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 第十七章 『二段奇襲』、第二陣


 二段奇襲作戦、第一陣が多くの敵を引きつけ、レヴェックの警備が手薄になった頃。
 頃合と見て第一陣の面々がレヴェックを討ち取るために動き出す。

「……こんなチマチマしたこと俺様の性に合わねぇんだよ」

 本陣への道中、ギャドル・アベロン(ぎゃどる・あべろん)が不満そうに洩らした。
 それはルファン・グルーガ(るふぁん・ぐるーが)が人の少ない通路を殺気看破で探し当て、残心で注意を怠らず敵に発見されないよう進んでいるからだった。

「まあまあ、落ち着けって。もうすぐ本陣に着くからよ。そしたら大暴れ出来るって」

 そう屈託ない笑顔でそう言うのはウォーレン・シュトロン(うぉーれん・しゅとろん)だ。

「ウォーレンの言うとおりじゃ。少しは落ち着け、ギャドル」
「……チッ、分かったよ」

 二人に諫められ、ギャドルは舌打ちをしながら了承する。
 そうして三人は息を潜めながら進み、やがて本陣の横手を取ることが出来た。

「……ウォーレン、どうじゃ?」

 ウォーレンは両目を瞑り、耳を澄ませた。
 優れた聴覚が僅かな物音をも捕らえ、敵の数と具体的な配置を聞き分ける。

「敵は二十ってとこだな。足運びの音を聞く限りソルジャーが大半だと思うぜ。どうする?」
「そうじゃな、二十か。……なら、わしらで十分じゃろう。強襲をかけるぞ」

 そのルファンの言葉にギャドルは好戦的な笑みを浮かべた。

「やっとか、……ったく長かったぜ」
「ああ、頑張ってくれよなギャドル。
 まっ、サポートは任せな。場数のあるお兄さんがしっかりやってやるよ」
「ハッ、ぬかせ」

 互いに軽口を交わし、二人は戦闘の準備を行う。
 その途中、ルファンは地面を伝う電線に気づきウォーレンに声をかけた。

「のぅ、ウォーレン。この電線なんじゃが」
「ん? ああ、これがどうしたっていうんだよ」
「おぬしの轟雷閃で壊すことが出来ないかの? 施設の電気が途切れば奴らも混乱するじゃろう」
「おお、そりゃおもしれぇな。どれ、一丁試してみるか!」

 ウォーレンは電線に電気を放出するパイクの刃を当てた。
 途端、過負荷に耐え切れなくなった電線が暴走し、本陣に設置された電気が消えた。
 突然のことに驚く敵の声を聞きながら、ルファンが口元を吊り上げた。

「作戦成功じゃな、行くぞ」

 ――――――――――

 第二陣のもう一方。桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)とエヴァは可変型機晶バイクに乗り強行突入。
 エヴァが運転する可変型機晶バイクは重低音の咆哮を上げ、戦場を疾走する。

「アハハハッ! どきなどきなぁぁッ!」

 エヴァは笑い声をあげながら可変型機晶バイクの前面にフォースフィールドを展開。
 前に立ち塞がる敵を轢き飛ばし、宙を舞った敵に真空波を打ち込みながら本陣に突入。
 そこでは、先にルファンとギャドルとウォーレンの三人が戦っていた。

「おらおらぁ! 俺様がまとめて相手してやらぁ!」

 ギャドルはその叫びと共に口から火を噴き、群がる敵を焼き尽くす。
 そして、炎に包まれる敵の前でこれでもかというほどに身体を捻る。

「おおぉぉおおぉぉおおおおッ!」

 ギャドルは吼え、拳を打ち込んだ。
 そのドラゴン特有の怪力を乗せ一点に集中した拳は必殺の矛。

「喰らいやがれぇぇぇぇッ!」

 打ち込んだ拳への感触はギャルドの中で快感に変わる。
 バキリ、メキリ、と音を立てて、生命を砕く感触をその拳の先に確かに感じた。

「ハハッ、この時を待ってたんだ!」

 ギャルドは笑い、また拳を構え、敵の集団へと突っ込んだ。
 その後方、ギャドルをサポートするためにルファンとウォーレンが動き出す。

「後悔したくねぇならさっさと逃げな!」

 ウォーレンは跳躍し、蝙蝠の翼を広げて飛び、敵の意表をついた。
 そして、すかさず風術を発動。圧縮された空気が敵の集団に当たり、大きくよろめかせる。

「……悲しんでおる者がおるのじゃ。負ける訳にはいかんのぅ」

 そう呟き、低い姿勢で集団に潜り込む。
 素早く三節棍を振り回し、的確に敵の顎を打つ。
 脳震盪を起こした敵はその場に崩れ落ち、代わりに襲ってきた敵の攻撃を避け、その腕を絡め取り一本背負いを行った。

 三人によりがら空きとなった道を、煉とエヴァは駆け抜ける。
 煉の百戦練磨の勘が告げる通り進み、そして一人で佇むレヴェックと対峙した。