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闇世界の廃校舎(第3回/全3回)

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第4章 姿を消した医者を探して彷徨う

「―・・・いないようだな・・・」
 ドアをそっと開け風森 巽(かぜもり・たつみ)が保健室の中を覗き込む。
「医療所とか結構あると思っただけど・・・ほとんど隙間だらけね」
 手がかりがないかティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)は本棚をチェックする。
「隙間・・・ねぇ・・・・・・」
 鉄の缶の中で燃やされ真っ黒に焦げているファイルや本を見つめ、佐々良 縁(ささら・よすが)は眉を潜める。
「ヘルドさん・・・どこにいっちゃたのかな?」
 佐々良 皐月(ささら・さつき)は口元に片手を当てて心配そうな顔をした。
「もしかしたら逃げているのかもしれないよな」
「―・・・誰からだ?」
「例えば・・・探しにきた生徒たちからとか」
「えー・・・どうして?」
 縁の言葉に皐月は納得いかない様子で首をかしげて問う。
「例えばだよ」
「うーん・・・誰かに追われているのかもしれないね・・・」
 明らかに何者かに壊されてしまっているドアノブと、火で燃やしたように焦げている鍵穴に皐月がちょんと手を触れる。
「だって・・・・・・もしも部屋にゴーストが入ってきちゃったら怖いよ。だから自分から鍵を壊したりしないと思うけどなぁ」
 ヘルドが鍵を壊したように思えない皐月は考え込んでしまう。
「看護婦を蘇らせたいヘルド、魂を集めたいケレス、生物兵器を作りたい誰か・・・・・・怪しいのは3人組か?」
「本人たち・・・もしくはヘルドに聞いてみないとなんともいいがたいですね」
 一緒に捜索している島村 幸(しまむら・さち)は首を左右にフルフルと振った。
「魂を集めること・・・不死者の軍隊を作ること・・・看護婦を蘇らせること。目的は違うけど利害の一致した協力関係とかか?」
「窓から逃げた形跡もなし・・・と」
 鍵が開いていたりしないか、遠野 歌菜(とおの・かな)は窓をじーっと見つめチェックした。
「(疑いを自分に向けないためにしても、わざわざ部屋の鍵を壊す・・・なんてことないか。となると・・・何者かがここにきて破壊したんだろうな)」
 荒れている部屋の様子を一通りチェックし、保健室から出ようとする。
「まぁ・・・ここにはいないようだから、とりあえず他の場所を探しに行こう」
「ここで考え込んでいても結論は出ませんからね」
「そうだな・・・」
 保健室から姿を消したヘルドを探すため巽たちは廊下へ出た。

-PM19:00-

「―・・・ここはまだ見てなかったよな・・・」
 政敏は4階の教室をドアを少し開け、ゴーストが潜んでいないか中の様子を覗く。
「一応ゴーストたちはいないうようですが・・・気をつけましょう」
「ナラカに引き込まれたらお終いよね」
「無事だといいが」
 教室の中に入るとガタンッと物音が聞こえた。
「あっ・・・ちょっと待ってよ!」
 逃げるように走り去ろうとする人影を見つけ、リーンが呼び止めようとする。
「ねぇここを開けて、私たちゴーストじゃないわよ」
 隣の教室に逃げられてしまい、机や椅子で入り口を塞がれていた。
 ドンドンッと戸を叩き、必死に呼びかける。
「ほ・・・本当・・・?悪霊が騙しているわけじゃないわよね」
 悪霊に追われていると思い込んでいる少女は恐る恐る返事をした。
「大丈夫だから・・・ここ開けてくれない?」
 ドアの向こうからガタガタンッと音が聞こえ、そっとドアが開かれた。
「よかった・・・さっきまでゴーストに追われていたからてっきり・・・・・・」
「たしかラビアンよね」
「えぇそうよ」
「ここからだったら生物室が近いよな」
「そこへ行きましょうか」
 カチェアたちはラビアンを連れて生物室へ向かう。



「あぁ〜相棒を連れてくれば良かった」
 校舎内を水無月 天(みなづき・てん)は1人、フラフラと歩き彷徨っていた。
「気晴らしに歌でも歌おうかな」
 森の熊さんを歌いながらカツンッコツンと階段を上る。
「えっと生物室と美術室・・・どっちへ行ってみようかな?どっちも上の階だっけか・・・イッて!」
 剥がれている木の板につまずき転んでしまう。
「あ・・・あれ?どっちから来たっけ」
 極度な方向音痴の天は、どっちから来たか忘れてしまった。
「んっと・・・こっちか!」
 感を頼りに廊下を走っていく。
「―・・・はぁ・・・はぁー・・・。ぁあ〜あちゃー・・・逆方向」
 神がかっているのか見事に道を間違えてしまい、ふにゃりと気が抜けてしまう。