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湖中に消えた百合達

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湖中に消えた百合達

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「逢引というには、少々過激でございますわね」
 すぐ近くで声がしたかと思うと、ヴェロニカ・ヴィリオーネ(べろにか・びりおーね)が隣の茂みからそっと現れた。百合園女学院の制服の上からなぜか浮輪を装着している。真希は突然の出現に驚いたが、大きな声を出してはダメだと思い、自分の手で口をふさいだ。
「…あの、流石に…観察は、駄目だと…思うんです……」
 同じくカップルを見ていたのであろうヴェロニカに、ファニーは声をかけた。
「大丈夫です。わたくしはオケアニデスが現れたら戦うつもりでおりますわ」
 何が大丈夫なのかわからないけれど、水中戦に備えてなのか、百合園の制服をちらりとめくって着込んでいる水着を見せた。左手にはシュノーケルも持っている。そうすると…、ただの覗き、は、わたしくたちだけ…、とフィールは少し複雑な気持ちで重なったカップルにかぶりついてるファニーの背中を見つめた。
 カップルの様子は、すでに暗くなっているので影のようにしか見えないけれど、下になった人が拒否をしているのか、必死に腕をつっぱっている様子が見てとれた。
「逢引って、なんか大変そうだねっ!あれって過激なの?!」
 ファニーはヴェロニカににじりよって、解説を求めた。真希は顔を赤くしてうつむいている。
「繭もあれくらい、積極的になってくれたらねぇ」
 どこから現れたのか、エミリア・レンコート(えみりあ・れんこーと)が2人の会話に割って入った。どうやら隣の茂みから、別の方向のカップルを見ていたらしい。エミリアの視線の先には、長身の女性に肩を抱かれるように寄りかかっている、小さな女の子の姿。
「ふふ、かわいいわ繭……まだ小さいけど、エミリアのモノにしておくのは惜しいくらいに」
 白百合団所属の崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)は囮役の協力者である稲場 繭(いなば・まゆ)を自分の胸に引きよせた。
「あ、あの、その…よ、よろしくおねがいします」
 繭はどこかから見ているエミリアのことを思うと、尚一層恥ずかしかったが、これは梨穂子と先輩を救うために必要なことよ、と言われたらもちろん断れはしなかった。
「緊張しなくてもいいのよ。私に全部任せて、ね?」
 亜璃珠のさすがのリードに逆らうことのない繭の姿は、以前の繭に比べれば積極的と言えないでもない。
「うひゃあ…繭ったら、成長したわねぇ」
 エミリアは心底楽しそうだった。恥ずかしがる繭ほど楽しい存在もそうはいない。エミリアの様子に、ファニーと真希、ヴェロニカも、亜璃珠と繭のほうに目を向ける。
「うーん。漫画で見た逢引って、確かにこんな感じかもっ!」
 亜璃珠がそっと繭の髪を梳いたり、背中に優しく手を回したりしている姿を見て、ファニーは満足げに納得していた。

 桐生 円(きりゅう・まどか)は、周りのカップルが囮役を意識してなんとなく甘い空気になっていくのを見て、隣を歩くマスター、オリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)の手を、自分からぎゅっと握りしめた。オケアニデスがカップルに嫉妬して現れるのであれば、円にとってマスターへの忠義と愛を計られていることに他ならない。円がヘンに気合いを入れているのを眺めながら、オリヴィアは、円の好きにさせておくことにした。周りの刺激を受けて円がどう動くのか、考えるだけで楽しみだった。
 円は考え直して、手を離し、マスターの腕に自分の腕をからめることにした。自分の左腕をオリヴィアの右腕にからめ、歩くのに邪魔にならない程度に、こつんと頭をマスターの腕に寄せる。
「マスター。少し、座りましょう」
 頭を寄せて歩くのは、どうもしっくりいかないらしい。円は座って迫ったほうがマスターとイチャイチャしやすいかも、と考えた。座ったところで、オリヴィアの余裕はまったく変わらない。
「あの、マスター。もう少しそばに座ってもいいですか?」
「いいわよ〜。こっちにいらっしゃい〜」
 オリヴィアは、楽しげな笑みを浮かべて、円を手招きしてあげた。
「ほら、他の人たちも楽しそうにしてるじゃない?」
 オリヴィアが指差した先には、寄り添う3つの人影があった。マリアンマリー・パレット(まりあんまりー・ぱれっと)は、攫われた2人のことを、とても心配していた。人を攫うなんて、オケアニデスさんにもきっとつらい事情があったのでしょう。このままじゃみんな不幸になってしまいます。そんなマリアンマリーの電話を受けて、シルエット・ミンコフスキー(しるえっと・みんこふすきー)は海の妖精に興味を覚え、エルゴ・ペンローズ(えるご・ぺんろーず)と共にマリアンマリーをヴァイシャリー湖へと誘った。マリアンマリーは、百合園女学院で聞き及んだ情報の知る限りをシルエットとエルゴに伝えた。身長50センチのドラゴニュートであるエルゴがシルエットのそばに寄り添っている姿を、マリアンマリーは愛らしいと感じていた。
「それで、オケアニデスは引き裂かれたヴァイシャリー家の娘を今でも待っていると言うんだね」
 シルエットは、それじゃあオケアニデスを誘き出そうか、とマリアンマリーにそっと自分の顔を寄せた。

(あはっ、今日は公開露出プレイの日っスよ!)
 暗くなったほうがカップルにはいろいろ都合がいいだろう、と日が暮れるのを待ってヴァイシャリー湖にやってきた飛鳥井 コトワ(あすかい・ことわ)は、それぞれの世界を作っているカップルを見ながら、楽しそうにはしゃいでいた。でもやっぱり、つっちーが一番っスね〜♪
 そんなコトワを愛称つっちーこと、タウントーク・シャリエット(たうんとーく・しゃりえっと)は、少々呆れ顔で見つめていた。攫われた少女たちの無事を祈っているタウントークに引き換え、コトワの頭の中には、つっちーとあれこれ楽しいことをすることしかない。
(いい趣味してるよ、ほんと)
と思いながらも、タウントークも別にそれがキライなわけじゃない。太陽が沈み、白く細い月が湖面に映っている情景は、美しく、静謐な雰囲気を醸し出している。やらしーこととは結び付かない情景、なのだが…。散歩はほどほどに
「ここ、座るっス!」
 と、腰を下ろした途端、飛びついてきたコトワを、やはり可愛いと思う気持ちもあり、タウントークも、まぁ今回はさすがにいろいろ言い訳出来るか、とコトワの行動に流されるままにした。コトワはいきなりタウントークの衣服を剥ぎとり始めたが、とりあえず気にしない。
「先客もいるし、ここなら大丈夫そうね」
 と、コトワがタウントークをひんむいている最中に堂々と割り込んだのは、羽高 魅世瑠(はだか・みせる)フローレンス・モントゴメリー(ふろーれんす・もんとごめりー)だった。
「みーちゃんっ。やっぱり来たっスか〜っ!ん?なんでそんな洋服着てるっスか?!」
 コトワはひんむく手を止めて、突然の割り込みに大喜びだった。いつもは裸か、渋々ビキニやベストを身につける程度の魅世瑠だが、今はフローレンスと一緒に、百合園女学院風のメイドドレスを身につけていた。
「だって、攫われたのは百合園の生徒なんでしょ?」
 コスプレよ〜♪とスカートの裾をフリフリと振って
「フル〜。さ、おいで♪」
 と、フローレンスを呼び寄せる。手際良く、フローレンスを惹き倒すと、いつも通りに唇を重ね、舌を差し入れた。