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闇世界の廃校舎(第3回/全3回)

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闇世界の廃校舎(第3回/全3回)

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第2章 闇に引きずり込もうとする手

-PM16:58-

「結構探し回ったはずだけど見つからないな・・・。ぉおーい、ルフナ・・・ラビアン・・・!」
 鈴倉 虚雲(すずくら・きょん)はハンドライトの明かりを頼りに彼らを探す。
「それはそうと、他の生徒たちも見かけませんね。死者たちに連れていかれてしまった人もいるようですから・・・もしかしたら他の人たちはもう・・・・・・」
 虚雲にピッタリくっつきながら紅 射月(くれない・いつき)が彼の恐怖心を煽るように言う。
「連れて行かれたって・・・どこに・・・」
「もちろん向こう側ですよ」
 ニコッと爽やかに言う彼に、少年は顔を強張らせる。
「さ・・・さて・・・ルフナたちはどこにいるのかなー・・・」
 聞こえたなかったフリをして、わざとらしく棒読みな口調で言い、射月から目を逸らす。
「誰もいないな。4階の方にいるのか?」
 2階の教室を覗き込むとそ、こに生徒たちの姿はなかった。
「―・・・あ・・・足が・・・・・・な何だ!?」
 皮膚が腐り蕩けた無数の手が床から現れ、虚雲の足を掴んでいた。
「ナラカへ引きずり込もうとしているのですね!」
 射月は薙刀の刃で亡者の手を斬り払い、彼の手を握り教室を駆け出る。
「ちくしょうっ、またゴーストが・・・ふぐぁあ・・・」
 ゴーストは背の裂けた皮膚から血管のような触手を伸ばし虚雲の身体中に巻き、ギリギリギリ絞めつけ骨を砕こうとする。
「は・・・ぁっん・・・・・・ぁあぅ・・・ん・・・・・・っ」
「・・・ゴベ・・・ハ・・・ギャッゲッゲッェ・・・ガ・・・」
 喉の奥から無理やり声を出すように呻り、皮膚が腐り落ち露出している裂けた心臓部分から、シュウシュウと白い煙を発生させる。
「―・・・な・・・うぅ・・・はぁっ、げほっごほ・・・がはぁああっ!」
 まともに煙を吸い込んでしまった虚雲は、強酸によって身体の中が焼けるような痛みに苦しみ悶え、口から吐き出した血によって床が真っ赤に染まる。
「まったく、捕まるのが趣味なんですか」
 虚雲を絞め殺そうとする触手を射月が薙刀で薙ぎ払い助けだす。
「あれ・・・。今・・・誰かの声が聞こえませんでしたか?虚雲・・・・・・」
 パートナーを呼び止めようとするが聞こえなかったのか、彼は振り返らず先に走って行ってしまう。
 1人の男に思慕し続けた挙句報われなかった若い女の声が耳元で囁くように聞こえ、その霊に憑かれてしまった射月の視界が歪む。
「―・・・・・・ぅ・・・うぅ・・・」
 まともに立っていられなくなった彼は廊下にバタンッと倒れ込んだ。
「どうしたんだ紅!」
 パートナーがついてきていないことに気づき、虚雲は走り戻ってきた。
「・・・erson・・・six・・・hrows・・・brai・・・。five・・・cut・・・chest」
 ブツブツと呟く射月を助け起こそうとするが立ち上がった瞬間、足を深々と斬りつけられてしまい倒れそうになる。
「はぁはぁ、お前・・・いい加減目覚ませッ!」
 なんとか気絶させようとカタールを外し、迫り来る刃を素手で受け止めた虚雲は、射月の腹部や顔面を狙い殴りかかる。
 ドゴスッガンッと何度も殴りつけた。
「three chop・・・arm、two brea・・・foot、one・・・」
「面倒かけさせ、るな・・・!」
 ドッボォッ。
 脇腹に拳打をくらわし、よくやくパートナーの彼は気を失う。
 気絶させた射月を背負い痛む足を引きずりながら、ゴーストたちから必死に逃れようとその場を離れる。

-PM17:10-

「病棟の秘密を探ろうとしている人たちを殺そうとしているなら・・・私たちだけじゃなく、ルフナたちも危ないわよね」
 ライトブレードを手にアリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)は慎重に階段を上る。
「ここも明かりが点いていないし・・・薄暗くて視界が悪いわ。どこにゴーストが潜んでいるか分からないから気をつけないと・・・」
 明かりの点いていない電球を見上げて言い、廊下の奥へ視線を移し前へ進む。
 3階にたどりつくと、廊下を駆けていく足音が聞こえてきた。
「そこにいるのは誰!」
 角を曲がって走り去っていく女子生徒の姿が見えた。
「待って!」
 生徒を追って体育館を通り過ぎ、トイレの傍まで来るが見失ってしまう。
「―・・・この中に入って行ったのかしら」
 行き止まりになっていて、その先にはトイレしかない。
「ねぇ・・・そこに隠れているよね?大丈夫だから出てきて・・・私が守ってあげるから」
 閉まっているドアの傍に寄り声をかけると、ギィイッと音を立てて開かれた。
「あなた・・・ラビアンね?」
 黄緑色の髪をした女子生徒の姿を確認して言う。
「えっと・・・・・・この前、助けに来てくれた子よね」
「そうよ、もう1人はどうしたの?一緒じゃなかったの・・・?」
「途中で逸れちゃって・・・」
「―・・・そうだったの・・・。とりあえず他の生徒たちがいる所に連れて行ってあげるわ。ルフナは私が探して来てあげるから、そこで待っていて」
「分かったわ」
「危ないーっ!」
 トイレを出ようとすると、天井からポタタッと亡者の唾液が床に零れ落ちてきた。
 天井を這う女のゴーストが、長い舌で標的の位置を探ろうとしている。
「ここは私に任せて早く逃げて!」
 噛み砕こうとする牙をかわし、頭部や四肢を薙ぎ払おうとするものの、猛毒の舌が阻み致命傷を狙えない。
「これで決める・・・たぁあああー!」
 ズシャァアアアッ。
 ソニックブレードを放つが床から現れた無数のゴーストの手、ベックォンによって阻まれる。
「く・・・やばいわ・・・。さっきの一撃でSPが・・・」
 襲いかかる化け物から攻撃をかわしながら反撃の隙を窺うが、壁際へ追い込まれてしまい無数の死者の手に身体を掴まれてしまう。
「亡者に眠・・・んぁあん!?」
 なんとか逃れようと必死に抵抗すると、服を掴む死者の手によりビリリッと破けてしまった。
 ギリギリと両腕を絞めつけられ、アリアの手からライトブレードが床に滑り落ちる。
「はぁ、はぁ・・・・・・武器が無くても・・・まだ・・・。―・・・ん・・・くぅっ・・・はっあぁっ・・・ぁあああ゛ー!!」
 雷術を放とうとした瞬間、ゴーストの舌がアリアの手を貫き、少女は苦痛に顔を歪ませ悲鳴を上げた。
「いやぁっ!放して、いやああああああああ!」
 ズルズルと壁の中へ引き込まれていく。
「―・・・は・・・早く・・・逃げ・・・」
 ラビアンが襲われてしまうと思い、彼女の方を見ると完全に引き込まれる瞬間、何か言いながら冷たく笑ったように見えた。