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オークの森・遭遇戦

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オークの森・遭遇戦
オークの森・遭遇戦 オークの森・遭遇戦

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第4章 激戦!!

4‐01 伏兵

 もう間もなく、森が開けようとする地点だった。
 橘と戦部は、「その場所」へ足を踏み入れた。
 カチッと、地雷を踏むような音が響いたかどうかは分からないが……それは、心の音だったかも知れない。
 茂みの奥の、少し開けた空間。
 そこは、オークで一杯だった。
「これは……ちょっと、いや、かなり数が多すぎやしませんかな……」
「目つきも、今までのオークよりちょっと、いや相当、悪いぞ……」
 戦部は、今まで言わなかったことを言ってみた。
「橘殿? カルスノウトを……」
「いや、使わない。カルスノウトは使わないぞ!」
 木刀を抜き放ち、オークの群れに突撃する橘。
「〜〜!!」
 地味な役目がいちばん重要。そう思い、やってきたが、ここでまさかこんな派手なことになるとは……戦部は、アサルトカービンをぶっつけるように、撃ちまくった。





「禁猟区が……!」
 幾らか前から、森の入口付近に潜む敵(かなりの数だ)を、クリストバルは察知していた。静かに潜む敵……それは確実に、伏兵だった。
 一色もずっとそのことを恐れていた。途中で加わった先生、日紫喜の予感も当たった。
 クレーメックは、それを上手く避け、しかも森を迅速に抜けられる進路を導いた。が、それが今……
「状況が変化した、ということ、か……」
「はい……今まで固まっていた敵が突如、散りました。攻撃の波動を強く感じます。何かを追っている。……こちらへ、向かって来ます」
「……そんな気がした」
 一色はやれやれといった感じ。
 ジャックは銃を抜き、少し楽しそうな表情を見せた。
 イレブンも同様に見えたが、少し不満そうだ。「……火力がほしい」
「そう、その通りだ。進路を変えよう。迂回は取りやめ。もうこのまま、森を突っ切ろう。施設へ。それがいちばんの近道だ。オークを倒すにも……」
「結局……わたくしの禁猟区は〜!」
「いや無論、役に立ったよ、クリストバル……おかげで、ここまで無事に来れた。今までにも小規模な集団は幾つか回避できた」
「そうだよ! ここからは、陣形もなしだ。僕もパルマローザと、施設まで駆けるよ!」
 と剣を手にとるリアトリス。
「私もこうなったなら、火術で応戦するわ。ローランド、のんびりはしてられないわよ」
 日紫喜も、すでに魔法の準備は万全だ。
 一同は、施設へ向け、一斉に駆け出した。森の向こうに、もうすぐに施設の旗が見える。



4‐02 チョコチップと黒の戦士達

 オーク七、八匹を相手に、四人で互角の戦いを繰り広げる、【黒炎】!
 しかし、戦法もないオークと違い、しっかりと連携のとれた彼らは、すぐ優勢になる。
「乱戦だ。気を抜くなよ?」
 不敵な笑みを浮かべる、レイユウ。
 微笑で返し、オークの攻めをすり抜け身を翻す、匡。
 それと背中合わせになる、クロード。反対側からのオークの槍を剣で受け流し、匡を守る。そのまま、取り囲んだ三匹に、ツインスラッシュ。
「クロ、一匹逃げるよ!」
 戦況を見て、恐る恐る、木の間に姿を隠し逃げ去ろうとするオーク。永久はすぐそれを察知した。
 クロードがすかさず追う。
「……匡!」
「まかせて」
 オークの進行方向に、さっと立ち塞がる匡。振り上げた手にデリンジャー。
「残念ながら、他の仲間のところへ逃げられるわけにはまいりませんので」

 それを、木影から、見守る小さな人姿があった。
 薬草摘みに出ていたところを、この戦いに巻き込まれた、ガーデァ・チョコチップ(がーでぁ・ちょこちっぷ)だ。
「この人達、つよい……!」

「匡。これはどうも数が少ないみたいだね。さっきのオークはもっと数が多かった」
「僕らが今まで森で戦ってきたオークより随分、装備がいい。これは、森奥の新手が送ってきた小隊だと思ってよさそうだよ。それにこのひと達は、クロの言うとおり、たぶん斥候。おそらく、森の脇を進んで、退路を断つか、おそらく司令部の急襲が目的で……」
「だったら、殿へ急がないとな。さっき行ったパラ実生がはたして、うん? 匡、どうかした……」
 四人は、思わず目を見張った。
 先ほど、デリンジャーに倒れたオークを、けなげに、ヒールで治療している一人の男の子……オークを、治療?!
「き、きみ……?」
 匡も、判断に困ってしまう。
「そ、それはまずいって」
 クロードは、鞘に収めたカルスノウトを再び抜き放ち、そこへ向かっていく。
「待って。どうして? 森の奥へ、返してあげよう?」
 少々夢見がちそうだけど、純粋なこの子を前に、幾つの戦いを勝ち抜いてきた彼らも普段は優しい者達。振り上げた剣を、下ろしてしまう。
 その隙に、立ち上がり、駆け去るオーク。
 純白のドレスを着た体格のいい男が、チョコチップの前に立つ。
「名は? ……そうか、ガーデァ・チョコチップ。
 俺はな、今まで戦場で多くの死を見てきた。戦場では、少しのことが命取りになる。そこに、憐れみがあっては生き残れない場所なのだ」
「今日、ここにいるってことは、多くの血を見ることになる。そこから、学びとれるものがあるか……
 チョコチップ殿。俺達と、来るかい……?」
 クロードの言葉に、こくんと頷く、チョコチップ。
「オークは元来、他種族を襲撃することを楽しむ、好戦的な魔物なんだ。おそらくこの先には、もっと厄介な相手がいるよ。慈悲の心も通じないどころか、残虐をこそ好む奴だって」
 匡の言葉に、チョコチップは少しためらいを見せたが、それでも、全てのハッピーエンドを信じたい。と思う。
「坊やを必要としている人達は、この先にいるよ」と、永久。
「しかし何はともあれ……逃げよう!」
 座り込むチョコチップの手を引いて、仲間のいるところへ走り出す。すぐ後ろに、オーク精兵の一団が迫っていた。黒炎の戦士達は、それにチョコチップは、それぞれにどんな思いを描いていただろうか。



4‐03 ベオウルフ・B

 こちらは、着々と、キング以下森奥のオーク団を殲滅するために、トラップの準備を進めるベオウルフ、B(バックスチーム)。
 オークがここを通ったときに使用する倒木は、あらかじめ切り倒しておく。それを、ロープで巻き付けておくのだ。また、落とし穴の殺傷能力を高めるため、先端を尖らせた木を仕込んでおく。
 こういった木の伐採に大活躍するのは、鈴木 周。何と言っても、パートナー剣の花嫁、レミの光条兵器はバスタード・ソード。
 バッサ、バッサと、周囲の木々を切り倒していく。
 それに、バスタード・ソードは、切るだけじゃなく、突きにも適した剣。つまり、この突く方で……
「落とし穴を掘るのも俺の役目ってわけだぜ!」
 ザック、ザックと、……
「こっちはちょっと、えらいな……」
 不良っぽい熱血漢の周。この仕事はしかし、意外に地味だ(重要だ)。
 ウィングは、罠の確認と、指示とに余念がない。
 緋桜 ケイは、魔法を使わずに、地道に周の罠の作成を手伝っている。
 武神 牙竜は、ケンリュウガーの格好をして、地道に罠の作成を手伝っている。
「俺がいちばん働いてないか? というより、ほとんど俺が働いてないか?」
「お疲れ様です。はい、お水」
 ケンリュウガーのパートナーの、リリィ(セーラー服姿)が、やかんで水を汲んでは差し出してくれる。
「あ、どうも……」
 セーラー服姿は、周にとってちょっと嬉しかった。
 あちらを見ると……もう一人の魔法使い、リアストラは、落とし穴にいれる葉っぱを乾燥させて燃えやすくしたり、枝を炭化させたりして、燃えやすい環境を整えている。魔法を使っているところを見ると、わりと力を入れているようだが。
「罠の作成より、あの人の場合、火術の研究の一環という気もするぞ……。
 パートナーの機晶姫メノアには、そのための枝葉を切ったりさせているし……」
 とにかく……来るべき時に向かって、バックスチームの時間はこうして過ぎていった。
 が、事はそう簡単に運んでは……面白くない。
 殿の方角から、森を駆けて来る足音。かなりの数、かなりの急ぎのようだ。
「何かあったのか……」
 ウィングは、作戦図を置いて、やって来る者を迎えようと立ち上がった。
 やって来たのは……
「オオォォォォォク!!!」
 と、いうわけだ。
 微笑したのは、鈴木 周。
 彼は、何と言っても……バスタード・ソードを今まさに、この手に、持っているではないか。
 びくついたのは、オーク達。彼らは、殿での攻防戦に敗れ、森奥へ合流するところだった、という次第。
「させるかあ!」
 飛びつくがごとく、切っかかる、周。
 バスタード・ソードがオークの群れを薙ぎ倒す。
「ケイ、リアストラ、それにレミ! 俺の後ろに、隠れるんだ!」
「もう〜〜」
 張り切りすぎの周に、ちょっと困り顔のレミ。
 一方、ウィングはウィングで、オークを止めるのにかなり必死だ。
「ちょっ、キ、キミら! ここへ入ってはだめだって。雑魚を引っかけるための罠ではないのです、これは! 下がりなさい!」
 ケンリュウガー、こと牙竜も、剣を抜く。キングのときにとっておくべきか、今が見せ場か、しかし迷っている暇は無い。
「五秒やる。祈りやがれ!」
 オークは後ろへ退けない! 祈るしかなかった。
 後ろへ退けないオークは、祈らなければ、前へ出るしかない。
 火で応戦する、リアストラ。
「リアストラ? き、気を付けてくださいね、今火が着いたら、トラップが台無しに……」
 防戦しつつ、ウィングはオークよりそちらが気がかりだった。
 リアストラを横目に、こちらはワンドでオークをボコボコ殴りつける、ケイ。
「そうです、ケイ! キミは正しい。リアストラも、ワンドを……」
「ほんとですな。ケイは、魔法を放たないのかな?」
「温存してんだ! 何と言っても、狙いはキング!」
「〜〜! 今まで消耗したオレの火力は……!」
 オォォォォク! はっ。咄嗟に火を放つリアストラ。
「あっ、また火術を使ってしまっ……こうなれば、一度に焼き尽くしてくれます!!」
「メノアさん、リアストラを止めてください!」
 ついにオークを振り切ってリアストラに向かってくるウィング。オーク達が追ってくる。
「と、止めるでございますか……? リアストラ様、ご免……」
 メノアがリアストラを抱きとめ、リアストラの火がウィングをかすめてオークを燃やす。
「オォォォォク! オォ、オンナァ?! コロスコロスオカス……」
「なっ、何だって? お……俺はウィッチじゃねぇ。ウィザードだ!」
 ボッ ボッ ケイの両手に燃えさかる火炎が……
「!!」
「あっ、しまっ」
 ゴォォォォォォォォォォォ