リアクション
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「まぁそんなに怖い顔すんなよ」
その男は、なんともその場、その雰囲気にそぐわない発言をしていた。
アジトへと入った雅羅たちは、すぐさま彼に遭遇する。両脇には更に三人の黒ずくめたちがいるが、どうやらもうこれ以上の戦闘は望んでいないらしく、手に武器は握られていない。
「ウォウルさんを何処へやった!」
「それは――だな」
言いかけたとき、更にその部屋に新たな客がやってきた。
「お前ぇっ!!!! ドゥングぅ!」
部屋に入ってくるなり、突然男の下へと走りこんでくるラナロックの姿。咄嗟に孝高と大助が彼女を止めた。
「あれっ!? 貴方、さっきの……!」
そこで衿栖たちが声を上げた。当然彼女と共にやってきた美羽、ベアトリーチェも驚きの表情を浮かべていた。
「知り合いなの?」
近衛が尋ねると、三人が説明しはじめるのだ。
「最初、私たちはラナロックさんのお宅にお邪魔しようと思ったんです。プレゼントを渡しに。そこであの方に出会って、『ラナロックさんはウォウルさんの部屋に行ったぞー』って、教えてくれたんです」
「だから私たちはウォウルさんのお部屋まで行ったんだよ。そしたらみんなと会って、それで……」
「と、言うことは…貴方、最初からこれを狙ってっ!?」
思わず、ベアトリーチェが剣を握った。力強く剣を握り、叫ぶ。
「一体何人の人たちに迷惑をかければ気が済むのですかっ! 貴方たちの所為で……貴方たちの所為で――」
男は苦笑しながら呟くのだ。それこそ、全員に謝罪するかの様に。
「すまなかったな。まさかラナや、ウォウルの為に此処までの人が集まるとは、正直思っていなかった。だからほんのちょっとした、お遊びだったんだよ。すまない」
頭を下げた男を、何処かやるせない気持ちで見つめる面々。が、ラナロックはそれでは済まないらしい。怒りに打ち震えながら、故に初めて孝高の手を振り払い、銃を抜く。
「いい加減、お前のその面を見るのは飽きたんだよぉ、ドゥング。もう此処で――永遠にお別れだ」
「まぁ待てよ。事情が事情だ。遊び、とまでは言わないが、それなりの茶目っ気だったて事で、許してやろうぜ」
カイがラナロックの肩に手を置いた。
「私が……私がどれだけ心配したと……」
「…………」
一同は、何も言えずにただただラナロックを見つめるだけだった。