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第三章 途切れた道

 凄まじい勢いで飛んでくる雪玉。投げているのは雪人形。たまに雪人形自身も飛んでいる。飛ばしているのは同じ雪人形。
「これは……暴走しているというのかしら」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)は、展示場の片隅で繰り広げられるこのいささか滑稽味もある雪人形の猛攻に、疑問の呟きを漏らした。
 雪像の進軍を妨害する人間に対する攻撃を請け負っているらしいこの雪人形の一軍は、展示場を通り越して山へ急ごうとするルカルカとパートナーのカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)に激しい投雪攻撃を仕掛けてくる。先程、林道を開放するべく向かった一団を止めることができなかった腹いせで攻撃が激化しているのだが、二人には預かり知らぬ話だ。
 HCを通じて得た情報をもとに、二人もまた、老呪術師が住むという番小屋に向かおうとしているのだが……
「危ない!」
 声が飛んできて、ルカルカの目の前で、真正面から飛んできた尋常でない大きさの雪塊が砕け飛んだ。
 ジャンヌ・ド・ヴァロア(じゃんぬ・どばろあ)の放ったパワードレーザーの弾だ。
「ここは危険だ。戦う準備がないのなら、街中にいた方がいい」
 ジャンヌは厳しい口ぶりで言った。雪像の進軍をぎりぎりで食い止めるべく、最終防衛ラインと決めた街の手前ギリギリのところで陣取って、パートナーのルノー ビーワンビス(るのー・びーわんびす)とともに、遠方から雪像の足元を銃撃していた。闇雲に攻撃しても雪像は自己修復するため、破壊より下半身への攻撃で前進を食い止めることに重点を置くようにと、何やら別方向で戦っている人たちから伝達があったので、それに連携していた。
「いえ、ここを抜けて、山に行きたいんです」
 ルカルカはそう言って、自分が街を走り回ったり仲間から聞いたりして入手した情報を、ジャンヌに話した。
「……。それを調べることで、この現象を解決できる、と……?」
「その可能性は十分あると思うの」
 ルカルカの返事に、しばしジャンヌは考え込んだ。……雪像の性質上破壊は難しく、今のところ足止めが精いっぱいだ。街への侵入は何としてでも阻止する覚悟だが、雪像が自ら動きを止める方法があるのなら、危難を前に怯える街の住民のためにもそれが一刻も早く見つかるに越したことはない。
「分かった。私の攻撃で雪人形を散らして道を開けさせる。合図を出したら走ってくれ」
「! ありがとう! 行こう、カルキノス」
 ジャンヌはルノーの方を一度見た。
「雪像の方はしばらく一人で頼む、ルノー」
「はいです〜」
 ルノーはハッチからちらっと顔を出して、頷いて見せた。頷き返して、ジャンヌはパワードレーザーを構える。
「――さぁ、行けっ!」
「待って! あたしたちも番小屋に行く!」
 遅れて、街の方から駆けてきたのは、セレンフィリティとセレアナだった。ルカルカらは一瞬驚いたものの、すぐに彼女たちの意図を察し、頷いた。
「じゃあ、一緒に!」