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盗んだのはだ~れ?

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盗んだのはだ~れ?

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>>>>洞窟入り口<<<<

 樹齢何百年といわれる桜の木が花びらを散らすその横に、光の届かぬ薄気味悪い洞窟が存在していた。
「さて、チャチャとリーラを連れ戻さなきゃね!」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)は目の前で明るく背伸びをして見せると、心配そうに見つめるドゥルムの頭を優しく撫でた。
「ごめんなさいしたいのね? それなら一緒にくる?」
 ルカルカの言葉に逡巡するドゥルム。その目が黒で塗りつぶされた洞窟の入り口へと向けられる。
「こらっ」
 ふいに影が覆い、ドゥルムは両肩をひかれてルカルカの手から離された。
 ドゥルムの幼い身体を、優しい百合の香りと温もりを包み込む。
 見上げると、そこには髪の上に白百合の花を咲かせたリリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)の端正な顔があった。
「だめよ、危険な真似しちゃ。お姉ちゃん達が無事にお友達を連れて帰ってくるから安心して待ってて」
 リリアは優しく微笑むと、頷いたドゥルムを細い両腕から解放する。
「あなたも子供を巻き込むような事をしては駄目よ」
「ル、ルカもそれくらいわかってるよ。ちょっと言ってみただけだから〜」
 苦笑を浮かべながら答えたルカルカだが、ドゥルムに近づくと小声で「本当に来るつもりなら、ちゃんと守ってあげるからね♪」と囁いた。
 ジト目のリリアに呼ばれたルカルカはドゥルムに手を振り、行動を共にする仲間達の元へと戻っていく。
 その後ろ姿に手を振り返して見送るドゥルム。
 洞窟の奥をさまよっているだろうリーラテェロのことを思うと、胸が苦しくなった。
「やっぱり盗人は違ったのか、な……」
 リーラテェロは否定していたが、あの時のドゥルムはそれを微塵も信じることができなかった。
「そうかもしれないネ」
 隣に立ったロレンツォ・バルトーリ(ろれんつぉ・ばるとーり)が怪しい言葉使いで答えた。
 すでにルカルカ達生徒が自前の照明を手に洞窟内部へと歩を進めている。
「…………」
 ドゥルムは自分が疑ったことで、多くの人を危険な目に合わせていることを後悔していた。
 そんな俯いているドゥルムの心を理解してか、ロレンツォは元気に振る舞う。
「安心するよろし! スグ帰ってくるヨ!」
 笑顔で隊列に加わるロレンツォ。
 その背中を見送りながら、ドゥルムは最後まで暗い表情をしていた。