空京

リアクション

ゴアドー戦役

天御柱学院のイーグリット、コームラントのほか、
東の量産型イコン・センチネルと、西の量産型イコン・クェイルの混成部隊が、
ゴアドー島に出撃していた。
天学生達は初めてイコンに搭乗する他校生のフォローをしている。
事前のティーチングや、実際の戦闘でのフォローなど、やることは多かったが、
センチネルとクェイルのパイロットの士気も総じて高く、
学生達の連帯感は高まっていた。

群がるゴーストイコンを前に、【ハロウィン小隊】の茅野　茉莉（ちの・まつり）は、
天御柱学院校長、コリマ・ユカギール（こりま・ゆかぎーる）に通信を入れる。
「こいつら、墜としても墜としても湧いて出てくるんだけど、
何か方法ないの？
教えてくれたら、全部隊に連絡して共有するつもりなんだけど」
（現状、破壊するのが最も有効な方法だ）
「……わかったわよっ！
『魔女』と呼ばれてるパイロットの力、見せてやろうじゃない！」
コリマがそのように言う以上、他に方法がないことは明白だった。
茉莉は、パートナーのレオナルド・ダヴィンチ（れおなるど・だう゛ぃんち）によって、
迷彩塗装を施したイーグリットを、
同じ小隊のイーグリット、
矢野　佑一（やの・ゆういち）とミシェル・シェーンバーグ（みしぇる・しぇーんばーぐ）の搭乗機とともに、
ゴーストイコンに接敵させる。
佑一達の機体も迷彩塗装が施されている。
「コリマ校長、なんだって？」
「ぶっ潰すしかないんだって！」
佑一の問いに、茉莉は答える。
その返答と同時に、レオナルドはビーム式汎用機関銃を撃つ。
「……了解。ミシェル、念のため、全機に向かって通信をお願い」
「うん、佑一さん」
ミシェルは、味方に向かって通信を行い、ゴーストイコンの破壊方法の再確認をする。
「どこにいるのよ、ナラカの魍魎……！」
茉莉は周囲に気を配りながらつぶやく。

■

小隊【ダーク・ウィスパー】は、
エルフリーデ・ロンメル（えるふりーで・ろんめる）と
リーリヤ・サヴォスチヤノフ（りーりや・さう゛ぉすちやのふ）の
調査した、ゴーストイコン基地のマップから、
侵入しやすい経路を見つけて外壁を破壊して、ゴアドー島内部に侵入しようとしていた。
最深部までくまなく調べられたわけではないので、
役に立たないことはないものの、実際にはそれほどでもなかったが、
何もないよりはよい。
「一緒に侵入しようとついてくる奴がいるかもな。
まあ、止めねえけど」
リーリヤはつぶやく。
「遺跡内部でイコンが発生しているならそこから出てくる出口があるはずです。
最深部を特定して破壊しましょう」
エルフリーデは言う。

「これ以上ゴーストイコンを復活させるわけにはいかないッス！
皆を危険な目にあわせるわけにはいかないッスからね！」
狭霧　和眞（さぎり・かずま）と
ルーチェ・オブライエン（るーちぇ・おぶらいえん）の搭乗するイーグリットは、
ビームシールドを構えて先陣を切って突入する。
「兄さん、やはり、内部にも敵がたくさんいるようです。
気をつけてくださいね」
レーダーを確認しながら、ルーチェは、和眞に注意を促す。
「了解ッス！」

「んー、なんか復活の特定の条件とかあるのかなー。
目覚ましベルで起きてるわけじゃないよね？」
高峯　秋（たかみね・しゅう）は、「お宝があるといいなー」などと言いながら、
遺跡の奥を見る。
パートナーのエルノ・リンドホルム（えるの・りんどほるむ）は苦笑する。
「アキ君、ボク達の目的はお宝探しじゃなくて
ゴーストイコンの原因を叩くことだから、他の事に気を取られちゃ駄目だよ」
「はーい。でも、キラキラしたものが見つかったら拾ってもいい？」
「ですから……」
はあ、とため息をひとつついて、エルノは言う。
「ここでゴーストイコンの発生の原因がわかれば、
ボク達の戦いも楽になりますね。うまくいくといいけど……」

■

（ルート確認！　行くよ、フェル！
臭いものは元から絶たなきゃね！）
（最深部までの迎撃はこっちで引き受ける！
その分、発生源の破壊は頼むからね！）
精神感応で会話しつつ、
十七夜　リオ（かなき・りお）と
フェルクレールト・フリューゲル（ふぇるくれーると・ふりゅーげる）も、
イーグリットを進めていく。

「来た！　前方に敵機５機確認！」
リオは、小隊メンバーに通信を行う。
「さすがイコン基地だね。
残り弾数やエネルギーに気をつけて、行くよ！」
メインパイロットのフェルクレールトは、ビームシールドを展開しつつ、
実弾式汎用機関銃で迎撃する。

■

遺跡外部でも、激しい戦闘が展開されていた。

端守　秋穂（はなもり・あいお）と
ユメミ・ブラッドストーン（ゆめみ・ぶらっどすとーん）のコームラントは、
大型ビームキャノンで味方と連携を行いつつ、ゴーストイコンを狙い撃つ。
（……まずいよ秋穂ちゃん、こいつらさっきより増えてるー！）
（……ユメミ、敵の機体増加数と出現箇所はわかる？
　大雑把でいいから、報告お願い！）
（機体数と場所確認？　わかったすぐやるー！）
精神感応でユメミと秋穂は会話する。
（見つけた！　見つけたよ、秋穂ちゃん！
こいつら、島の最下部から発生してきてる……えっと、今、ちょっと、数えきれないくらい！）
ユメミは、ゴーストイコンの発生箇所を特定していた。

「なんなのよ、あれ……。
マザーとか工場みたいのがあるのかと思ってたけど……繭？」
四方天　唯乃（しほうてん・ゆいの）は、レッサーワイバーンに乗り、
魔鎧形態の霊装　シンベルミネ（れいそう・しんべるみね）を身にまとって、
火天魔弓ガーンデーヴァで攻撃を行っていたが、
やはり島の最下部のゴーストイコン発生個所に気づく。
それは、昆虫の「繭」のようなもので、中からゴーストイコンが次々と湧き出してくるのだった。
接近した友軍のイーグリットに腕が伸びて攻撃しようとするのを見て、
唯乃は叫ぶ。
「あれ、『繭』そのものがイコンなのよ！
遠距離から射撃で破壊しましょう！」
「了解です！」
（ユメミ、他の機体にも通信して！）
秋穂は答えて、パートナーに精神感応で頼む。

こうして、一行は、湧き出してくるゴーストイコンを近接戦に長けた機体で撃破しつつ、
「繭」を協力して射撃するのだった。
撃墜したゴーストイコンからは、
何か怨霊のようなものがはがれおちて、雲海の下、ナラカへと落ちて行った。
ゴーストイコンは、別の何かの力が操っているのだった。

「増殖するってまるでアレみたいだと思ってたけど……。
実際、間近で見ると……うわあ……」
「気色悪いよ、主殿……」
「ど、同感です……」
「１匹見かけたら３０匹はいるパターンだと思ってたけど、本当だったよー！」
射撃を行いつつも、「繭」から這い出るゴーストイコンを見て、
唯乃とシンベルミネは言い、秋穂とユメミも同意する。