校長室
【空京万博】海の家ライフ
リアクション公開中!
「おおっと!? 小夜子さんと葵さんの点数が並んでいますねー。この拮抗した状況を打破するのははたして誰なのか? それでは、エントリーナンバー3、セシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)さん! どうぞ!!」 ジークフリートの紹介に合わせて、大きな胸をビキニ水着で包んだセシルが登場する。 「はい、ようこそー! ニューヨーク出身のアメリカ人ということだけど……てか、デカッ!? 何食べたらそんなに大きくなるの?」 未散がすかさずセシルに突っ込む。 「未散さん。それは私にもよくわからないんです。今回、何故かエントリーされていた事も……」 「というと、誰かの推薦で?」 「どうやらグラハムさんの仕業のようですが……どうやら強くなるためにはミスコンに参加する事が必要みたいですし、仕方ありませんね。もう深くは考えず、折角ですので楽しみますわ」 「俺達はそのグラハムさんに感謝しつつ、さぁ、セシルさん。何か特技はありますか?」 ジークフリートにマイクを向けられたセシルがウーンと困惑の顔を見せる。 「特技と言われても……料理と武術くらいしか思いつきませんね」 「料理は……ちょっと難しいと思うわよ?」 幽那がそう言い、セシルも頷く。 「はい。料理は食材も道具も無いですし不可能として、やるとしたら武術でしょうか?」 審査員席でクドが立ち上がる。 「どうやら、お兄さんの出番らしいね」 「貴公、何をする気だ?」 クドがフッと笑い、 「武術とは相手が居なければ存在出来ないよねぇ……だけど、皆痛いのは嫌だろう? だが、このドMのお兄さんならそれを快楽に変えてみせ……」 「そこの変態、シャラップ!!」 未散の突っ込みがクドを制する。 「フ……お兄さん、モテモテだねぇ」 そう言いつつ、クドが着席する。 「……で、どうします? セシルさん?」 衿栖が中断した間を上手く取り繕う。 「まあ、身体能力や運動には自信がありますし、高く跳躍してひねりを加えながらバック宙とか、アクロバティックな動きでもしてみましょうか……」 その時、観客席に居たアロハシャツにジーンズ姿のグラハム・エイブラムス(ぐらはむ・えいぶらむす)が声をあげる。 「待て!! おまえ、そんなんじゃ、負けちまうぜ!!」 「グラハムさん?」 「俺がアシストしてやるぜ! セシル!! 上手く使えよ!!」 と、グラハムが飲んでたジュースの空きペットボトルをセシルに向かって投げる。 「(グラハムさんが何か投げてくれた様子……ハッ! これはいつもの修行と同じように、手刀で迎撃しろって意味ですね!!)」 すかさず、セシルのシナプスに記憶されたいつもの動きが再生される。 宙返りした空中で体勢を整えつつ、【武術】や【歴戦の武術】等を活かした彼女の手刀がペットボトルを切り裂く。 「「「おおおぉぉぉぉーー!?」」」 セシルの華麗な演武に観客席からどよめきが起きる。 その反応に満足するグラハム。 ミスコンが開催されていたので、彼は勝手にセシルのエントリーを済ませておいた。 「面白い物が見れそうだ」と言う本音は、「これもお前が強くなるために必要な試練なんだ!」という誤魔化しで済ませた。 「こう言っとけば信じるんじゃねーかな。セシルの奴、あれで結構単純だし」と見積もったグラハムの企みはすんなり成功したのである。 だが、グラハムのペットボトルの演武に、影響されてか、他の観客も席からモノをステージに投げ入出す。 「(これは……!! 新たな修行ですわね!! グラハムさん!!)」 セシルはそう解釈し、舞台ところ狭しとばかり、飛び跳ねてペットボトルや空き缶を手刀で真っ二つにしていく。 「モノを投げないで下さーい!!」 「こら、そこ!! 投げるなっていってるだろうが!!」 「きゃー、きゃー!!」 司会のアイドル三名が戸惑う中、ジークフリートだけはただひたすら、セシルの弾む胸を見つめていた。 「(1ポヨン、2ポヨン……と。ああっ!! 着地の時のタイムラグを残しつつ跳ねる胸が素晴らしいぜ!!)」 その頃、観客席では……。 「クッ……大きい胸等、見ているだけで吐き気がするわ!!」 ラルが吐き捨てる。 「ラル大尉……何故そこまで嫌われるのでゴザルか?」 ジョニーが尋ねる。シンは「幼かったらどちらでもいい」というスタンスなので、特に気にしていない。 「フッ……ワシは逆に問いたい!! 巨乳など、胸板に余計な脂肪の塊が張り付いただけではないか!! 人は骨と筋肉と皮だけのシンプルな姿だけが良いのだ!!」 「ラル大尉!! 拙者を全否定するのはやめるでゴザル!!!」 巨体のジョニーが悲痛な声をあげる横で、シンが今飲み干したペットボトルを投げるのであった。 ……暫し後。 「皆さん、これ以上モノを投げられると、コンテストを中止にしますよ?」 衿栖の一喝で収まった会場。 ジークフリートが衿栖の人形と共にセシルの叩き落としたゴミを回収しているのを、未散と幽那が厳しい目で見つめている。 「さぁ、それでは審査員の評価をお聞きしましょう! まずは、緋雨さん?」 「まず。セシルさんの演武は良かったです。計算したのかは兎も角として、ビキニの水着の本来の輝きはジャンプする事にあると、男性の方は確信したんじゃないでしょうか」 「ありがとうございます! はい、次はティファニーさん」 「エクセレント!! まさに、ジャパニーズグラップラーネ!!」 「それでは、リューグナー審査員はどうでしょう?」 「うん。ボクも満足だね。何しろナックル系はいないし……でも、飾りのツンツン頭の子がいるのは残念だよ。何しろ魔法少女に男は不要……」 「はい!! セルシウス審査委員長?」 「ああ。もう少し知性が感じられても良かったんじゃないか?」 セシルに投げられたペットボトルが頭に当たったため、やや不機嫌なセルシウス。 「最後に、クド審査員」 「どうしてお兄さんを殴ってくれなかったんだい? 仕方ないから後で舞台裏で……」 「クド!! ……審査しようぜ?」 未散がややドスの効いた声でクドを威圧する。 セシルには審査員五名と観客席の評価で、4・5・3・1・4・4の計『21点』が与えられた。