるみたいで良かったよ」
 真がなぜか、苦笑じみた顔で蒼の頭を撫でた。ほえー、と首を傾げる。
「蒼くん、ちょっと休憩しに行こうね」
 次いで、京子に手を取られた。
「ほえ? どこ行くのー?」
「喫茶店だよ」
 きっさてん? と蒼は真の言葉を繰り返す。
「そう。俺の友達がやってるんだ」
「にーちゃんの友達のところなんだぁ。じゃあ、きっといいところだねー」
 へらっと笑って、軽い足取りで進む。
 喫茶店、喫茶店。
 どんなところなんだろう? どうであれ、楽しみだ。


「ヴァーナーさんお久しぶりー!」
 会うなり京子は両手を広げた。「京子さん、おひさしぶりですー」と言って、京子の腕の中にヴァーナーが飛び込んでくる。
 ぎゅーっと抱き締めると、ヴァーナーがくすぐったそうに笑った。それからぎゅっと抱き締め返される。
「京子ちゃん、まずはお礼を言おう?」
「あ。そうだったそうだった」
 真に言われ、京子はハグをやめた。背筋を伸ばす。
「ヴァーナーさん、今日はお招きくださりありがとうござました!」
「いえいえ、どういたしましてですよ〜。今はゆっくりはねをのばしていってくださいです〜」
 お言葉に甘えて。
 京子は真と蒼と一緒に空いている席に座った。
「なにになさいますです?」
「うーん。どうしよっか、真くん?」
「俺たちのお茶とお菓子はヴァーナーさんにお任せで。
 蒼の分は、チョコを使っていないお菓子を。それから紅茶のミルクは多めで」
「はいです。ちょっとまっててくださいね〜」
 和やかな笑顔っで、ヴァーナーが奥へと引っ込んだ。
「お茶が出てくるまでは少しかかるだろうし、蒼、遊んでいていいよ」
「いいのー?」
「ゆるスター喫茶だからね。ゆるスターたちと遊んでおいで」
「うんっ、あそんでくるー!」
 真が蒼を遊びに行かせ、蒼は元気よくふれあいコーナーに飛び込んでいった。
「私も少し遊んでこようかな」
 京子は、連れているティーカップパンダツインをちらりと見ながら呟く。
 自分と同じく、現代パビリオン衣装に身を包んだ双子パンダ。彼らも遊びたいと思っているようで、じっと京子の目を見てくる。
「うん、行っておいで。俺、ここで見てるから」
「じゃあちょっとだけ」
 蒼の後を追いかける形で、京子はふれあいコーナーに向かった。
「ゆるスターかわいぃぃ!」
 喜色満面の声を上げる蒼の隣にしゃがみ、
「蒼くん、触る時はゆっくりね。優しくね。思いっきりぎゅってしちゃだめだよ?」
 優しく注意をかけてやる。うっかりぎゅっとしてしまったら大惨事になってしまうかもしれない。
「うん! ゆっくりでぇ、やさしくぅー……」
 蒼は素直に頷いて、慎重にゆるスターを抱き上げる。
 ――あ。あのゆるスター、猫の格好してる。
 蒼の手の中にいるゆるスターの服が可愛くて、ついじっと見つめてしまった。
「ねーちゃん、どぉしたの?」
「その子の格好可愛いなあって思って。着せ替えの参考にしたいなぁ」
「ねーちゃんこのこだっこするー?」
「うん、するー」
 気遣ってくれた蒼にありがとうとお礼を言って、ゆるスターを手に乗せた。
「あ、そっか。こうすればいいのね。うーん、これなら作れそう」
 まじまじと見ていたせいか、ゆるスターが恥らうような動きをするのがまた可愛らしくて笑ってしまう。
 ――人懐っこいなあ。
 懐っこいといえば、自分が連れてきた双子パンダはどうしただろうと辺りを見回す。仲良くしてくれていればいいのだが。
「なんて、心配いらなかったか」
 双子のパンダは、ゆるスターに塗れてころころと転がっていた。和気藹々、そんな言葉がよく似合う。
「かぁわいぃねぇー」
 ほやん、とした表情で、蒼。
「ねー」
 同じく頬を緩ませ、京子も同意する。
「だけど一回戻ろうか。お茶、そろそろ入るだろうから」
 休憩、と言って蒼の手を取り、京子は真の待つ席へと戻った。


 紅茶とお菓子は、村上 琴理(むらかみ・ことり)が選んだものだとヴァーナーは言った。
「紅茶研究会さんのオススメなんです〜♪」
 どんなものだろう、と楽しみな気分になりながら、真は紅茶を一口含む。
 芳醇な風味。渋味は少なく、香りを楽しむもののようだ。栗の香りがする。焼き栗? 香ばしい、いい匂いだ。
 ――だから、淡白で渋味の強い茶葉とブレンドすれば……。
 ――あと、ミルクも合いそうだな。蒼のミルクティー、結構いい具合なんだろうなぁ。
 ――それから、……。
「…………はっ」
 しばらくしてからようやく、我に返ることができた。
 つい考え込んでしまうのは悪い癖かもしれない。これじゃ、休憩しに来たのではなく勉強しに来たようだ。
 ――でも、美味しい。
 何の茶葉なのだろう? 淹れ方のコツは?
 訊いてもいいのだろうか。いいなら、ぜひとも教えていただきたい。
 学んだら、家に帰ってまた淹れよう。
 ――京子ちゃんも美味しそうに飲んでるし。
 ――……って、今のは執事としての使命感で。
 胸中で言い訳しつつ、意を決して聞くことにした。
「ヴァーナーさん。この紅茶、淹れてくれた人とお話したいんだけど、いいかな?」


 琴理から聞いた話は、まさしく目から鱗なものだった。
「ああ! なるほど……! こうしていたのか」
「はい。ミルクやお砂糖を入れても美味しいですよ」
「それ思いました。ミルクティーにしたら美味しいだろうなって」
「良い味覚センスだと思います。……というのは、上から目線過ぎますね。失言申し訳ありません」
「いえいえとんでもないです。勉強になります」
 ぺこりと頭を下げて礼を言う。私で良ければいつでも、とありがたいことを言い残し、琴理はまた奥へと戻っていった。
「たくさん教えてもらってしまった……琴理さんには感謝だなぁ」
 しみじみと言って、お茶菓子として添えられたクッキーを食んだ。ナッツクッキーがまた紅茶によく合う。
「真くんって、勉強家さんだね」
「気になるんだよね。美味しいものを、また一緒に味わいたいって思うからかな?」
「じゃあ、帰る前にお菓子や茶葉を買って行こっか。それで、おうちでティーパーティしようよ」
「うん。そうしよう」
 約束を交わして、微笑む。
「にーちゃんにーちゃん、お菓子かっていーの?」
 と、蒼がそわそわした様子で訊いてきた。
「ん? 買って帰ろうかって話はしてたけど」
「あの、ね、あの……おみやげ、」
 あ、と思った。
 蒼も、美味しいもの食べる気持ちを、好きな人と共有したいんだ。
「いいよ。あの子の分も買って帰ろう」
 ぽん、と頭を撫でてやると、蒼はぱあっと目を輝かせ。
「自分、選んでくるっ」
 ぱたぱたとお土産コーナーに走る蒼の後姿を見て、くすりと笑った。
「尻尾振っちゃって」
「嬉しいんだね」
 ティーパーティにはあの子も誘ってみようか、と今から算段を立ててみる。
 楽しそうな様子が簡単に想像できた。