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あなたと私で天の河

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あなたと私で天の河
あなたと私で天の河 あなたと私で天の河 あなたと私で天の河 あなたと私で天の河 あなたと私で天の河 あなたと私で天の河 あなたと私で天の河

リアクション


●間奏曲・2

 カースケなんて存在しない……!

 夢を見た。
 短く、暗く、異様なまでのリアリティを持つ夢を。
 カースケなんて存在しない。
 カースケなんて存在しない。
 彼女が手にした人形は人形でしかなく、断じて、ゆる族や精霊やましてや地祇ではないのだった。
 左右の目が非対称に、べろりと不統一の方向を見ていた。だらしなく開いた口から、桃色の舌がのぞいていた。
 この、ただの人形が、話し、はしゃぎ、笑い怒る『パートナー』だなんて、どうして思いこんでいたのだろう。
 気味の悪い人形にすぎないのに。
 いや、本当は彼女は、心の奥底では判っていたはずなのだ。判っていて無理矢理信じていたのだ。
 そう信じなければ、自分が自分でなくなるような気がしていたからだ。
 カースケなんて存在しない。
 カースケなんて存在しない。
 ただの人形を、パートナーだと思い込んでいただけなのだ。
 カースケなんて存在しない。
 カースケなんて存在しない……!

 膝を組んでうたた寝していた彼女は、はっと目が覚めて部屋が真っ暗なのに気づいた。サイドテーブルのライトを灯す。
「もうこんな時間……」
 アラーム時計が、現在の時刻を表示していた。急がなければ、七夕の祭に間に合わないだろう。
 大急ぎで彼女は服を着替えようとした。クローゼットを開けて服を……。
 そのとき、クローゼット中棚の上から何かが、ぱさりと彼女の足元に滑り落ちてきた。
 『カースケ』だった。
 その姿は、愛嬌がある、と言えないこともない。しかし薄暗い部屋で対面するにはあまりに不気味だった。非対称に斜め上と斜め下を見る右目と左目、ありえない角度に開いた口、死んだ蚯蚓(ミミズ)のような舌……。
 彼女は悲鳴を上げた。そいつをつかんで壁に投げつけた。
 カースケなんて存在しない。
 カースケなんて存在しない。
 彼女は目眩を感じた。ベッドに両手をついてわなわなと震えた。
 夢じゃなかった。
 自分には、パートナーなんていなかったのだ。