空京

校長室

創世の絆 第三回

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創世の絆 第三回
創世の絆 第三回 創世の絆 第三回

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ドーム内部に突入する・1

 黒いドームの内側は、明らかに外とは違っていた。
 何が違うのか、まずは景色だろう。様々なものが詰め込まれた東京の町並みとは正反対の、何もない荒野のような土地が広がっている。外から見た時よりもずっと広く見えるのは、それだけ視界が開かれているからだろう。
 そして空気が違う。埃っぽくて乾いた空気は、ただ一枚の壁を越えた先にあるものとしては異質に感じられた。
「まるで月面だな」
 神崎 優(かんざき・ゆう)が言うように、普通の人が想像する月面のような世界が広がっていた。クレーターのような穴もある。もとよりここは月面ではあるのだが、このいかにも月面ですといった様子はむしろうそ臭く感じるだろう。
 普通の月面とはまた違った部分もある。黒いドームの空は仕方ないとして、問題は眼前でさっそく歓迎してくれようとしているイレイザー・スポーンの群れだ。
「来るわよ!」
「わかってる!」
 飛び掛ってきたスポーンの一体を、神崎 零(かんざき・れい)の声よりも早く優が切り捨てる。
「……で、どれぐらいいるんだこれ?」
 お試しの一匹を切り捨てて、スポーンの群れを見回す。
「ごめんちょっと数え切れない」
 気が付けば、地面は蠢くスポーンの群れに覆われてしまっている。どこから沸いたのか、というか本当に沸いてきたように思える。後ろに視線を向けてみれば、まだ入り口の入り口である。
「それで、目的はあそこか」
 荒野のほぼ中央、そこだけ妙な穴がある。綺麗な円が描かれたそれは、自然には作られないだろう。くり貫かれた大地のその先に、目指す中枢があるはずだ。まずは目の前の彼らに、道を明けてもらう必要がある。
「どいてって言っても、聞いてくれないわよね。絶対」
「だろうな」
 スポーンの群れは臨戦態勢で、大きくこちらを取り囲む陣形を取っている。数も十分で、そう易々と食い破れないだろう。そう思った矢先、強烈な光がその一画を貫いていった。
「周囲を気にせずイレイザーキャノンが撃てるのはいいことだな」
 大地をも抉る強烈極まるビームは、事も無げにイレイザースポーンを飲み込んでいった。それだけの破壊力を気兼ねなく使えるとあって、ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)はちょっぴり上機嫌になっていた。
「みんな行って!」
 カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)の声と共に、火柱がスポーンの群れに落ちる。直撃で倒れたのはほんの数体だったが、炎の余波で彼らの陣形はたわんで崩れた。
 チャンスというものの賞味期限はとても短い。この場の全員はここで、残って戦うかこのまま群れを突破して中枢に向かうか、緻密な作戦会議をする間もなく決めなければならなくなった。
 そして―――見渡しただけで、この数を相手に残るは自殺行為に近いと誰にでも判断できる。それだけ、圧倒的な数の差がそこにはあったのだ。自然残る人数は少なくなる。
「これなら、全く周囲を気にせずにいても問題は無いであろうな」
 ジュレールがイレイザーキャノンを構えると、すぐに二発目を放った。数が多いだけに、スポーンは避けることもできずにビームに飲み込まれていく。恐らく、一発で巻き込める量はこれが最高クラスだろう。問題は、そうしてまとめてふっ飛ばしても、全然数が減ったようには見えない事だ。
「ボクだって気兼ね無く魔法が使えるんだから、日々の修業の成果を見せてあげるよ!」
 カレンの天の炎が、本隊を追おうとしたスポーンの群れを焼き払う。
 ここまでされて、スポーンの群れも黙ってはいない。次々に飛び掛り、鋭利な牙や爪をもって襲い掛かってくる。それらはほんの少しかすっただけで、簡単に人の皮膚を切り裂いていく。
 戦力差は圧倒的だが、ここに残ったのはカレンを含めて敢えて残るのを選んだ人達だ。彼らの役目は、少しでも多くのスポーンを引き付けて、進む本隊の道を開いていくことにある。より危険であればこそ、その役目が果たせるのだ。
「仲間を信じて、今のボクに出来る事を全力でやるのみ! 魔法の力が尽きるまで、ボク達が相手になってあげるよ!」