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ネコミミ師匠とお弟子さん(第1回/全3回)

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ネコミミ師匠とお弟子さん(第1回/全3回)

リアクション


(7)喧嘩上等、血気盛んなお年頃

 キャンプ場で日向ぼっこしていた神代 明日香(かみしろ・あすか)は、大好きなエリザベートを追ってイルミンに入学していた。知り合いのヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)と共に学校の紹介をしようと並木に声をかける。
「こんにちは、学校お探しですか〜?」
「並木おねえちゃんに百合園を紹介するです」
 流石にこれだけの学生に声をかけられると、並木も好戦的な学生が多いのを学習してあまり油断しなくなっている。可愛らしい女の子でも動きやすいようにある程度の距離を取っていた。
「百合園もいろいろ事件があって、れんしゅうとかがんばってる人たちもいるし、ぶどうけいのクラブもつよいそうです」
「百合園……ああ、あの湖にある学校ですね?」
 並木がくるりとヴァイシャリーの湖を見た。
「おうちのパパママをあんしんさせてあげないと、ゴビニャーししょうもゆるしてくれないですよ!」
「う、うーん」
 並木は声に出しては言えないのだが、外見がお嬢様とは程遠い自分ではいろんな意味でやっていけないのではないかと思った。並木の外見はよく言えば中性的なのだ。
「私は『ご主人様に呼ばれる前に察知して姿を現し、更に声を掛けられる前に御用意する』マジカル☆メイドになりたいのです〜」
「マジカル?」
「はい、そのために転校して大変な修行を行っています♪」
 明日香の発言は半分嘘なのだが、堂々と笑顔で宣言した。しかし……今回、結構な学生にボコられているため並木は簡単に信じしなかった。瀟洒なメイド服に空飛ぶ箒で何の修行をするのだろうか……。ヴァーナーと明日香を交互に見つめると、しばし黙ってこれまで集めた情報をメモに記していく。
「自分のイメージの修行は、あの方々に近いのですが」
 並木が指をさしたその先には風森 巽(かぜもり・たつみ)菩提 達摩(ぼーでぃ・だるま)が理論的にはめちゃくちゃだが、精神が抜群に鍛えられそうな修行をしていた。ヴァーナーはすごーい! と、手をパチパチさせている。


 朝は、足腰の筋力強化! 走り込みだ!
 昼は、空中でのバランス感覚を鍛えるぞ!
 夕方は、湖で精神修練と食料調達も兼ねて、釣り!


「老師、お願いしますっ!」
 『今日の目標』という紙をテントに貼り付けて、仮面ツァンダーソークー1の新必殺技開発にいそしんでいるようだ。木の上からジャンプし、老師が投げてくる薪や石をかわしたり、蹴り弾きながら、地面に顔を出した大岩をたたき壊した。
「もっとちかくで見たいですっ」
 ヴァーナーが走って行ったので並木と明日香も見学することにした。
「足を踏ん張り、腰を入れんかぁ!」
「空中じゃ踏ん張れません!」
「気合で何とかするんじゃ!」
「無茶だー!?」
「ほれほれ、こんなもんでもう音を上げるんかのぅ?」
 明日香は少々あきれているようだ。しかし、並木はいかにも格闘家らしい修行に興味しんしんのようである。
「修行の途中で失礼します! 自分は笹塚並木と申すものです」
 巽と菩提は並木のことを噂で聞いていたので、親身になって応対してやった。
「蒼空学園は設備が充実してるから、トレーニングとかには持って来いだとは思いますね」
 蒼空学園についてはもう色々な人から聞いているようだが、あえて他校を進めてみる。
「どうも、あそこは向いていない気がして……」
「貴公のお師さんは、ここに住んでいるのだろう? なら、ここに近い学校の方が良いのでは?」
 ここから近い学校だと百合園かイルミンになる。ちょうど明日香とヴァーナーのいる学校だった。
「修行の一環で対戦勝負しませんか〜」
 明日香が素手での勝負を持ちかけると、そういうことなら、と並木も了解した。契約している分だけ身体能力は明日香が上回っているが、並木のほうが身長が高いためそれなりに互角に戦えているようだ。明日香は並木に光術で目くらましをかける。
「これが魔法。パラミタの学生にはわりとポピュラーな技ですよ〜」
「パラミタは忍者や、魔法使いが本当にいるんですねっ」
 イルミンが魔法の学校という予備知識は氷雨達に教えてもらっていたので、あまり驚きはしなかった。それなら、と明日香はその身を蝕む妄執を見せようとする。が、菩提によってストップされた。でこぴんしたかった明日香は少々不本意そうだ。
「む〜。魔法に興味を持ったらイルミンに遊びに来てくださいね〜」
「人生とはいつも向かい風じゃ。ただのぅ、それでも己の目で前を見据え、道を決め、肩で風を切って、前へと進むからこそ、人は格好良く光るもんじゃよ」
 なるほど、と頷く並木。実際に見てみなければしょうがない、あと直接話を聞いていない学校はシャンバラ教導団か。
「あの、あなたたちは何かその……目的があって修行をしているんですか?」
「誰かに勝つ為じゃない、自分の信念を貫く為に心身を鍛えてるんだよ」
「なぁに、困った時、迷った時は己の直感に従うのも手じゃて」
 その言葉を聞いて並木が何かを言おうとした瞬間、どこからか飛んできた猫が飛んできた。まるで誰かに投げられたかのようで、その先を見ると変熊 仮面(へんくま・かめん)にゃんくま 仮面(にゃんくま・かめん)を連れて股間がレンの投げた猫で隠された状態で立ちふさがっていた。腰を突き出し仁王立ちである。並木は彼が追いはぎにあったのかと思った。
「あ、ゴビニャーししょ〜!」
「並木君、ここにいたのですかにゃ」
 ヴァーナーがトテトテと向かった先にはイルミン組と別れたゴビニャーがいた。並木君のうわさが広まっていることを心配して、ここまで探しに来たらしい。そして、レンが言っていた裸族の意味がなんとなくわかった。
「プニプニです〜♪」
 ぷにぷに。
 ヴァーナーが肉球を触っているが、小さい子だったのでゴビニャーもニコニコと好きなようにさせていた。
「ふふふ…、笹塚並木よ! 肉球が無いのに肉球拳法とは片腹痛い!」
「ふふふ…、片腹いにゃい!」
「師匠、あの人たちはなぜ服を着ていないのですか?」
「………わからにゃい」
 風もないのに薔薇学マントをはためかせ、腰には猫をぶら下げてずんずんと向かってきた変熊とにゃんくま。わあ、お花と仔猫のぷりてぃーな組み合わせだぞー☆
「どちらがゴビニャー先生の一番弟子にふさわしいか勝負だ!」
「しょーぶにゃ!」
「うーっし! 面白そうだな……おっさんも入れてくれや」
 ラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)が拳をパシンと叩きながら登場し、いかつい顔で子供っぽい笑顔を作る。並木とゴビニャーは顔を見合わせたが、ゴビニャーは並木が契約者でないことを考慮してラルクとは自分が戦おうと申し出た。



「貴様が負けたらおとなしく薔薇の学舎に入学してもらうぞ!」
 と、言いつつも戦うのはにゃんくま仮面である。変熊は2つ折りにしたざぶとんを枕に、休日のお父さんスタイルで応援している。むきだしの美しい足は先日テレビで見たエクササイズの実践のため、コンパスのように閉じたり開いたりを繰り返しているが……。
「師匠、長い間お世話ににゃりました……」
「な、長い間って1回しか一緒に冒険出て無いだろ!」
 いきなりぺこりと頭を下げたにゃんくまに動揺する変熊。
「もう、猫缶の開け方以外師匠から学ぶ事はありません。ゴビニャー先生に師事しますにゃ」
 や ば い 。
 変熊は夜にお腹を冷やさないように気をつけたいのに、にゃんくまがいなくなったら大変な事になる。
「そうだ? 肉球拳法の通信教育ってのは?」
「僕をなめてるにゃ?」
「……嘘です」
 実は、並木はにゃんくまと戦うことに対してためらいがあった。こ、こんなにキャワユイ仔猫と戦えるわけがないではないか。
「皆忘れがちだと思うのだが、並木はまだ契約者じゃない。普通の人間なのだよ」
 毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)がもめている1人と1匹の間をすり抜けて、並木の元へとやってきた。毒島も並木と対戦したいとのことで、スキルなしの純粋な格闘勝負を始めることにする。
「よろしくお願いします!」
「貴様じゃ我に触れる事すら出来ん」
 並木の人よりすぐれた特徴は動体視力とバランス感覚だ。魔法の才能は0で、攻撃・守備はずば抜けていいわけではない。が、回避と命中が優れていた。
 身長が並木のほうが高かったので、回し蹴りで毒島のどてっ腹に1発おみまいしようとする。毒島は腕を十字にしてガードすると、足をつかんでカウンターを狙った。このまま寝技にもってかれるとヤバいと判断して、並木は足を引っこめる。

「というわけで、笹塚並木よ! どちらが弟子に相応しいか『足し算ドリル』で尋常に勝負にゃ!」

「「…………」」
 緊迫した中で自由な発言をするにゃんくまに2人は脱力した。
「薔薇学なら敷金礼金無し。家具家電付きの全寮制で即日入居できますよ……」
 並木の耳元でこっそり囁く変熊仮面。そんなやりとりを見て、毒島は頭をぼりぼりとかくとにゃんくまのドリルをひったくり光速で全部回答してしまった。笑顔で地面にドリルを投げる。ガーンという表情のにゃんくま。
「ひ、ひとの皮をかぶったオニにゃ!!」
「にゃんくま〜! なみきん君になんか負けるな〜!」
「ド、ドリルなくなっちゃったにゃ!!」
「我の邪魔をするからだ」
 困った並木は、とりあえずにゃんくまを持ち上げて高い高いしてみた。



「俺としては、強い奴であれば誰でも拳を交えるぜ?」
「お兄さんでしたら、実際に戦うのもいいでしょうにゃ」
「ルール無し、無制限一本でどうだ?」
「了解ですにゃ」
 ゴビニャーは戦う相手に彼なりの基準を持っているらしい。それを満たしていない場合は適当に逃げてしまうようだ。ラルクと邪堂はそれを満たしていた。ゴビニャーは再び、ふらふらと千鳥足でランダムなステップを踏み、眠そうに顔を洗うしぐさを始めた。
「へ! 手は抜かねぇからそのつもりでな?」
「にゃーん」
 ラルクはドラゴンアーツを乗せた拳を打ち込む! ゴビニャーは地面を転がって交わすが、拳圧で頬に1筋の赤い線を作った。
「うらうらうらぁ!!!」
「……遅いにゃ!」
 ゴビニャーは本気を出して超感覚を使用した。透当ての攻撃を盾にして、一気に間合いを詰める。ラルクが遠当てを殺気看破で回避すると、避けた後ろの岩に肉球の形の穴があいた。
「おっと、惜しいな!」
 ゴビニャーの追撃を軽身功を利用し避けようとするが、格闘家の使える技はゴビニャーも使えるようだった。
「ジャタの森で獣人に勝つのは……10年早いにゃ!!」
 互いに則天去私で両側からぶつかり、今回はゴビニャーが競り勝ったようだった。ゴビニャーが全身猫の姿でいるのは、結構な数の対戦者から逃げるときに木の上を移動したり、森の中で戦うのに有利だかららしい。


「先生、こちらにどうぞ!」
「これはどうもにゃ」
 変熊がくれた座布団にゴビニャーはちょこんと座ると、並木君とこれまでを報告しあった。ゴビニャーは椅子より座布団派だ。変熊は人差指をくるくるさせながら、プニプニしたい! プニプニしたい! とゴビニャーと手元を見つめている。
「並木君、入りたい学校は見つかったかにゃ?」
「シャンバラ教導団の人に話を聞いてみようと思っています」
「むむむ…肉球が俺を誘っている……。もう、我慢ならねぇ〜っ!! 肉球プニプニさせろやぁっ!」

 ヴォゴォッッッ………!!

 妖怪のようにぴよーんとゴビニャーに飛びつこうとした変熊は、襲われそうになっていると判断したルカルカ・ルー(るかるか・るー)に笑顔でぶっ飛ばされた。クロス・クロノス(くろす・くろのす)は飛んでいく変熊をあきれ顔で見ている。
「にゃんくまー、教本DVDじゃだめー!?!? パートナーやめないでー!」
「もうこれ以上しつこいなら、無理やりパートナーにされたって言いふらすにゃ!」
「ぎゃー」
 こうして変熊は星になった。
「教導団のルカルカよ。よよしくっ。
 貴方、体育得意そうだし教導団向いてるよ。友達になって、遊んだり訓練したいわ」
「私も教導団の者です。並木さんの高い運動能力を拝見させていただきました。そこで、並木さんに教導団に入学していただきたいのですが話を聞いていただけますか?」
「わぁっ、教導団の方ですね! よかったら、教導団のことをいろいろ教えてください」
「貴方の求める物は、教導団にあるって自信持っていえるよっ」
 ルカルカは軽く二刀流で剣技も含んだ格闘の型を、スカートでふわりと軽業のように舞ってみせた。無駄のない武道の動きは、洗練された社交の場にも通用するほど美しい。しかし、ルカルカはダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)の助言で、客観的な視点も考慮して学校を紹介することにした。クロスも転校の可能性を考慮し、いい部分も悪い部分も知ってもらおうとしていた。まずはキャンプ場にいた林田 樹(はやしだ・いつき)の元へ並木とゴビニャー連れていく。色々な人に会わせたほうがよいだろう。
「疲れてない?」
「参考にしてくれ。
 入学には適性有る学校がいい。しかし、生徒の勧誘じゃ宣伝になるから正確さに欠ける」
 はいっ♪ と差し出されたルカルカからはお茶ボトル、ダリルからは全学校の一般向けパンフレットを受け取った。
「読んでもらった上で教導団を選んでくれると嬉しいけどねっ」
 あははっ、とルカルカは笑った。


「樹様ー、ダッチオーブンの設置終わりましたよー。お昼ができあがるまで、こたちゃんと一緒に修行いたしませんか?」
 ジーナ・フロイライン(じいな・ふろいらいん)が調理の準備をしながら樹に報告をしている。樹たちは軍事訓練のためにキャンプを行っているのだ。
「ねーたん、ここが、しゅぎょーばしょなんれす」
「なるほど、コタローの言う通り、キャンプにちょうど良い所だな。カモフラージュの仕方を訓練するにはうってつけの所だ」
「こた、ぱしょこんれ、みっけたんらお!」
「良く見つけてきたなぁ」
 樹は林田 コタロー(はやしだ・こたろう)の頭をいい子いい子すると、地形や修行のスケジュールを確認した。コタローは褒められたことで『えっへん』と胸を張っている。今回のキャンプはコタローの『しゅぎょーしたいんれす!』という提案から始まったらしい。
「おーい☆」
「ルカルカ様、クロス様!
 って、あら? こちらはどなたですか? 笹塚様、ですか」
「ああ、『ひまわり娘』は、いつでも幸せいっぱいだな。しかし、戦闘時は頼もしいぞ。婚約者も守れそうだ」
「はい、学校を探していまして……。ルカルカ様に教導団のみなさんを紹介してもらっています」
「おーえのごみにゃーって、ゆーめーな、かくとうかの、しゅぎょーじょーなんらって。『かくとうか』って、けんれ、たたかうひと、なんれしょ?」
 クロスは並木の事情を樹たちに説明した。コタローは格闘家と剣詩を混同しているようだ。樹は後で教えたほうがいいかなーと考えつつ、並木たちに向き直った。
「転校したいが、どんな学校があるか分からない?」
「ありぇ? こにょひと、だーれ? かくとーか?! すごいにゃー」
「はい! さっぱりです!!!」
「ま、まあ、私の所属校で良ければ、話をするぞ。
 私が所属する『シャンバラ教導団』は、平たく言えば軍事学校だ。『歩兵科』という学科があり、肉弾戦や銃撃戦を望む奴らがたくさん所属しているぞ」
「軍事訓練や格闘訓練が授業としてあり、外部交流の一環として周辺都市から地球式の訓練を希望する軍人の方を受け入れて生徒ととの軍事訓練を行ったりしますね」
 ふむふむ、とメモをとる並木。軍事学校というと銃や作戦が中心なのかと思っていたが……。
「外部に所属している格闘技の使い手と一戦交える事も出来ますよ」
「修行するには良さそうな環境ですね」
「どうせなら、沢山の友達と、楽しく一杯修行できた方がいくない? 教導団には『体験入学』制度もあるのよ」
 どちらかというと『訓練』に近いかもしれないが、鍛えるという点ではとても向いている。
「そうですねー。『軍事学校』という響きだけで驚かれる方は多いですね。所属している方々は、愉快な方が多いですよー」
「ただ、軍人の育成、指導的人材を輩出することを目標としているので他校より厳しい規律が存在する事が大きな部分での短所となりますね」
「『にゃんこ小隊長』も、すごいな。部隊の構成員が、全員着ぐるみの猫なんだ。『ゆる族』という種族だが、ぱっと見では猫の長になっているんだぞ、学生」
「ルカルカ様は、地球人のフィアンセがいらっしゃるとか……きゃっ!」
 ゴビニャーは、その人は朝方うちに遊びに来た人だろうかと考えた。並木は別の部分に首をかしげている。
「ゆる族?」
「え? ゆる族って何?ですか? ……えーっと。樹様、笹塚様はひょっとして」
「樹ちゃん、テント設営終わったよ。って、カラクリ娘、僕の樹ちゃんに何やってんのさ」
「ちっ、あんころ餅ですか」
「……この分だと、パートナー契約のことも分かっていないな。
 お! 洪庵、ちょうど良い所に来た。ちょっと契約について教えてくれ」
 樹はテント設営を行っていた緒方 章(おがた・あきら)をちょいちょいと呼び寄せた。事情を聞いてふむふむと頷く。まあ、簡単に言うと。と、前置きしてレクチャーを始めた。
「パラミタ大陸の住人である様々な種族と契約することが出来れば、この地に拒まれずに、生活することが出来るってワケなのさ」
「ゴビニャーは獣人だにゃ。そっちのお兄さんはシャンバラ人……ではなく、英霊のようだにゃん」
「そうそう。やり方は簡単、契約のためのグッズを手に入れ
契約の泉に行って、即☆契約!
 こんな感じで契約できる種族とグッズが対応しているんだ」
 章は親切に一覧表を書いてくれたのだが、達筆すぎて読めなかった。並木は……本人がそれを自覚しているのかがやや気になったが、笑顔で受け取った。アートだ。うん。
「ゆる族は、そこのコタローちゃんだよ♪」
 ルカルカがコタローを紹介する。
「でゅらんだるっ! でゅらんだるっ!!」
 ハエたたきを振り回して修行をしていたコタローは、『ふいー、これれ、さいきょーのかくとーかになったれす!』としばし休憩しているところだった。
「契約制度は一応知っているんですが、章さんはどうして樹さんと契約したんですか?」
「あ、僕の場合は、泉の前を通りがかった樹ちゃんにひと」
「樹さまー、お昼たべましょうかー!!」
「目惚れだったの」
「契約は、互いの絆を高める事でもあるしな……まあその、次頑張れ」
 章はそのコメントの反応を樹に期待していたようだが、展開を予想したジーナが樹に話しかけて彼のコメントは耳に届かなかった。
「教導団員ではなく個人として、ゴビニャーさん・並木さんと教導団で活動できることを強く願っています。どうか、ご検討くださいね」
「もしかしたら他校の方が向いてるかもしれない…。転校には学科知識が足りなくても『体験入学』や『見学』ならどう?
 制度のない学校は『見学』制度のある学校は『体験入学』で、大江戸先生も誘ってアドバイスもらったりしてさ?」
「気の合う友人のいる学校でもいいが、それだと大江戸に認められる修行ができるかというと……わかるだろ?」
「そうにゃー。ダリルさんの言うとおり、いろんな面から考えるのにゃー」



 色々な人からアドバイスを受け、笹塚並木は入学したいと思う学校を考えることにした。