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闘魂 ☆ 裸具美偉

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闘魂 ☆ 裸具美偉

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第四章 賑やかなハーフタイム


「皆さんの応援。ハーフタイムでご主人様方を癒します☆」
「変熊仮面様の応援に来ました」
 騎沙良 詩穂(きさら・しほ)セルフィーナ・クロスフィールド(せるふぃーな・くろすふぃーるど)が坂上樹と七人の爺の前に立った。
 セルフィーナの方は、司会に興味がある訳では無さそうだ。
「司会などさせていただけると嬉しいのですが」
「は?」
「詩穂は、秋葉原四十八星華のリーダー担当です。アナウンスは自信があります☆」
 詩穂は元気に言った。
 ハーフタイムにインタヴューなどができないかと思って、樹たちを待っていたのだった。
「ふおおおお! 秋葉原四十八星華じゃと!」
「アイドルというやつじゃな」
「それよりも……むほぅ、乙女のかほり♪」
「若いエキスはいいのう! 若返るわい。最近、朝はなかなか『立て』なくてのう……」
「昔はのう…元気に立てたもんじゃわぃ」
 爺さんたちは色めき立った。
 男の戦いに興味の無い爺たちは、喜んで騎沙良の方に行く。無論、本心は騎沙良のパンツ撮影だ。
「えー? お爺ちゃんたち、そんなに元気ないんですかぁ? じゃぁ、詩穂からのミラクルキッスでーっす♪ ……ちゅっ☆」
「ふおおおおお! 昇天じゃー!」
 詩穂のアリスキッスに爺さんAは一撃だ。
 それを見た爺さんBは後ずさった。
「わ、わしに寄るでない!」
「はい?」
「花の乙女は愛でるもの! 仄かな馨(かほ)りに甘酸っぱい郷愁と憧憬をこめて、そっと静かに覗くものじゃ! き、き、き……キッスじゃと! わしはそんなの許さーーーん!」
 爺さんBは拳を握った。
「初心を忘れおって、この馬鹿もンがあ! うりゃ!」
 爺さんBは爺さんAの頬を殴った。
 長年、心を一つにしてきた仲間への愛のムチだ。
「ぐわあ!」
「わしらの第二か条は何じゃ!」
「ぐぬう……相変わらず良いパンチじゃったわい。七人衆第二か条! スカートの裾ラインより下からはのぞかないこと、そして……力の限りのぞくことじゃ!!」
「そうじゃ! 心の中で、命の限り【ガン見】! それが奥義」
「わ、わしが悪かった……」
「気にするな。お前はまだ若いのじゃ。失敗もある」
 七人ともみんな同じ顔なんだけどな☆ ……と詩穂は思っていた。
 誰が若くて、誰が歳をとっているのか、全くもって見当が付かない。
「さぁ、覗こうじゃないか! ワシらの峠を」
「そうじゃ、あの三角の頂を思い描くんじゃ!」
「「ガン見〜〜〜〜〜〜」」
 爺さんたちは詩穂の方を向く。
「消えて無くなれぇええええ!!!」
 やってきた美羽が、いきなり爺さんズを蹴り上げた。
「ぐおお! ケツに食い込むよな、そのキック! 最高じゃーーーーーーー♪」
 爺さんが飛んでいく。
 それをそっと影から由宇が見ていた。
 由宇はメイドミュージシャンになりたいという願いをもっている。由宇は騎沙良に声をかけられるのを待っていたのだ。
「いいですねぇ〜」
「由宇さんも、出たいんですか?」
 ルンルンは言った。
「えー、やっぱり出たいですよぉ。ねぇ、美央さん」
「私はどっちでもいいです」
 そうこうしていると、爺さんたちは由宇の存在に気が付いた。そして、近付いてくる。
「ふほほ〜、可愛いお嬢ちゃんたちじゃのう」
「そうですかぁ」
 とか言いつつ、由宇の方も悪い気はしていないようだ。
「どうじゃな! ビデオに出ないかのう」
「本当ですかぁ?」
「『わしらの』ビデオに出てくれたら、本当に嬉しいんじゃがのう」
「本当じゃのぅ」
 爺さんBとCは三人を誘った。
「そうだ! 俺もあんたたちの出てるビデオ見たいし」
 樹も横から口を出す。
 萌えっ娘の登場に喜ぶ爺たちと樹。
 だがしかし、ルンルンが男の娘ということを知らずに、爺たちは乙女の香るパンツを撮影しようと頑張るのだった。


「今日は暑いですからね、冷たいものをどうぞ」
 そう言って神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)は微笑んだ。
「あ、ありがとうございます!」
 アイスティーを受け取った他校の女生徒は真っ赤になっている。 
 素敵な男性に囲まれてのスポーツ観戦は、まるで夢のようだ。
 そんな様子を見て、レイス・アデレイド(れいす・あでれいど)は苦笑する。
 暑さに弱くて、すぐにへたり込むのは翡翠の方だからだ。
 女の子の方は、必死に話を続けようとしている。
「きょ、今日は暑くって困りますよね。きっと、みんなも倒れちゃいますよぉ?」
「そうですね……怪我も心配ですが、日射病もきついかもしれないですね」
「……ぷっ」
「なんですか、レイス」
「あ、いや……何でも〜?」
 どことなくレイスの語尾が半音上がっているように感じて、翡翠はそっちを見た。
 クスクスと笑うレイスは、相変わらずそ知らぬふりだ。
「さあ、選手の方もどうぞ♪ ……でも、主殿。運動神経良くありませんでしたか? 身軽だと思ったのですが」
 山南 桂(やまなみ・けい)は、試合中の選手にも飲み物や食べ物を皆に配りつつ言った。
「暑い所は苦手なんですよ」
「そうですかぁ、残念」
「なにがです?」
「え? 主殿の活躍を見たかっただけですよ〜」
「それは次の機会にでも」
 翡翠は誤魔化した。
「ああ、暑い。俺、制服苦手なんだよな。……この暑い中、試合なんかよくやるなぁ」
「みんながみんな、レイスみたいじゃないですよ」
「失礼だな。俺は正直な感想を言ってるだけだぜ。それより翡翠。ちゃんと帽子被れよ?」
「え?」
「前に倒れただろう?」
「そうですね……じゃあ、これでも被りますか」
 そう言って、翡翠は麦藁帽子を被る。
 途端、翡翠の男前ぶりが半分ぐらいに下がった、ような気がした。レイスには。
「麦わらだと売り子みたいだな」
 レイスはボソッと呟いた。
「え?」
「あ、なんでも? ほら、あそこにこの前の坊やがいるぜ。飲み物やらなくていいのか? 選手だろ」
 ごまかしてレイスが指差したのは、ルシェールだった。
 長いお下げを揺らして歩いている。
 翡翠は合点がいったのか、ルシェールの声をかけた。
「あ、そうですね。……ルシェール君。飲み物いかがですか?」
「はぁい? あれ……この前のお兄さんだ。アイス屋さんでいっぱい怒ってたけど、今日は……怒ってない?」
 恐る恐ると言った風に、ルシェールは近付いていった。
「怒ってませんよ……と、いいますか。貴方に怒ってませんしね」
「そうなの?」
「あれは変熊さんに、です。今日も出場してますが、褌を付けているだけマシです」
「ふうん」
「さあ、飲み物をどうぞ」
「うーんとね。ありがと。飲みたくないの」
「おや? お菓子もありますよ」
 翡翠は冷たいお菓子を出した。
 抹茶のティラミスと金魚がモチーフのくず餅だ。
 それを見るや、ルシェールの目が輝いた。
「ふわぁあああ♪ おいしそう」
 抹茶のティラミスには、アクセントとして、ビスキュイにふくませたフランボワーズが入り、上にも抹茶がふりかけてある。くず餅の方は、ヨーグルト風味のくず餅に、苺の自家製ソ−ス。
 どれも綺麗で、そして――とても冷えていた。
「うーうー……でも、やめとく」
「何でですか?」
「あのね。朝も食べれなかったんだよ。水とか飲んで走ると、すぐバテるよって、聞いたことあるし」
 ルシェールは試合運びが不安で、飲み物やお菓子を珍しく断った。
「しかたないですね。残念ですけど」
「うん。俺もね、いつもだったら、いっぱい……食べたい」
 ルシェールはじっと翡翠を見てから、こう言った。
 瞳が訴えている。
 何を言いたいのかがわかって、翡翠は思わず笑ってしまった。
「試合が終わったら、欲しいなぁ。取っておいてくれる?」
「えぇ、いいですよ」
「本当? わーい! 椿ちゃんの分もね!」
「はい、約束しますよ」
「ありがと! じゃあ、またあとでね」
 ルシェールは手を振ると、自分の陣営の方へと走っていった。