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少年探偵 CASE OF ISHIN KAWAI 1/3

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少年探偵 CASE OF ISHIN KAWAI 1/3
少年探偵 CASE OF ISHIN KAWAI 1/3 少年探偵 CASE OF ISHIN KAWAI 1/3

リアクション


OVERTURE 収監 2
   

 ぼくはみたんだ。
 コリィベルが、崩壊しそうになるのを。
 ぼくの目の前、ほんの数メートル先のところで、歩く監獄コリィベルはバランスを大きく崩し、危うく転倒するところだった。伝説の特別移動刑務所がコケて中の囚人もスタッフも全員死亡なんて、悪夢じみた、でもマヌケな事件だよね。
 Z級映画のオチみたいだ。



ここはシャンバラ大荒野。
ぼく、かわい維新は八歳にして、人類の未来をフロンティアするために、契約者として、このパラミタ大陸へやってきました。
 と、いうわけではなくて、ちょっとした用事があって、特別移動刑務所(兼少年院)コリィベルに乗り込まないといけなくなったんだけど、その方法をステディの暴君ファタ・オルガナちゃんに相談したら、さすがファタちゃん、二つ返事で、

「わかった。なにも心配するな」

 あげくパートナーの凶暴が服着てるヒルデガルド・ゲメツェルちゃんと、凶悪が人の皮をかぶってるローザ・オ・ンブラちゃんを連れてぼくのところにやってきて、ついでにファタちゃんの生まれながらの共犯者のヴェッセル・ハーミットフィールドくん(通称ベスくん)まで呼びだして、ろくに準備もせずにみんなでシャンバラ大荒野へむかったんだ。
 ファタちゃんが入手した情報によると、コリィベルが間もなくここを通るとかでさ。
 ぼくらはコリィベルの足をとめるために罠を仕掛けた。
ベスくんを簀巻きにして、荒野に転がしたんだ。

「おまえら、落ち着け。俺をどうするつもりだ。っうか、俺はもうどうにかされてるじゃんか。
これから、どうなるんだ。俺。
ファタ。こたえろ。どういうつもりだ」

芋虫状態のベスくんが騒ぎまくるのを、ぼくらは岩陰に隠れて眺めてた。
ベスくんがいつまで経っても黙らないから、そのうちファタちゃんが、こたえてあげたんだ。

「罠じゃ。
おぬしには、コリィベルを停止させる任務を遂行してもらう」

「ふざけるな。こんなの踏まれるにきまってるだろー。
いくら俺でもそれはヤバイ。
相手は○○○の動く城だぞ。圧死するじゃんか。常考」

「それでも、足をとめれば、おぬしの勝ちじゃ。んふ。んふ。んふ。
ベス。おぬしの行為でわしがこれほど興奮するのは、いつ以来かのう。
コリィベルをとめた後、おぬしがどうなっているか想像するとゾクゾクするわ」

「バカ。冗談じゃねぇーぞ。
行為もなにも、踏みつぶされるだけだ。
維新。ヒルダ。ローザ。
おまえら、なんとかしろ。
これは、あきらかに、いじめ、カッコ悪い、だぞ。
おまえら、良心がいたまねーのかよ」

ぼくは子供だし、ファタちゃんと知り合ってまだ短いし、長年はぐくんできたファタちゃんとベスくんの特殊な友情関係に、ぼくみたいな新参者が口をはさんじゃいけないと思ったから、なにも言わなかった。
ヒルダちゃんとローザちゃんも、ファタちゃんとベスくんの間に入る気はなかったみたい。

「良心いたまないッス。
ベスの大将。ハデにイッちゃってください。ヒャッハァ〜! の精神で頼んますヨ」

「ベス様。
さしでがましいようですが、お口にダイナマイトでもくわえて転がっておられた方が、相手にプレッシャーを与えるかと思います。
いかがでしょう。
いまからでも、私が用意してさしあげましょうか。
もちろん、コリィベルの姿がみえたら、すぐに点火してあげますわ」

 ぼくもだんだんわくわくしてきた。
 早くコリィベルこないかな、みたいな。
 そしたら、本当にきたんだよね。コリィベル。

「ファタちゃん。
もういいよ。ベスくんを開放してあげて。
コリィベルさえくれば、ぼくの知り合いのスタッフも中にいるから、なんとかとめられると思う。
このままだと、ベスくん。踏まれちゃうよ」

「維新は優しいのう。
心配するな。
ベスは大丈夫じゃ。
戦火の中も、トラップだらけの迷宮も、すべての罠、仕掛けに引っかかりながら、毎回、なぜだか五体満足で生還してきた。
しかし、それらの実績イコール今度も無事ですむという根拠にはならんがな」

「ダメじゃん。
わ。ちょっと、急がないとまずいよ」

接近してくるコリィベル。地面でもそもそしてるベスくん。
ぼくはベスくんを助けに行こうとしたんだけど、ファタちゃんとヒルダちゃんとローザちゃんに力づくでとめられて、動けなかった。
結局、コリィベルの足が、ベスのくんの上におりてきて、完全に踏んづけて(TALLYHOOO!! とかヘンな悲鳴がした気がする)、で、そこから急にバランスを崩して前に倒れそうになったんだ。



「俺が寝てたとこの地盤が緩くて、踏んだ瞬間に地面にコリィベルの足が沈み込んだんだ。
そんなわけで地面がクッションになってくれたおかげで俺は無事だったんだよ」

土に足をとられて歩みをとめたコリィベルの下から這いでてきたベスくんは、ごろごろと転がって、ぼくらのところへ戻ってきた。

「よ、よかったね。ベスくん。まったくの無傷なんだね。奇蹟だよ」

驚いているのはぼくだけで、ファタちゃんたちは不満そうに黙っている。
この人たちは、本気で圧死を期待してたのか。
それは、いじめどころじゃないよ。

「まあな、これくらいは慣れてるけどな」

ベスくんの反応もかなり間違ってる。

「わしとしては、ベスの手足の一本くらいはくれてやるつもりじゃったのじゃがな」

ファタちゃんのをあげるわけじゃないんだから、その言い草はなしだと思う。
ともかく、ぼくらはベスくんのおかげ? でコリィベルに乗り込めるわけです。
ぼくらがいざ中へ入ろうとしていたら、タイミングよく助っ人たちがやってきた。
最初にきたのは、緑の髪の小さな女の子。

「こんにちは。
かわい維新ちゃんですね。ボクはヴァーナー・ヴォネガットです。
まえにもなんどかあってますけど、おぼえてくれてるですか?
あまねおねぇちゃんからメールで事情をおしえてもらって、ボクは維新ちゃんのおうえんにきたですよ。
ところで、あまねおねぇちゃんとくるとくんにあわなかったですか?
ボクはここで二人とまちあわせをしていたですけど、二人ともぜんぜんこないし、けーたいもつながらないです」

「くるとならかき氷の食べすぎでひどい下痢になって地球で入院したらしいよ。
あまねちゃんは、そんなくるとを見捨てて彼氏と旅行にでかけたってさ。あの子も子守りから開放されて、やっと青春のはじまりだね」

「そうだったんですか。
知らなかったです。むむむむむ。いがいなてんかんかいですね」

ぼくの話を素直に信じてくれるヴァーナーちゃんは、かわいいなぁ。
同じ子供でも、くるとのバカとは大違いだ。
ヴァーナーちゃんは、いきなりぼくに抱きつくと、ぼくの頬にキスをした。

「はぐとちゅーです。
くるとくんがいなくても、ボクが歩不おにいちゃんをみつけてあげるですよ。
維新ちゃんは、ボクのことを歩不おにいちゃんとおんなじこいびとだとおもって、あんしんして欲しいです」

「ヴァーナーちゃんをぼくの彼女だと思えってこと」

「そうです。なかよくするですよ」

「なにを不穏なことを言っておる」

ファタちゃんがヴァーナーちゃんの髪をつかんで、ぼくから引き離した。

「いたいですよ。なんでぼうりょくをふるうですか」

ファタちゃんは、普段は十五歳以下の女の子には、世界の誰よりも寛大なんだけど。

「ヴァーナーよ。おぬしはわしの大事な天使の一人じゃが、維新に手をだすことだけは許さん。
維新はわしのものじゃ。
そこのところをよくわきまえておいてくれ」

「だめです。
ボクも維新ちゃんとこいびとするです。維新ちゃんのためにも、こころのささえになる人はたくさんいたほうがいいですよ。ファタちゃんも、ボクもどちらも維新ちゃんのこいびとになればいいです」

たしかにファタちゃんは一緒にいて楽しいし、ヴァーナーちゃんも元気でかわいい。
二人の好意はうれしいんだけどね、まず、ぼくが女の子だってことを最近、ぼくの周囲にいる人たちは忘れてる気がする。恋愛に性別は関係ないのかもしれないけど、八歳から同性ばっかりじゃ、ぼくの人生は百合色のかわいそうなものになるじゃないだろうか。

「維新様。大人気ですわね。私も維新様を囲む花の仲間に加わろうかしら」

「ローザちゃんまでやめてください。
ファタちゃんとは仲良しだけど、ぼくは、間違ったモテ期に到来してもらいたくないです」

「不幸の蜜の味を私が教えてさしあげますわ。フフフフフ」

意味深に笑いながら、ボディタッチしないでください。
ぼくは十歳以下の幼女なんですよ。
みなさん、そんなに児童ポルノが好きなんですか。ファタちゃんには、聞くまでもないけど。
ぼく、いま、ローザちゃんに、リアルタイムで、ねちっこく太ももやおしりをさわられてます。

「お姉さんがいたわってあげますから、力を抜いて楽にしていてくださいな」

「ローザちゃん。痛いよ」

「すぐに慣れます。おしゃべりはやめて、感覚に身を任せてくださいませ」

なんか、つねったり、叩かれたりもされてるんですが。
ローザちゃんはサディストで、人の不幸が大好きな悪魔さんだから、弱味をみせると徹底的につけこんできて、タチが悪いんだよなぁ。

「遅くなってすまなかったな。維新。
俺のことは兄貴だと思って頼ってくれていいんだぜ」

恋人の次にきたのは兄貴だった。
ローザちゃんとぼくの間に強引に割り込んできたんだ。
白髪のこいつは、春夏秋冬真都里だよね。
なぜ、兄貴なのか聞く気にもならない。
いつの間にモヒカンにしたんだろう。
この人、なにしにきたんだ。

「俺は、映画監督のかわい次郎兄貴の弟分だぜ。
俺は血のつながった姉さんよりも、次郎兄貴を尊敬してるんだぜ。
だから、次郎兄貴の実の妹のおまえは、俺の妹も同様なんだぜ。
そうなると、おまえの兄のかわい歩不は、俺の弟なんだぜ。
俺たち兄妹の力を合わせて歩不をピンチから救いだすんだぜ」

これはつまり、あまりにあまりすぎて、どこからツッこめばいいのかわからない、ってやつだよね。
えーと、真都里くんは、前に事件の調査でぼくの家にきた時に、勝手に次郎兄に心酔して、そのうえ、次郎兄を殺害しようとして、その後、空京のテーマパークで、ストーリーキングをやって逮捕されて、ゲイの神父の養子になって、あっちの修行を積んだあげく、フィアンセの幼女にイルミンに連れ戻されたんだっけか。
まぁ、気持ちだけはありがたくもらっておくんで、その、兄とか妹とかやめにしませんかね。
ぼくとしては、そこらへんからお話をしたいんですが。真都里兄さん。
兄弟仁義とか許してくださいよ。
ちなみに歩不くんは、真都里兄さんよりも年上の気がするんだけど、それでも、弟でいいんでしょうか?

「いーちゃん。
もなちゃんは、まつりんのパートナーだけどいーちゃんの味方だよ。
まつりんがうるさかったら、もなちゃんに教えてくれれば、いつでも罪をデッチあげて、まつりんを牢屋に放りこんであげるから。
遠慮せずに言ってね。イヒヒヒヒ」

誰かがぼくの耳元でささやいた。
横をむくと、ポニーテールのアイドルチックな少女の姿をした悪魔が。
うわー。麦わら帽子とワンピースがすごく似合いそう。
握手券や生写真で確実に商売できる、さわやかルックスの子なんですが、発言とルックスの落差がありすぎ。

「維新。そいつは、俺のパートナーの小豆沢 もなかなんだぜ。
姉さんだと思って甘えていいんだぜ。」

ウチはただでさえ兄妹が八人もいて日夜、骨肉の争いをしてるのに、ここで二人も増えたら、ついに二ケタに突入だよ。
血縁も入り乱れて、まるで、未開地の部族か、昭和初期の大家族だ。

とにもかくにも考えるのもメンドくさい状況になってきたんで、ぼくらはみんなでコリィベルに入ったんだ。

◇◇◇◇◇

歩不くんとの面会の入所手続きで一人だけ引っかかったのは、やっぱり真都里くんだった。
刑務所に入るのだから当然ですけど、武器や防具、その他、危険そうなものは持ち込めない。
貴金属のアクセサリーもダメだったりするんだ。
真都里くんを除いたぼくらはみんな、着衣のままの金属探知機での検査にパスした。
何度探知ゲートをくぐっても真都里くんだけは、ブザーが鳴るので、上着と靴を脱ぎ、シャツもズボンも、ついにはパンツ一丁になっても、それでもダメだったんだ。

「真都里おにいちゃん。なにかきんぞくをみにつけてるですね。はやくはずしてけんさにパスするです」

「俺は、別になんにも持ってないんだぜ。パンツも脱げって言うのか。
わかったぜ。
俺は裸で勝負するんだぜ」

ヴァーナーちゃんが応援してあげても、真都里くん自身が、どうしてブザーが鳴るのかわかんないみたい。
全裸でもブーだったし。

「くししししっし。きっと、まつりんの不憫属性に探知機が反応してるんだよ。
もなちゃんが認めるから、まつりんをここに残してみんなでレッツゴー! しようよ」

パートナーのもなかちゃんは、思いっきり笑ってる。
困ったな。

「ファタちゃん。どういうことかな」

「ふん。男の裸などどうでもよいわ」

ファタちゃんはあさっての方角をむいて、あくびをしてる。

「じゃなくてさ。真都里くん、ひょっとして体内に武器でも隠し持ってるわけ」

「さあな。解剖でも検体でもされればよいわ」

うーん。
プロローグで意味もなく惨殺か。
真都里くんのキャラとしては正解かもしれないけど、ここで犠牲者になられてもなぁ。

「俺は無実なんだぜ!
離せ!
俺は、弟の歩不を探しにきたんだぜ!
うおおおおおお!」

ボカ。ドス。ドカ。ドカ。

やめておけばいいのに、キレて暴れようとした真都里くんは、武装したスタッフたちから、パンチ、電磁警棒、ブーツのカカトで制裁を受けたんだ。
床に倒れた真都里くんの口から、歯のかぶせものらしき金色の金属がこぼれ落ちた。

「坊主。
これは、なんだ」

「は、は、歯医者で治療してもらった18金のかぶせものなんだぜ。」

「これが金だと?」

おじさんスタッフはいやそうな顔で金属を指先でつまむと、それを探知ゲートに放りこんだ。

ブー。

ブザーが鳴る。真都里くんがパスできなかったのは、これが原因だったらしい。

「磁石と同じで、この探知機に金は反応しない。
おまえは歯医者にだまされたようだ。
探知機によると、こいつは、メッキをした鉄だ。
ハハハハハ。アッハハハハハ。グワッハハハハハ」

はいはい。わかりました。
ってわけで、ぼくらはようやく全員でコリィベル内に入れたんだ。

◇◇◇◇◇

部外者がコリィベルに入るには、簡単な入所審査にパスしてビデオカメラを装着すれば、来所理由はそれほど重視されないんだね。
ぼくはここの卒業生だけど、知らなかったよ。
みんなが大食堂で休んでる間に、ぼくは一人でトイレに行ったんだ。
今日は慰問タレントと囚人有志による大演芸会があるんだって。
どんなタレントがいるのか、興味がわくよね。
来客用のきれいなトイレで用を足したぼくは、廊下にでてきて、また知った顔に出会った。

「レン・オズワルドさん」

「かわい維新か」

赤のロングコートに黒い革手袋、銀髪のジャギー、大きめのサングラスをしたレンさんは、前にマジェで会った時と同じで、一匹狼っぽい近寄りがたい雰囲気を漂わせていた。
長身でワケありっぽくて、映画やマンガにでてくるエージェントとか、殺し屋とか、そんな感じ。

「どうしてここにいるの」

「依頼を受けているわけではないが、コリィベルは、俺が主宰する冒険屋ギルドの監視対象のひとつだ。
いまはまだ事件は起こってはいない。だが、ここにはその芽がいくつもある。
俺たち冒険屋は定期的にその動静を観察している」

「歩不くんが、ぼくのお兄ちゃんが行方不明らしいんです。
コリィベルでは、囚人が消息不明になるのは、めずらしくはないのは、ぼくも知ってる。
でも、ぼくは歩不くんを探しにここへきたんです。
絶対、みつけだします」

「かわい歩不。
やつは危険な人物だ。
治療の対象にも削除の対象にもなりうるな。
わかった。俺も彼についての情報には注意を払うとしよう」

目の表情はみえないけど、唇がかすかに歪んだので、レンさんがほほ笑んだのがわかった。

「レンさ

ぐ。

ぼくがもう一度声をかけようとした時、レンさんはすでに斬られて、床に膝をついていた。
相手は二人だ。
清掃スタッフのユニフォーム姿の二人が前後から、レンさんに襲いかかったんだ。
一人は男。長い刀をみえないくらいの速さで振り、何度もレンさんにダメージを与える。
もう一人は女の子だ。こっちは、ナイフでレンさんの背中や脇腹を突き刺す。
いつの間にか廊下には大きな血だまりができていた。
レンさんが血の海に倒れこむ。

「               」 こわくて、舌が震えて、声がでない。

男はこっちへきて、ヘビを思わせる冷たい目でぼくを眺めた。
ぼくの顔の前を光の線が走った気がする。



真っ二つに斬られた超小型ビデオカメラがぼくの足元に落ちていた。
彼は、いま、これをぼくの額から斬りおとしたんだ。
まばたきするぐらいの間に。

「他言無用だ。
てめぇの命が欲しけりゃな。
あいつは死んじゃいねぇ。
動けなくなればそれでいいんだとさ」

なにがそんなにおかしいのか場違いな笑いをふくんだ声だった。
よくみるとレンさんのつけていたカメラも斬られて、床に落ちている。

「行くぞ」

男は刀を掃除用の長柄モップにしまった。仕込みモップだ。
女の子はぼくをみてニタニタしていたけど、男に手を引かれ、去っていった。
彼らがあらわれて消えるまで、十秒もなかった。
死んではいないにしても、レンさんはぴくりとも動かない。

吸ってー吐いて。

深呼吸をして肺の空気を入れ替えてから、ぼくは全力で悲鳴をあげた。