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パニック! 雪人形祭り

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パニック! 雪人形祭り

リアクション

 『千里走りの術』で、ザカコは雪人形を抱えて展示場へと急いだ。彼は知る由もなかったが、少し前に道に塩が撒かれたせいで、街路はずいぶん歩きやすくなっていた。
 だが、突然、幾つかの影が彼の行く手を阻んだ。割合大き目な雪人形だ。路上の積雪が減ったせいか、彼らは雪玉は投げず、直接飛びかかってくる。
「やめて下さい! 何が目的なんです!?」
 かなり気が立っているらしい雪人形たちを躱すと、雪人形の方も身を翻し、ザカコを追ってくる。
 ――乾いた銃声とともに、その内の一体が弾け飛んだ。
「早く行け!」
「あとの始末は任せなよ!」
 カイルとノエルが、雪人形の前に立ち塞がっていた。
「ありがとうございますっ」
 ザカコは再び先を急いだ。背後で、雷撃の音が街路に響いた。


 突然、展示場に何か、今までにはない空気が張りつめたのを、そこにいた全員が感じた。
 巨大雪像の動きが止まった。――動きを封じられかけて焦ったその雪像から流れ出た霊的な力で、サポートするように動いていた他の雪像たちも。
「……?」
 雪上の頭上のツェツィーリアの歌も、この空気にさすがに止まる。雪像ばかりでなく、全ての人が動きを止めた中、ただ一人、スキルを使った素早い動きで雪像に近寄ってきたのはザカコだった。
「……ナーリルさんを、連れてきましたよ」
 雪像は動かない。ザカコは手を伸ばし、雪像に掲げるように、ブローチを付けた雪人形を差し出した。

 突然、ブローチが一瞬、星よりも雷よりも眩い閃光を、放った!


 オ ト ウ サ ン


 大きな風が吹き抜けたような気がした。
 雪人形から、ブローチが光って、落ちた。
 その雪人形にも、展示場のすべての雪像にも、もう動く気配がなかった。命も力も感じられず、それらはすべて、単なる雪の造形物に“戻って”いた。

「……よかった」
 ルカルカがそっと呟き、空を見上げた。
 いつの間にか、雪は小降りに変わっていた。


 公民館。
「雪、やんだー」
 窓に張り付いた子供の一人が呟く。それとほとんど同時に、エースと(もう裏口で子供を見張る役目を終えた)くるみ、それに実行委員の男性が入ってきた。後ろからはやはり、委員らしき二人の男性が、大きな木の箱を持って続く。
「皆さーん、これから、お祭りの準備を始めましょう! 雪人形に持たせるランタンを組み立てますよー!
 子供たちはわぁっと声を上げ、箱に群がった。
「沢山ありますね。私たちも、手伝いましょう」
 リリアが言うと、子供たちの面倒を見ていた一同が皆頷いた。
「ようし、やるか!」
「あたしもー! でも、これどーすんの?」
「お姉ちゃんに、やり方教えてくれるかな?」
「小さい……可愛い、ランタンですね……」
 賑やかに、ライトアップの準備が始まった。


 そしてバランドの街に、今年も、雪人形がランタンを抱く暖かな冬の夜が訪れたのだった。