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狩るのは果物? モンスター?

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狩るのは果物? モンスター?

リアクション

「このままだと収穫が……」
「どうにかしてモンスターを……」
「いや、ワシらが手を出すのは危険すぎる」
 果樹園の入口、柵の前では村の人達が話し合いをしていた。
 その柵を挟んだ果樹園の遠く内側にはモンスター、コボルドが数体、村人を睨む様に陣取っている。
「……どうしたものか」
 皆が溜息をつく中、おばちゃんが駆け寄りながら、大声で言った。

「どうにかなりそうだよ!」


   ☆★☆★☆★


「……俺様の林檎が……」
 おばちゃんに果樹園内の見取図を貰ったアッシュ・グロック(あっしゅ・ぐろっく)は、林檎の木が立ち並ぶ辺りでコボルドへと怒りを向けていた。

「俺様の林檎!!」

 そんなに怒る程食べたかったのか、と言う事は置いといて、食べ物の恨みは恐ろしいぞと言わんばかりに、アッシュはコボルドへ向けて攻撃を出そうと構えた。

「待ちたまえ」

 後ろからその手を掴み、既の所で攻撃を止めたのは、イルミンスール魔法学校講師のアルツール・ライヘンベルガー(あるつーる・らいへんべるがー)だった。
「離せよっ! ……先生っ」
 怒りの矛先を変えようとしたアッシュは、自分の手を掴む人物を見た。
「アッシュ君、君は魔法学校で一体何を学んできたのだね」
 アッシュの目から視線を外さずに、アルツールは手を降ろした。

「魔術師に重要なのは、魔力の強弱ではない。知識と知性と応用力だ。魔術を使えるだけが、魔術師の本領ではないぞ」
「……はい」

 返事と共に、アッシュが放とうとしていた魔力の気配が消え去った。

「何もされていないのに、いきなり攻撃するなんて、いくら相手がモンスターでも可哀想だよ」

 アルツールの後ろから、ぴょこり、と出て来たフィッツ・ビンゲン(ふぃっつ・びんげん)は言った。
「それに、変だと思わない?」
 指差した方向へ、アッシュは目をやる。
「目の前に林檎があるのに食べもしない。あの場所が気に入って寛いでいる様にも見えない。かと言って移動もしそうにない」
 果樹園占領=悪だと突っ走ってしまったアッシュは、フィッツの言った 少し見れば判る 事実さえ、見落としてしまった様だ。
「もう少し様子を見てみようよ」
 行動するのはそれからでも遅くはないと、フィッツはアッシュへ紙パック入りコーヒーミルクを差し出した。
 そんな2人の姿を、黙って見守るのも教員の務め、と、アルツールはただ、会話を耳に入れるだけだった。