First Previous |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
Next Last
リアクション
「これであなたもヒーローだ!」
正義から、強引に『ヒーロートレーディングカード』を数枚譲り受けたパッフェルは、再び一人で店内を歩いていた。
やや疲れを感じたため、休憩する場所を探していたのだ。
「パッフェルちゃん、みーつけたっ!」
がしっ!
いきなり腕を組んできたのは、騎沙良 詩穂(きさら・しほ)だ。
明らかにパッフェルを待ちかまえていたようだ。
「疲れたでしょ。こっちでちょっと休憩しよー」
「ひとやすみできるなら……」
詩穂がパッフェルを引っ張って連れ込んだのは、実物大人形ハウス。
ここ最近、女子の着せ替え人形も進化し、ほぼ人間とかわらない大きさのものも出ているらしい。
人形ハウスは、そんな人間大の着せ替え人形で遊ぶためのおもちゃだ。
人形用とはいえ、ハウスの中にはソファーやテーブルがきちんと用意されていた。贅沢なおもちゃだ。
パッフェルは、ソファーに座ってふうっと息を吐いた。意外と座り心地もいい。
「えへへへ。パッフェルちゃんと、おままごとー♪」
詩穂は、ままごと用のお茶碗やスプーンを並べて、ちょっとした同性気分を味わっていた。
またパッフェルも、気まぐれでお茶碗とスプーンを持って食事するフリをするものだから、詩穂はホワホワと舞い上がってしまった。
「パッフェルちゃんって動かないでいると本当にお人形さんみたいで可愛いよね☆」
「……そうかな」
「試しに動かないでいたら、お人形さんと間違えて子供たちも来るかもしれないよ?」
詩穂のそんな提案を鵜呑みにしたのか、単に疲れていたのか。
しばらくの間、パッフェルは本当に、人形になったかのように動かなかった。
「お人形さんのパッフェルちゃん、ホントに可愛い! このままお持ち帰りしたぁい……」
詩穂は、うっとりとパッフェルに見入っていた。
「あー、みてみてー。着せ替えのおにんぎょうに、見たことないやつがある」
「わー、2体ともかわいー!」
数人の女の子たちが、本当に人形だと思って集まってきた。
(……ってか、詩穂まで人形だと思われてるぅ)
集まった子供たちにしばらく弄られた後、ついつい詩穂がくしゃみをしてしまったため、子供たちは蜘蛛の子散らすように逃げていった。
「子供に弄られるのも、楽しいかも……」
パッフェルがひとりごとで、そう呟いたとか呟かなかったとか。
いろいろと回り道をしたものの、パッフェルはようやく目的の売り場にやって来た。
『サバゲーコーナー』と書かれた、迷彩色のプレート。
ここには、パッフェルの大好きなエアガンが、大量に取り扱われていた。
「やあパッフェルくん。なに探してんの?」
いくつかのエアガンを手にとって感触を確かめているパッフェルに、桐生 円(きりゅう・まどか)が声をかけた。
二人は何度か面識がある。
「そろそろ新しいのが欲しかったから……」
言いながらパッフェルは、ガシャッとエアガンをかまえて見せた。
「……これはいい」
「さっすがパッフェルさん。いいものに目をつけたわねー」
オリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)が、ぱちぱちと拍手をした。
「……これの特徴を知ってるの?」
パッフェルがオリヴィアにそう質問をした。
「え、えっとぉ……それはねぇ……けっ、健康器具よ!」
……エアガンなのだが。
「あ、わかった。それって確か、ヌンチャクだったわよね!」
「……」
オリヴィアの知ったかがきれいにバレたところで。
「パッフェルちゃん! おあっフェルちゃん! これ! これでサバイバルゲームしたらきっと楽しいよ」
ぶんぶんと、売り物のエアガンを振り回しながらミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)が満面の笑顔で歩いてきた。
ぶんぶんぶんぶん!
あまりにも激しく振り回すので、周りは冗談抜きで危険な状況だ。
「あっ、危ないからやめるんだ!」
円とオリヴィアが静止するも、ミネルバはまだ動き足りないようで、不満げな表情だ。
そんな様子を見ていた円が、パッフェルに提案こんなした。
「パッフェルくん。まだ時間はあるかい? よかったら、屋上に行ってみる?」
「屋上?」
「ここの屋上には、いいカンジの森があるんだよ。そこで、うちのミネルバを遊ばせようと思って」
犬扱いされているのにも気が付かず、ミネルバは嬉しそうにぱーっと笑った。
「それに、サバゲー用のエアガンは、木々の中でこそ魅力を発揮するもの。新しい相棒を、早く自然環境の中で見てみたいと思わないかい?」
パッフェルの瞳が、きらりと光った。
First Previous |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
Next Last