イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

オークの森・遭遇戦

リアクション公開中!

オークの森・遭遇戦
オークの森・遭遇戦 オークの森・遭遇戦

リアクション


3‐04 ヒャッハー?!

(ヒャッハーーハ、ハックション!)
 ……俺はほんとは、こういうキャラとはちょっと違うんだが、便宜上許してくれ。
「何、今の天の声(?)は……」
 黒崎、クロードら黒炎の前に、立ち塞がる大きな影……
「えっ? 禁猟区が動かなかった! 何故……?」
「あたり前だ!」(ヒャッハーー!!)
「あんたは……」
「パラミタ実業高校、国頭 武尊(くにがみ・たける)
「……敵だ。匡、覚悟はいいか。ゆくぞ」
「いや、クロ。待って」
「ほう、君は話がわかるな……っって、当然だろ!
 いいか何故、禁猟区が働かなかったのかって? 俺は敵じゃねえし、まして魔物でもないからだ。見りゃわかるだろ!」
「し、しかし……こわいぞ。
 ……クロ、珍しいな? 冷静なクロが? パラ実は、シャンバラ教導団の敵だよね?」
「僕は、今回できるだけ色々な人に会って、話したいと思っていた」
「その通り。この状況だ。お互い、助けあわなくちゃな」
「なるほど……だけど、下心あり。じゃないかな?」
「さあ……こまけぇこたぁいいんだよ!!」
 そこへドンピシャ。さっき、森のなかを通っていったオークと思しき一団に遭遇。
「こ、声が大きいからだよ、あんたは……」
「やはり、こいつら、殿を狙っていたんだ。
 国頭さん、あなたは信用できるかたと思います。この先に、僕らの隊長が殿を組んで戦っています。そこへ向かって、知らせてくれませんか」
 国頭は、にやりと笑って、駆けていった。
「……本当に教えてよかったんだろうかねぇ」
「……たぶん。クロ、とにかくここを足止めしましょう」



3‐05 ベオウルフF、出陣

 バックスチームと分かれ、森奥へ一気に向かうベオウルフ、F(フロントチーム)。
「オークキング……なんだってあんな奴がこのエリアに?!」
「マナ! いつも道りだ」
「……! ええ、そうね。行きましょう! ベア」





 森奥。
 手強いが、次々、倒れるオーク達。
 風次郎と剣を交え、ひゅんひゅんと舞いながら近付いてくる曲刀のオークを、今度は樹上のクリスフォーリルが狙い撃つが、捕捉できない。
 次はルースの前方を挑発するように通っていく。
「あいつ……ソフィア。風次郎の加勢に行けるか」
 ルースの前でオークを防ぐ機晶姫のソフィア。
「あまり踏み込んでは、円陣が崩れる」
 レーゼマンは、前衛に迫る、戦斧の巨体と戦うレオン、レイディス、そこへ更に加勢に加わろうとタイミングを計る、イライザを見る。
 厄介な二匹に翻弄され、やや陣形に乱れが生じる、隙ができつつある。
 その上……
「野郎〜〜おい誰かピルムを出せ。突き刺してやる」
「ありません! レーヂエ殿はどうかここを動かずに。レーヂエ殿は今ここの中心にあるのですから、陣形を崩さないで」
「むむう……!!」
(全く……こんな猪武者に恩を売ってどれだけの意味が有るやら……)
 そう思いながらも計算をめぐらせ、シルヴァは中央から心配そうにレオンらを見守る。
 そのとき、後方のセシリアが、
「見よ。後方に、砂塵?(森なのに)じゃ。えらい勢いで来てるぞい」
 獅子小隊は、確かに近づいてくる喚声を聴き取った。
 レオンはすかさず、「レーヂエ殿。ここは……」耳打ちし、それからここぞと叫んだ。
「オークキングが此処に居るぞ! 討ちとれ!」

 まったく同時に、森から、戦士達が姿を現した。
「いざ、ベオウルフ隊が相手だ!」
 腰まで届く漆黒の髪と同色の双眸。漆黒のマントを羽織った女性剣士のような、村雨 焔(むらさめ・ほむら)
「まぁま、覚悟しぃやぁ〜」
 穏やかな京風口調で、しかしすでに鋭い剣を抜き放っているのは、一乗谷 燕(いちじょうだに・つばめ)。ヴァルキリー、宮本 紫織(みやもと・しおり)も、その後ろに続く。
 更にもう一人、ヴァルキリーのアティナ・テイワズアティナ・テイワズ(あてぃな・ていわず)。彼女と組む、ローグの百鬼 那由多(なきり・なゆた)は、すでに戦場のどこかに、身を隠し狙いを定めている。
「……いたな……オークキング……。……俺は負けない……どんな奴が相手でも……」
 長い髪を揺らし走る、クルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)は奥に構えるキングの姿を捉えた。彼の剣は、もうそれに向かっている。

 ベオウルフ隊が競り上がってくるのを見届けると、レオンは不敵に笑い、獅子小隊の撤収を促した。
「レーヂエ殿。ここには、オークキング討伐を目論む外的戦力が多く散在しております。レーヂエ殿の大いなる邪魔になりましょう。此処は我々と共に一時後退を。この戦線で殿を任せられるのはレーヂエ殿を置いて他にはないと騎凛殿も申しておりました」
「この字は! ……騎凛殿のものだ。なるほど。それほどわたしを。
 して、かの者達は……? むむ、外的戦力、か……」
 獅子小隊は、後方へ回っていく。
「べオウルフ隊といったか……精々利用させてもらうとしよう」
 レーゼマンの眼鏡が、ギラリと光った。

「レーヂエ殿はいずこ? ご無事ですか! 
 ! 獅子小隊の皆さん。ベオウルフ隊を連れて参りました。教導団の騎士、ユウ・ルクセンベールです。加勢いたします」
「すでに、ベオウルフ隊の前衛は、オーク精兵に接触したようだ。我々は、後方支援に回る。 
 それからそちら、そなたは、ベア・ヘルロット(べあ・へるろっと)であったか?」
「おお、レオンさん、貴方がたは、キングを倒さないのかい?」
「我々の仰せつかった任務は我等の重要な指揮官、レーヂエ隊の回収。任務は無事完了できそうだ、貴殿らのおかげでな、くっくっ。戦勝の宴ででも会おうぞ。きっと蒼学にも席は用意してくれている筈だ、共に生きて帰れるならば!」
「まかせておきな」
 戦場が動く。
 オークが、一斉に後ろに回り込もうと追って来る。
 ベアの前に、ベアらがここへ向かうことになった問題の部隊長、レーヂエが駆けてきた。
 オークの追撃を受けている。
「部隊長殿! あんた、踏み込みすぎだ! ……くっ」
 スウェーを放ち、オークを足止めする。
 ベアのパートナー、剣の花嫁。マナ・ファクトリ(まな・ふぁくとり)は、レーヂエと逃げてきたマッゴゥを優しく庇う。
「大丈夫よ、呼吸を整えて……貴方の名前は……そう貴方が、マッゴゥさん? 痛むけど我慢してね」
 幼女の趣を残すマッゴゥ、矢を背に受け苦しそうな彼女に、そっとヒールをあてる。こんな幼い女の子を連れて前線に出るなんて……しかしよく見ると、マッゴゥのドレスのスカートから覗く、びっしり生えたすね毛。「??!!」(マナ)。
「うっ、すまぬな。蒼学の者か。ベアというのだな」
「なにこれしき、部隊長殿。レオン、では後はまかせな! 手柄は、俺達が頂くぜ!」
「レーヂエ殿。行きましょう」
「し、しかし。手柄が奴らに渡るぞ……ここに居留まれば、部隊長であるわたしの手柄ということにもなる」
「おい! おっさん!」
 後ろから、怒鳴りつける、ベア。とうとうレーヂエをぶん殴る。
「冷静になって周りを見ろ! はやくパートナ達と撤退しろ。王が向こうに集中してる間がチャンスだ。……まかせろ!」
「ベア、き、貴様〜〜?」
「レーヂエ殿。では、せめて後方まで下がり、戦いましょうぞ」
 レオンに促され、ようやくレーヂエはその場を後にした。
「馬鹿ね。確実あとであの人に怒られるよ」
「その時はお前も一緒」
「いつも道りね」

 ほぼ、後方へ回った獅子小隊。
 更に、ベオウルフ隊の一員が、遅れて駆けて来る。
「ベレーヂエ殿っ!!」
「お、おう……? どうした、貴殿は……」
あーる華野 筐子(あーるはなの・こばこ)、段ボール・ロボっです!!」
 段ボール・ロボ。皆さんはきっと、ご存知だろう。しかし一応説明させて頂くと、1.あーる華野は、詐欺被害で背負った借金の取立てから逃れる為、段ボール製ロボットを着て正体を隠してる。 2.段ボールは、「夏みかん」と「青森りんご」の段ボール箱が基本。
「3.気分によって、表面の花柄模様を描き変えるよ」
「ほ、ほう……」
 ちなみに今回は、段ボールの表面にワルキューレの衣装を描いて参戦している。
「ヘルメットの羽は重要♪」
 レーヂエは、ちょっと、あーる華野を可愛い、と思った。
 そしてあーる華野の後ろでは、パートナーのアイリス・ウォーカー(あいりす・うぉーかー)が「ワルキューレの騎行」を高らかに歌い、舞い踊っているのだった。
レーヂエ「キュン。(これはたまらん♪)」

「それでベレーヂエ殿」
 あーる華野は急に真面目になった。
「な、何かな……」
「後方で、ベオウルフ隊の仲間達が、トラップを敷設中なの。オークキングをトラップに誘導するよう協力を要請します」
「わ、わかった。できる限りやってみよう……」
「では。いざ、共に戦わんことを。やああああああ!!」
 勇ましく、ワルキューレの騎行を舞いながら、あーる華野とアイリス・ウォーカーの二人は、キングに向けて突進していった。

 レオンは……とりあえずその光景を見守る他なかった。





 さて、最深部、オーク・キングのもとへはすでに、村雨、クルードらが殺到していた。
「オークキング……クルード・フォルスマイヤー、俺が相手だ……!」
「村雨 焔。勝負だ!」
「クルード、焔さん! あかん、待ちなはれ」
 燕の声が聞こえた瞬間、キングに向けたクルードの剣をカッ、と打ち払い、クルードの真横につけた者。
「ホヒィィィィイイィィィ」
「……なんだ、きさまは……」
 ハッ? ――殺気を感じて一歩退いた焔を覆う影。ジャンッ!!
「ムハーーーーーー」
「気を付けなはれ、クルードさん。焔さん。このひとら、どえらい強いどすぇ……!」

 先、クルードと焔がキングへ向かうのを確認すると、キングの取り巻きヘの攻撃を試みていた燕。一撃、二撃と切り伏せるが、三撃目、手応えがない。……まさか、私の剣が交わされたやて?……「ホヒィィィィィ」……
 ひゅん、ひゅんッ、「うはっ、嘘やろ?」。速い……敵の刀のリーチも長いので、これでは避けるのに精一杯だ。
 更に、後ろに、大きな気配。
「ムハーーーー!!」
 ジャゴンっ、これも危機一髪、回避。
 同じく反対側で取り巻きを排除にあたり、一人で倒しきれなかった巨体一体に押された紫織と、背中合わせになる。
「ムハーーー」
「ホヒィィィィィ」
 が、次の瞬間、二匹は、キングに向かう人影を見るや、そちらへすぐ攻撃を転じた。
 燕、紫織も、それを追って村雨、クルードに合流した次第だ。

 二人の剣の花嫁が駆けつけようとするが、追いついたマナが必死でそれを止める。
「大丈夫、あの人達ならきっと、大丈夫……私達が行ってはだめ……」
「そうね、そうだね、ここは見守らなきゃ……。焔……大丈夫だよ、焔。私がついてる!」
 村雨のことを、兄として慕うように見える小さなアリシア・ノース(ありしあ・のーす)。だけどあくまで彼を恋人として想っている、彼女は本当に真剣だ。
「クルードさん、お願い、無理はしないで!」
 クルードを心配そうに見守るのは、ブルーサファイアの髪、ユニ・ウェスペルタティア(ゆに・うぇすぺるたてぃあ)。戦地でも、優しそうな目。
「よし。ユウ、俺らも加勢しよう」
「やはり、予想した通り、キングには精鋭が付いていましたか。そう簡単には討たせてくれないというわけですね」
 ベア、ユウが、前線で戦う二人のもとへ、駆けつけた。



3‐06 殿軍攻防戦II

 殿での戦況は、幾分落ち着きつつあった。
 オークの数が減っている……というよりは、オークの流れが、森奥へ向かっている、ともとれた。
 ここで戦うより、キングのもとへ合流して総攻撃をかけるつもり、か……
 今回、実戦演習を担当し、各部隊長らと、新入生を率い森へ入った騎凛 セイカ
 キング来襲の報告と、それによって再結集したオーク残党の攻囲を受けてから、三十分程が経つ。淑やかな彼女ではあるが、急に苛立ちが見え始めていた。付き従う彼女のゆる族であり、副官でもあるアンテロウムは少し嫌な予感がしていた。
 どこから迷い込んできたやら、陣の中央にオーク一匹。
「オォ、オンナァ! オカスオカスオカ……」
 スパー ン。
 オークの首が空に打ち上がる。
 騎凛はナギナタでそれを串刺すと、更にオークの死体に容赦ない斬撃。
「えーい切り刻んでやる」
「ああ騎凛様もうおやめください。もう死んでますから死んでますから」

「ああ、なる程……ああすればいいんだな!」
 腕の立つ教官の戦い振りを見て、モノにしたいと思い、傍で戦っていた士 方伯は、少し感動した。ゾクゾク。
 士の背中を守る、戦いにおいては容赦ないジュンイー・シーも、それは少し違うのでは、と思ったが……
 そこへ、またどこから迷い込んだやら、秋葉原にいそうなオーク一匹。
 士は、乱暴な口調に似合わず、ピンクの髪を後ろで束ねた、可愛い少女の外見。小柄で、小学生にしか見えない(ちなみに字がヘタだよ)。
 萌え好きなオークにはたまらない。
「モエモエ! モエモエー!!」
 スパー ン、オークの首が舞い踊る。
「切り刻んでやる!」
 とりあえず、とめるべきか、とめないべきか、ジュンイーは、静かに、士の背中を守っていた。

 また、騎凛の近くで、護衛に回っているのは、グレン・アディール。グレンは、戦闘開始から撃ち続けてきて、弾数も残り少なくなってきているが、狙った相手は外さず、確実にオークを仕留めてきていた。
 グレンは、薄くなってきている敵の包囲に、一匹、一回り大きく、決して前に突出してこないオークがいるのを見つけていた。ふと、そいつが大弓を持ち構えた。
 危ない!
 確実に、隊長の騎凛を狙った射撃。
 グレンは、身を挺して盾となる。
「チッ……オークにしては良い狙いしてるな……。俺たちより先に倒されたら赦さないからな……上官殿……」
「グレン……! 大丈夫ですか……おのれ、その者を、討ち取れ!」
 アンテロウムが矢先を向ける。オークは先に矢を放ち、それを牽制。「うう、ちょこざいな」
 ロブが続けざま撃ち返し、すると逆にオークは矢を放つ機を失う。
 昴の一発が、オークの弓を持つ手を弾いた。
 そこへデゼルの猛攻。
「おお? 誰が呼んだか「硬いだけ」! のオレが、押してるじゃん!」
 大弓を捨てたオークは、片手で剣を抜いて応戦したが、勝負は見えていた。
 周囲のオークは怯むばかり。
 剣が落ち、続いて、オークの首がどさりと落ちた。
 オーク達の包囲に、ざわめきが走った。攻勢が止む。

(ヒャッハァー!!!)
 どこからともなく、声が……
 シャンバラ教導団の皆は、何となく悪寒がした。しかし、もっと悪寒がしたのは、オーク達だ。
 ドキュン、ドキュン!
 倒れる、オークの骸、骸。
 姿のない狙撃者。
 ドキュン、ドキュン、オーク達が、少しずつ、逃げ始める。
 突然、陣の真ん中に、大きな男が舞い降りた。
 波羅蜜多ツナギを、教導団の軍服風に仕立て上げている。
「元教導団歩兵科所属。パラ実の国頭 武尊とはオレのことだ!!」
 その後ろには、少し申し訳なさげに、彼とはうってかわって優しげな女性、剣の花嫁が立っていた。シーリル・ハーマン(しーりる・はーまん)、彼のパートナーだ。
「皆様、はじめまして……」
「ここが殿だろ? 一緒に戦ってやるぜ」
「ちょ、ちょっ」
 敵と見紛った騎凛は、ナギナタを向けていたが、すでに国頭の勢いが勝っている!
「こまけぇこたぁいいんだよ!!」
 森奥へ逃げ出すオークを捕まえ、一人で掃討を始める国頭。
 動き回る国頭に退路を断たれ、やけくそに剣を振り回し切り込んでくるオーク、反対方向へ逃げようとするオーク、暴れ回るオークで、瞬く間に殿は混戦状態となった。
 オークの首や腕や足が陣のそこかしこ転がり、どこもかしこも打ち合う音、そして断末魔が響き渡る。銃声、銃声。空を飛び交う矢、矢、矢。
 ……
 そんななかでも、シーリルの声が聞こえる。
 と、国頭は思った。
(……互いが大事に思い有っていれば、彼女の指示は絶対に聞こえる。
 むしろ、彼女の声以外聞こえない。
 それが、絆ってもんだろ。常識的に考えて。
 オレは勝つ。彼女の期待に応えるためにも……!)

 おそらく森の大将格だったオークの死、それに国頭の降臨で、完全に殿の形成は逆転した。
 一時の混戦にも、味方は混乱することなく、各々が相当数のオークを討ち、オークの包囲は消え去った。
 実戦には初参加だった者達も、戦い振りが様になっている。
「はあ、はあ……」
 息を整えながら、剣の血を振り落とす疾風。月守が、駆け付ける。「疾風! やったよね」
 ずっと士の背を守って戦っていたジュンイーも、その成長振りに少し微笑みを見せる。
 昴は、自分の銃の腕に、少し酔ってしまったくらいだ。
 戦況を見守っていた騎凛だが、ここへ来て、戦闘開始から最多数のオークを切ったであろう岩造の戦績にも追いつきつつある状態。昴より、斬酔いしている感もある……。
 そこへ、クレアが、負傷兵を引き連れ、戻って来る。
「あなた達……ナドセはやはり、戻らないのですね。私の部下がこんなに傷付いて、まだ戻らない者も多い。今よりオークを追討し、キングを討ちます」
 ええい、待ったと、とめるのは朝霧。
「イレギュラーが起こったんだ、部隊の責任者は「本部に戻り、このことを上層部に報告する義務」がある。だから奥には行くな。「教導団員として相応しい行動」を取るんだろ?
 ……大丈夫、やつ等はそう簡単に倒されやしない。仲間を信じな」
「……アンテロウム。私のナギナタを……どうにも、重くていけない……」
「騎凛様! 戦況は我々に有利に動いております! 暫しの、辛抱です」
「教官、久しぶりだな。変わってないな。そのナギナタ食らった挙句に、パラ実に送りにされたオレが来たぜ。何ならもう一度、ここで使ってみるか? 冗談だ。
 そうだ。あいつらのこと忘れてたな」
 殿部隊は、国頭に、黒炎からの伝達を聞くと、今のうちに、至急防壁を作る作戦がようやく、始動した。これは、奥の部隊が戻ってくるときにも、追撃があれば防ぐことができる。
 策がようやく採用されたが……当の青は、依然自分の世界に没頭しているのだった。