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新春ペットレース

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新春ペットレース

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「さて、前回の雪辱戦といこうではないか……。ゆけ、村雨丸よ」
 悠久ノ カナタ(とわの・かなた)の命を受けて、武者人形の村雨丸がスタート地点へと移動していく。
「ふっ、俺様の部下は貴様らのペットとは、潜り抜けてきた修羅場の数が違うにゃ!」
 がしゃこんと歩いて行く村雨丸を目で追った後、鼻で笑いながらシス・ブラッドフィールド(しす・ぶらっどふぃーるど)が言った。彼の前には、総勢十四匹ものゆるスターとデビルゆるスターとで結成されている新生ゆるゆるパイレーツが勢揃いしている。実際に、シス・ブラッドフィールドと数々の戦闘をくぐり抜けてきた猛者たちだ。
「俺たちは最強にゃー!」
「ちー」
「雑魚共には負けないのにゃー!」
「ちー!」
「絶対に勝つのにゃ」
「ちー!!」
「よし、行くのにゃー!!」
「ちー!!」
 シス・ブラッドフィールドに鼓舞されて、新生ゆるゆるパイレーツたちが駆けだしていった。
 
    ★    ★    ★
 
「ははははは、雪だるま王国騎士団長、クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)、来場! いいですか、今こそ、最も優れたペットは雪だるまであると証明すべきときなのです。この私が全力でサポートしますから、頑張ってください」
「うむ、前回の雪辱戦でござる。雪の恥の戦いでござる。恥を雪ぐのでござる!」
 気合い充分で、童話 スノーマン(どうわ・すのーまん)が答えた。
「そうでスノー。今は冬、雪だるまがその真の力を発揮する季節でスノー。ワタシたちの雪だるまが負けるはずないでスノー」
 そう同意しながら、魔鎧 リトルスノー(まがい・りとるすのー)が、童話スノーマンのペットたちである小雪α・β・γの三体のミニ雪だるまをじっと見つめた。
 ――あの雪だるまたち、小雪という名前は訳せばリトルスノーでスノー。なぜ、スノーマン様がワタシに近い名前をペットにおつけになったんでスノー? これは、もしかしてフラグ!? まあ、うまくいけば玉の輿でスノー? これは、是が非でも頑張りまスノー。
 なんだか勝手な思い込みをいだきながら、魔鎧リトルスノーがぽっと頬を赤らめた。
 
    ★    ★    ★
 
「よおーし、準備は万端だよ」
 釣り竿を用意して、立川 るる(たちかわ・るる)が自信満々で言った。
 前回のペットレースでは、ネコちゃんたちが罠にかかって大変だったので、今回はそういうペットを見つけたら釣り竿で釣り上げて、罠から救い出してあげようというのである。
「まるで、空から蜘蛛の糸を垂らすお釈迦様のような私……」
 ちょっと自画自賛な気分に浸って、軽く火照った頬を両手で押さえながら立川るるがつぶやいた。
「ミケのペットたちも、罠にかかっていたら助けてあげるからね」
「なーなー」
 隣ですでに縛られている立川 ミケ(たちかわ・みけ)に声をかけてみるが、いつも通りのなーなーという鳴き声しか返ってこない。にしても、何か様子が変だ。
「ミケ? あれっ? ミケじゃない!?」
 椅子に縛られている猫を確かめて、立川るるは叫んだ。もし違う猫が縛られているとしたら、本物の立川ミケはどこへ行ってしまったのだろうか……。
 
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「本当にいいの?」
「うん。だって、ローゼンクライネは、私だけの物じゃないもの」
 聞き返すコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)に、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)はそう答えた。今回、彼女の方は、パラミタペンギンズで優勝を狙うことにしている。
 もともと、オリヴィエ博士の手による改造ゴーレムであるローゼンクライネは、コハク・ソーロッドとの関わりの方が深いと言える。ペアを組むなら、こちらの方が正当な組み合わせだ。
「彼女なら、キッと、コハクの期待に応えてくれるよ。もちろん、私のパラミタペンギンズだって負けないけどね」
 そう言って、小鳥遊美羽はコハク・ソーロッドにウインクして見せた。
 
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「今回こそはちゃんとやるわよ! あのボケガラスはこの通り封印しておいたわ!」
 そう言うと、日堂 真宵(にちどう・まよい)はグルグル巻きに縛りあげておいた使い魔のカラスであるふぎむにを、ボーラボーラよろしくブンブンと振り回した。前回のレースでは、このふぎむぎが勝手にエントリーしていたために、あわや酷い目に遭うところだったのだ。
「ふっ、同じ轍は二度と踏まないわよ」
「そうはいきまセーン」
 そこへ、一枚の紙切れを持ったアーサー・レイス(あーさー・れいす)が現れた。
「何よ」
「ここに、むるんのサインがありマース」
 アーサー・レイスが掲げる申込書には、猫の足跡がくっきりと記されていた。
「何よ、それが私の飼い猫だという証拠でもあるの。いつ、どこで、何時何分何……」
「我が輩が承認しました。もはや逃げられまセーン」
 そう言うと、まだわめいている途中の日堂真宵を、アーサー・レイスがあっと言う間に縛りあげた。
「うぐぐぐぐぐぐ……」
「まさに至れり尽くせりデース。さあ、観念してレースに参加しなサーイ」
 勝ち誇りながら、アーサー・レイスは他の参加者を縛りに、嬉々として移動していった。