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超能力体験イベント【でるた2】の波乱

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第2章 設楽カノンのお色気殺人レッスン!!

「さあ、実演編では、勇気ある参加者さんと、私とでバトルをして頂き、私の超能力の素晴らしさを実感してもらおうと思いまーす!!」
 カノンはナタを振りまわしてニコニコ笑いながら、聴衆に呼びかける。
「それでは、生命知らずの方、どうぞステージにお上がり下さいね。いざ天学ー!!」
 ビシッとナタの切っ先を聴衆に向けて突き出しながらポーズを決めるカノン。
「生命知らず、って、バカなこというなよ。本当に殺しちゃったらコリマ校長が黙っていないからな。いや、そうする前に止めて厳重注意か」
 講義をデジタルカメラで中継する佐野誠一(さの・せいいち)は、大きな不安が胸にこみあげるのを噛みつぶそうとしたが、たまらず吐き出してしまった。
「誠一さん、大丈夫です。もしものときは、私のフラワシが、カノンさんの暴走から参加者を守ります。それに、カノンさんのやり過ぎを止めるようコリマ校長から指示を受けている生徒たちも、どこかで警戒を強めていると思いますよ」
 結城真奈美(ゆうき・まなみ)が佐野に言い聞かせるように話す。
「バトルではなく、愛の奉仕をすべきですわ!」
 佐野、結城と同じく撮影班の中に身を置いているカーマ スートラ(かーま・すーとら)は、発言がずれてきている。
 そして。
「いよいよ始まるのね。早くも暴走気配十分で心配だわ。公開殺人なんて、学院の公式イベントではありえませんものね。コリマ校長は何を考えているのかしら? フィス、スタンバイしといてね」
 ステージの傍ら、スタッフたちの控える場所に、カノンの講義のお手伝い役として潜り込んでいたリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)は、自分の本来の目的を果たすべきときが近いと、戦慄を禁じえなかった。
 コリマ校長から指示を受けたわけではなかったが、リカインたちこそ、結城のいう、「カノンのやり過ぎを止めたい生徒たち」なのだ。
「いわれなくても、とっくにスタンバイ中よ。校長は暴走お姫様のガス抜きをしたいんじゃないかしら? まあ、一応お姫様の護衛もやるけど、お姫様より参加者の方が危険そうだし、そっちを護るのが優先よね」
 シルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)は、いつでも突進できる態勢をとりつつ、ロングハンドを愛おしそうに撫であげて、パートナーに応える。
「……」
 リカイン、シルフィスティの背後には、マグ・比良坂(まぐ・ひらさか)が押し黙ったまま、すさまじい殺気を放って控えている。
「マグ、本当にやるつもりなの? 強化人間を全て抹消するだなんて。さっきのコリマの宣言、聞いてたでしょ? あれを聞いてどう思ったの? あのときあなたが校長を襲うんじゃないかと、本気で心配したわ」
 リカインは、誰にも声をかけられないマグを気遣って、話しかけた。
「……」
 だが、マグは、押し黙ったままだ。
 その様子をみて、シルフィスティはため息をつくが、何もいわない。
「校長、本気かどうかは知らないけど、強化人間を保護するのが目的だといっていたわ。学院の理念とは矛盾しないわね。マグ、それでも校長を消すつもりなの? 彼は、強化人間を迫害する者は許さないともいっていたわ。あなたの目的からすれば、全面対決は避けられないけど、それで本当にいいの、マグ?」
 リカインは、どうせマグは答えないだろうと思いながらも、聞くだけ聞いてもらおうと話し続ける。
 すると。
(そうだ。強化人間は全て抹消する。目的は変わらない)
 マグから、精神感応で短い返事が返ってきた。
「校長もやるのね?」
(ああ。奴の意向は気になるが、イベント全体をみればわかることだ)
 それだけいって、マグは再び何も語らなくなる。
 本当をいえば、マグは、開会式のとき、コリマ校長に攻撃を仕掛けたかったのだ。
 だが、校長の警戒はすさまじく、超能力を使える者のみが感じる、校長が放つ強烈なプレッシャーをモロに受けて、マグは身体を動かすことさえできなかった。
 力量の違いは確かに感じたが、決して諦めるつもりはない。
 今後も、マグは、隙をみてコリマを襲うつもりだった。
 設楽カノンにしてもそうだ。
 参加者に危害を及ぼそうとしたそのときに、消えてもらう。
 ある意味、コリマに利用されている犠牲者ともいえるが、罪を犯すなら容赦はしない。
 そのような考えから、マグの放つすさまじい殺気はカノンにも向けられていたが、不思議なことに、カノンは殺気に気づいていながら、全く平気な様子だった。
 むしろ、殺気を浴びることでテンションが上がっているようにも思える。
 やはり普通の人間とは違っていて、危険な存在であることは間違いなかった。
 そして、強化人間を殲滅しようとするマグ自身もまた、強化人間なのだが、むろんマグは、自分自身の存在も否定しているのだ。

「さあさあ、みなさん、どうしたんですか? 決して安全ではありませんが、私と勝負できる機会なんて、なかなかないですよ。アハハハハ!!」
 しーと静まり返ったまま、何の反応もない聴衆に対して、カノンは威圧的な口調で語りかける。
 目の色が変わっていて、恐ろしい形相だった。
「あちゃー。決して安全ではないと聞いて、誰が出てくるっているんだよ、もう」
 全てをビデオカメラで中継する佐野は、またも嘆息した。
 しかし。
 ついに、1人の生徒がステージに上がってきた。
「カノンちゃんの超能力実演、めいが相手になるよ!」
 叫んで現れたのは、バニーガール衣装と、百合園公式水着が合体したデザインのセクシーなパイロットスーツを着込んだ葦原めい(あしわら・めい)だった。
「う、うおお!」
 聴衆からどよめきが上がる。
 みな、葦原のスーツに目がいってしまっている。
「出るのが遅れたのは、度胸がないからじゃないよ! このスーツを着るのに時間がかかったからだからね。このスーツは、ラビット隊のパイロットスーツ!! めいは天下無敵のキラーラビット乗りでシャンバラ初の動物型イコン専門メーカー、蒼空王国機甲の社長なんだよ!!」
 手を腰に当ててポーズをとり、もう片方の手でビシッとカノンを指さして、葦原は堂々と言い放った。
「あのスーツ、天学女子のパイロットスーツに対抗しているのか? カノンに挑戦する気満々だな」
 聴衆の一人、斎藤邦彦(さいとう・くにひこ)は冷静に分析していた。
「そう。そして、私は、めいの秘書! 八薙かりん(やなぎ・かりん)ですよ!!」
 葦原について出てきた、葦原と同じスーツを着た八薙もまた、葦原の隣からカノンを睨みつけていた。
「社長さんですか? ふっふーん、相手に不足はありません! いざ尋常に勝負なり、ですね!!」
 カノンはナタを振り上げると、葦原を睨み返した。
「めいの剣はこれだよ!!」
 葦原は強化光条兵器の日本刀を引き抜くと、上段に構えて、カノンに気迫を押し返す。
 バチバチバチ
 ねめつける2人の視線と視線がぶつかりあい、激しい火花を散らした。
「わー、カノンさん、がんばれ! 負けるなー!」
 聴衆の一人、高島真理(たかしま・まり)は巻き起こる嵐の予感に打ち震えつつ、カノンにエールを送った。
「こ、怖いですー」
 高島の後ろでは、敷島桜(しきしま・さくら)がますます怯えて、ガタガタ震えている。
 そして。
 先に仕掛けたのは、葦原だった。
「とあー!!」
 気合とともに天高く跳躍し、光条兵器の切っ先をカノンに向かって振り下ろす葦原。
「アハハハハハ!!」
 カノンは笑いながらすばしこく動いて攻撃をかわすと、猫のようなしなやかさで葦原の死角にまわり、ナタを振り下ろそうとする。
「危ない!!」
 八薙は悲鳴をあげた。
 だが。
「はあ。まだまだー!!」
 葦原は身体を器用に丸めてナタを避けると、牽制のキックをカノンに放った。
 キックを軽くくらったカノンは、後じさる。
 距離を置いて、再び睨みあう2人。
「大丈夫。めいは負けないよ。かりんちゃんは試合の分析と周囲への警戒をお願いね!!」
 葦原はかりんに声を投げるが、視線はカノンに向けて固定されている。
「なるほど。蒼空王国機甲の社長か。さすがだな。だが、ひとついいたい」
 一連の闘争を見守っていた斎藤邦彦が、重い口を開いた。
「何? そのひとつのことって?」
 斎藤の隣に座るネル・マイヤーズ(ねる・まいやーず)が、思わず尋ねた。
 斎藤は呟く。
「超能力、やろうぜ」
 その言葉に、ネルは息をのんだ。
「ああ、そういえば!!」
 斎藤のいうとおりだった。
 いまの段階で、葦原もカノンも超能力を使っていない。
 超能力講義の実演ではなかったのか?
「うん。めいは超能力を使えないよ。でも、カノンは使っていいから! っていうか、使って!」
 斎藤の言葉が聞こえたのかどうか、あるいは闘いを見守る人々に配慮したのか、葦原はカノンにお願いをした。
「アハハハハ! えっ? そうですか。うーん、超能力。うーん?」
 ナタを構えたまま狂ったように笑っていたカノンは、ふと我に返って頭をひねり始めた。

「いやいや、どうして。超能力講義の講師さんが、超能力を使うのを忘れて肉弾戦に没頭してしまうとは。本末転倒もいいところですね、っていうか、肉弾戦でも強いのがまた魅力ですが。いやはや」
 葦原とカノンがそれぞれの武器を構えてにらみ合う激戦のステージに、また一人の生徒が上がりこんできた。
 二丁拳銃を構えるその男は、月谷要(つきたに・かなめ)である。
「ふふふ。遠慮なくということなら、死んでもらいますよ」
 拳銃をカノンに向かって突きつけて、月谷は言い放った。
「要。くれぐれも気をつけるのだ。あくまでも体験としてやることであるからな。本気になってカノンを殺そうとすれば、返り討ちにあう可能性があるぞ」
 月谷が装着している魔鎧、機式魔装雪月花(きしきまそう・せつげっか)が囁き声の忠告を送る。
「ああ。心配は要りません。ただ、ある程度過激にやらなきゃ、俺の求める刺激が来ないものですからねぇ」
 月谷は飄々とした口調で魔鎧に答えて、軽く笑った。
「要、その言葉を聞いていると、あなたがまるで血に飢えた獣のようだわ」
 月谷に続いてステージに上がりながら、霧島悠美香(きりしま・ゆみか)がいった。
「いやいや、誤解しないで下さいねぇ。俺はただ、海人によって深められたこの知覚があれば、カノンさんとの闘いの中で何かを知ることができるのではないかと、ですねぇ」
 月谷がやや饒舌に語ろうとしたとき。
「なに、小難しいこといってんだよ。似合わねえなあ。実体のないものを追い駆けてるようで、抽象的ってことさ。しっかり前をみなよ」
 霧島に続いてステージを上がる、ルーフェリア・ティンダロス(るーふぇりあ・てぃんだろす)がいった。
 ステージの上は、いっきに人数が増えたかたちになった。
「ああ、こらこら。あまり、入ってこないでよ。せめて、めいとカノンの勝負が済んでから!」
 光条兵器をカノンに向けながら、葦原はステージ上の新顔達に対して、機嫌悪そうに膨れ面になった。
「アハハハハハ! 私は構いませんよ。何も一対一でなければいけないといった覚えはないですからね。それに、こういう状況の方が超能力を使う意味があるというものです」
 カノンは笑って、現状を肯定する。
 聴衆はどよめいた。
 カノンは本当に、一人で多数を相手するつもりなのか?
 そして。
「それじゃ、ま、一発、いや二発」
 唐突に、月谷は二丁拳銃をぶっ放した。
 交互に。
 ズキューン、ズガーン
 だが、それは、牽制だった。
 2発の弾丸はカノンの足元に撃ち込まれて火花を散らすのみだった。
 頭がキンキンするようなすさまじい轟音の中で、月谷は足を小刻みに動かして、カノンの懐に潜り込んだ。
「銃撃ばっかりだと思ったら大違いだぁね」
 月谷の抜いた剣が、カノンの脇腹に食い込むかに思えた。
 だが。
 突如、カノンの手元から宙に飛び出たナタが、意志あるものであるかのように、月谷に向かって襲いかかってきた。
「う、うわ!」
 驚いた月谷は、剣でナタの攻撃を打ち払うのが精一杯だった。
 背筋が、ゾッとするような感触を覚えた。
 ここで隙が生じたら、カノンがさらなる反撃を仕掛けてくる!
 軽い恐怖に、月谷は歯ぎしりした。
 脳裏に、チカチカという光が舞って、何かを知覚したような感に襲われた。
「く、くるか!? 後ろから!!」
 月谷は身を翻して、再び牽制の銃を撃ち放つ。
 宙を走るナタと別行動になっていたカノンは、ものすごいスピードで月谷の背後にまわり、その首筋に手刀を叩きこもうとしていたのだが、失敗に終わったことにやや驚いた様子だった。
「あなた、攻撃を読んだんですか? でも、それって、実戦の経験からくる勘のよさばかりではないようですね」
「ああ。海人に精神感応で呼びかけられたとき、俺の中で何かが変わったんだ。ほんの小さな変化だったが、その影響がときどき顔を出すんでね」
 カノンの問いに答えて、月谷は笑った。
 笑ってはいるが、カノンとの間にかなりの距離を置いている。
「要、怖くなったの? いま、結構いい攻撃してたと思うわ」
 霧島がパートナーを気遣った。
「海人、ですか? ああ、あのお節介な人ですね。私はあの人からの精神感応はいっさいシャットアウトさせて頂いてます。何だか、説教されてるみたいで、ムカつくと感じましたから!」
 カノンは残忍な笑みを浮かべながら、宙をさまようナタを再びガシッとつかむと、月谷に向かって突進した。
「ぐっ、死ぬのか?」
 月谷は戦慄した。
 脳裏に、再びチカチカという光が浮かぶ。
(ああ、この感覚だ。死と隣り合わせにあったとき、俺の中で)
「やらせないわ!」
 霧島は、カノンと月谷の間に割り込むと、流れるような剣の一撃をカノンに叩きこんだ。
 ふわり
 攻撃を避けたカノンの身体が、宙に浮き上がった。
 観衆から、簡単の叫びがわき起こる。
 サイコキネシスの力で、空中を飛行しているのだ。
「いっとくけど、要には傷ひとつつけさせないんだから!」
 霧島もまたサイコキネシスで宙に浮き上がり、空中のカノンに斬りかかっていく。
「悠美香、あまり高く飛ぶな。地上スレスレにひきつけるんだ。そうすればオレも援護できる」
 ルーフェリアの忠告が、霧島の耳に飛ぶ。
「アハハハハハハ! 愉快ですね。でも、月谷さん、ですか? あなたは、私が嫌いなあのお節介さんのことを想い出させてくれました。御礼に、あなたを殺してあげようと思います! これも実演ですよー」
 カノンは空中戦で霧島を圧倒しながら、ステージ上にうずくまっている月谷に呼びかける。
「あちゃー。やばいこというなよ。いまのセリフ、カットできないかな。でもこれ、生中継だからな。何で生中継なんてやってんだろ、俺」
 闘いの様子をずっとビデオカメラで撮影していた佐野誠一は、このときばかりは心底頭をかきむしりたくなった。
(だから、コリマ校長がキレるって)
 本当に怖いのは、カノンでさえなかった。

「役者が増えてきたか。それじゃ、そろそろ僕の出番だね!」
 一対多のバトルが始まりつつあるステージに、さらに参加者が割り込んでくる。
 だが、今度の参加者は、カノンと闘うつもりはないようだ。
 その逆である。
「カノン! 今日は僕と! 殺戮デートしようよ!!」
 平等院鳳凰堂レオ(びょうどういんほうおうどう・れお)が、カノンが浮かべているのと似たような笑いを浮かべながら、サイコキネシスで宙を舞うカノンに向かって手を振る。
「あっ、レオ!」
 レオの姿をみかけたカノンは、なぜだか嬉しい気持ちになって、空中での激戦を中断してレオの付近に舞い降りてきた。
「レオも、私と闘いにきたんですか?」
 ニコニコ笑いながら、レオの頭頂に向かってナタを振り下ろそうとするカノン。
「わー、ちょっと! ストップ、ストップ!!」
 久遠乃リーナ(くおんの・りーな)が慌ててカノンを制止する。
「えっ? 闘うんじゃないんですか?」
 ナタを持つ手を止めて、きょとんとした顔で久遠乃をみるカノン。
「違います、違います。よーし、ここで! 説明するよ!!」
 久遠乃は急におおげさな口調になると、観衆の方を振り向いていった。
「殺戮デートとは! お互いが雑兵を蹴散らしながら、相手の殺戮技法を楽しみつつ讃え合う、血飛沫と絶叫に満ちたデート! これは古の一騎当千の力を持つ武将同士が逢瀬を重ねるときに行った由緒正しいものなの!」
 久遠乃は、いっきにまくしたてた。
「そういうことだよ。僕とカノンが、一緒に闘うってことさ!」
 レオは笑って、カノンの肩をポンッと叩いた。
 いきなりそんなことして、斬り殺されそうな不安はあったが、どさくさに紛れてカノンに触れてみたかったレオである。
 幸い、テンションが上がっていたカノンは激昂することなく、爽やかな笑顔をレオに向けて、はしゃぎ始めた。
「あっ、そうなんですか! 面白そうですね。レオ、あなたは……ええと、あれ? 何をいいたいんだろ、私。とにかく、一緒に実演しましょう!」
「うん。一緒にがんばろう! アハハハハハハ!」
 レオは、またしても、カノンがよく浮かべる邪悪な笑みと同じ笑みを浮かべた。
「レオ。おまえ、カノンの影響でイカれてきたんじゃないか? まあ、イカれた奴の方が私は好きだがな」
 レオに装着されている魔鎧、告死幻装ヴィクウェキオール(こくしげんそう・う゛ぃくうぇきおーる)が囁くが、レオに聞こえているかどうかは不明だ。
「ちょっと! 失礼じゃない。めい達を雑兵扱いするの?」
 カノンとの闘いに決着がついていない葦原めいは、邪魔するように現れたレオが気にくわなかった。
「葦原さん、大丈夫ですよ。私に勝てれば、雑兵じゃないってことですから。アハハハハハ!」
 カノンは笑いながら、葦原にナタを振り下ろした。
「うん? 油断はしてないよ。とあー!!」
 突然の攻撃にも怯まず、光条兵器の日本刀でナタの攻撃を受け止める葦原。
 がきっ
 刃と刃が噛み合い、鍔迫り合いの状態となった。
「アハハハハハハ! 葦原さんとは、超能力使わなくても緊迫感出ますよね!」
「いつまで笑っていられるかな? 気をつけないとそっちの首が飛ぶよ!」
 カノンと葦原。
 2人は、刃越しに互いを睨みあいながら、柄を持つ手に力を込める。
 そして。
「はあああ、チェーンソー!!」
 ういーん
 葦原のかけ声とともに、光条兵器の刃が電動ノコギリのように自ら振動して波打ち、噛み合ってるナタの刃を切断しようという勢いで動き始めた。
「へえ、そういうこと思いつけるのって、素晴らしいですね!」
 カノンはナタを放り出すと、光条兵器を構えている葦原の肩にタックルを決めた。
「あ、あらら」
 すってーんと転倒する葦原。
「さあ、ほかの奴らもかかってこい! 僕たちが相手になるぞ!」
 レオは、月谷たちの方に向き直ってきた。
「あなたに用はないですよ。どいてもらえませんかねぇ」
 月谷はいった。
「要に近寄らないで!」
 カノンとの空中戦から解放され、ステージ上に舞い降りていた霧島が、今度はレオに襲いかかる。
「きたな。う、うわわ!」
 霧島の本気の攻撃を慌てて避けるレオ。
 だが、すぐにその顔に笑みが戻る。
「カノンのことが! 好きだから! 一緒にいっぱい楽しいことがしたい! 邪魔する人はぶっ飛ばすよー!」
 笑いながら叫ぶレオ。
「カノンが好きなのか。それはいいが、あの男はどのくらい強いんだ? 本当に、カノンと肩を並べられるほどの実力者なのか? 笑っているけど、みんなに本気で攻撃されたら戸惑いそうだな」
 観衆の一人、斎藤邦彦が冷静なコメントを述べる。
「うん? 聞こえたよ。僕にはとっておきの技があるんだから、いまにみてなよ!」
 レオは、斎藤の方を向いていった。
「とっておきの技? それは何だ?」
 斎藤は尋ねた。
「それは、後でのお楽しみ! あっ、うわー!」
 答えながら、レオは再び突進してきた霧島の攻撃を焦ってかわした。
「よし、悠美香。2人でこいつをとっちめようぜ。少々鼻息が荒くなっているからな」
 ルーフェリアが、逃げるレオの前に立ちふさがって、いった。
「ふ、二人でくるか! 負けないぞ!」
 レオは、血走った目で叫んだ。
「本当に大丈夫なのか? 『後でのお楽しみ』って、テレビアニメみたいなことやってたら、そのお楽しみをみせる前にやられてしまうと思うがな」
 斎藤は、レオに対して何だか冷淡な目を向けてしまう自分を感じていた。