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リアクション
第6章 少女の涙
-PM21:00-
「ふぅ・・・結構長い時間探し回っているけど見つからないわね・・・・・・」
ルカルカ・ルー(るかるか・るー)はグーッと背伸びし、疲れたようにため息をつく。
「こんだけ生徒たちが校舎内にいるんだ。誰か見かけているかもしれないぞ」
「それもそうね・・・美術室か生物室なら生徒たちが集まっているかしら?」
他のヤツに聞いてみたらいいんじゃないかと言うカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)に頷き、ルカルカたちはそこへ行ってみることにした。
「病棟で会った看護師の彼女の話からすると、やっぱり彼がそうなのかな・・・」
プリーストの服装でルカルカと一緒に廃校舎に来たエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は悲しそうに窓を見つめ、光の届かないその向こう側が彼女たちの深い闇のように思えた。
「(クリーチャーは化け物だから、幽霊とチガってコワクナイもん・・・)」
パートナーの後ろに隠れ、クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)は怯えながらキョロキョロと左右を見る。
「ふふ・・・夜中の校舎というのは探究心が躍り出しますね」
怖がっているクマラと真逆に、ザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)の方は楽しんでいるようだった。
「み・・・皆・・・進むの早いよぉ」
はぐれないようにクマラはエースの袖にしがみつく。
「あっ、急に止まらないで・・・・・・むぐっ!」
ザカコに口を塞がれ階段の方へ押し戻される。
彼らを庇うようにエースが前に立ち、頬に冷や汗を流しジッと何かを警戒するように見ていた。
エースの視線の先には小さな子供の霊がいた。
一緒に来た友達でも探しているのだろうか、聞きとれない小さな声でなにやらブツブツ言っている。
「―・・・・・・よし、行ったみたいだ」
「あぁゆうのに見つかると厄介よね・・・」
「見つかるって・・・何に?」
クマラが恐る恐る聞くとルカルカは首を左右に振り、無言で“聞かないほうがいい”という態度をとった。
ここで死んでいった者たちの霊は、生者に害をなす悪霊しかいないからだ。
「たしかこの辺りだと思ったんだけど」
「どうやらそこが生物室みたいですね」
彼女の方を軽くポンッと叩き、ザカコが壁にかけられているプレートを指差さす。
室内を覗くと生徒たちが謎解きに集中していた。
「ねぇ・・・皆、ヘルドさん見なかった?」
ルカルカが声をかけると生徒たちは知らない、見かけていないと言った。
「―・・・そう」
残念そうな顔をし教室を出て階段を下りようとすると、白衣を着た男が3階へ降りていく姿が見えた。
「あっ、ま・・・・・・待って。ねぇお願い待ってー!」
声を上げて追いかけるが、男は逃げるように走り去ろうとする。
「はぁ・・・・・・はぁ・・・待ってよ、私たちあなたに聞かなきゃいけないことが・・・きゃあっ!」
曲がり角で何かにぶつかってしまい、床に転びそうになるがなんとか踏みとどまった。
「何よもう・・・せっかく追ってきたのに逃げられちゃったじゃないの!」
少女が怒鳴り声を上げてルカルカを睨む。
「美羽さん早く追わないと行っちゃいますよ」
ベアトリーチはぶつかった拍子に床へ転んでしまった美羽を助け起こし、彼女と共にヘルドを追っていく。
「探し人は彼女たちと同じようですね」
「あぁ後を追えば彼に会えるかもな」
美羽たちの後を追おうというザカコにエースはこくりと頷き、急ぎ後を追うことにした。
「あれー・・・どこ行っちゃったんだろう」
「ねぇあっちにいるよ!」
見失ってしまった様子でルカルカが辺りを見回していると、クマラが服の裾をひっぱって知らせる。
行ってみるとそこには美羽たちとヘルドの姿があった。
どうやら階段で見かけた白衣の男はやはり彼だったようだ。
「やっと見つけましたね」
「えぇ・・・」
ザカコたちはようやくヘルドを見つけだした。
「この前、ここと同じに闇の世界に囚われたような廃病院を訪れたの。そこに・・・独りの看護師さんが現世とナラカの間に囚われたように存在していたのよ」
逃げた理由を問い詰めず、ルカルカは落ち着いた口調で話しかける。
「―・・・へぇそうなのか」
「エースから彼女との話を聞いたわ。貴方が助けたいのは・・・その彼女?でも・・・彼女はもう死んでいるのよ。それでも・・・なんとかしたいと・・・、ううん・・・できると?本当はわかっているはず・・・時計の針は戻せないし、それを彼女が望んでいるのかも」
まったく知らないというような態度をとる彼に、彼女は質問を変えて話を続けた。
「ねぇもしかして誰かに・・・取引を持ちかけられた?間違っていると頭では分かっていても?」
言葉を返そうとしないヘルドの方に手をかけて揺さぶった。
「同じ事になったら同じ事をするかもだけど、でも・・・でも・・・・・・!」
金色の瞳に涙を浮かべて顔を俯かせるルカルカは語りかける言葉が言い出せなくなり止めてしまう。
「不死の生物兵器が廃病棟で作られて、廃校舎に放たれていたようだけど・・・なぜ?」
傍でじっと聞いていた美羽が質問する。
「あれは材料は死者から奪った身体のパーツじゃないんですか・・・」
押し黙ったままのヘルドにベアトリーチェが問いかける。
「ゴーストは恋人を生き返らせるために、あなたが作っているんじゃないんですか?」
ザカコが彼女の言葉につけ加えるように言う。
「―・・・ぁあ。生き返らせるには・・・どうしても身体の素材が必要なんだ」
あまりの怒りに一瞬殴ろうとしたが、寸前のところでエースは手を止めてしまう。
「そんなことをしたって死んだ者は甦らない・・・。たとえ生前と同じ姿で生き返ったとしても、相手はそれで喜ぶのか?彼女は泣きながら実験をやめてほしいと言っていた・・・。恋人のためにも・・・もうこんなことはやめてくれないか・・・・・・」
真剣に語りかけるエースの言葉に、医者は再び黙り込んでしまう。
「少し質問していいですか?作られたゴーストたちは自我を持って動いているんでしょうか」
何も言わないヘルドにザカコが質問する。
「自我なんてない・・・ただ実験材料を確保するために、創造者以外を襲うように作られた存在だからな」
「もしかして・・・別の方が動かしているんですか」
「―・・・」
「持ちかけてきたのは誰なの・・・・・・。本当に倒すべきなのは・・・誰?」
答えようとしない彼の顔を見据え、なんとしてでも犯人を見つけ出したいルカルカが問い詰める。
「それは・・・・・・」
ようやく喋り出したヘルドの背後に、無数の亡者の手が群がろうと手を伸ばしていた。
「作られた者・・・ゴーストは創造主には襲わないはずでは!?」
ザカコが驚愕の声を上げる。
「いったいどういうことよ!」
バニッシュの聖なる光を放ち、創造主と思っていた男の服から亡者の手が一瞬離れ、彼はその場から逃げるように立ち去っていく。
「あっ・・・行かないで、待ってぇええー!!」
ルカルカは叫ぶように呼び止めようとするが、光がおさまるとそこに彼の姿はなかった。
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