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第1章


「さぁて!
 パーティーに出すお菓子は、私とアデリーヌにお任せよ!
 今回はシャルロット・オ・フレーズを作るわね」
「さゆみよりは簡単ですが、プラリネを作ることにしました」

 元気よく、綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)はきゅっと腕まくり。
 アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)も、ポケットからレシピをとりだした。
 つくるお菓子は2人とも、悩みに悩んで決めたのだという。

「まずは、えっと……シャルロット型、ボウル、泡立て器……」
「こちらにヘラがありましたわよ」

 さゆみの使う道具を、アデリーヌも一緒に揃えていく。
 こうしておけば、調理の効率も上がるのだ。
 ところで、シャルロット・オ・フレーズの作り方はというと。。。

 ○1○ シャルロット型の内側にビスケットやパン、スポンジケーキなどを貼る
      *今回は深さ10cmの円柱型*
 ○2○ 新鮮なイチゴをたっぷりと入れ、クリーム入りムースを詰める
 ○3○ 大きな皿を帽子のツバに、本体を頭の部分に見立て、リボンで飾る

「しっかし外は暑かったね、天気もいいし……おし冷たいシャルロットにしますか!」
「それではわたくしも。
 お店に出せるほどのレベルではありませんが、ひとつひとつ丁寧に心を込めて作ります」

 同じ調理台で向かい合い早速、2人は料理へととりかかった。

「あ、樹。
 こんな感じで味はいいかな、あーん」
「どれどれ……」

 試しに巻いてみた巻き寿司を差し出す、佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)
 無事、水神 樹(みなかみ・いつき)の口に収まるかと思いきや。

「も〜らいっ!」

 両手でがしっと掴まれ、奪われた。
 ネオフィニティア・ファルカタ(ねおふぃにてぃあ・ふぁるかた)が、もぐもぐごっくん。

「っおいネオ!
 いつのまに……」
「ボクだけ仲間外れとかずるい〜!
 お腹空いたしもっと頂戴!」
「バカ走るなぅわっ!?」
「きゃっ!?」

 弥十郎と樹だけで入ったはずだったのに、知らぬ間についてきていたとか。
 食べ盛りのネオフィニティアは、弥十郎の向こうにある巻き寿司を食べようと奮闘する。
 結果、足を滑らせた弥十郎に樹も巻き込まれてしまった。

「あれ、もう温かいと思うけど寒いの?」

 目的の巻き寿司を1本と、樹のつくった手巻き寿司にも手を伸ばしつつ、ネオフィニティアが問いかける。
 なにが起きたのか、その言葉で状況を把握した2人。
 頭はなんとか庇ったものの、弥十郎が樹を押し倒していた。

「あの……庇ってくださって、ありがとうございました」
「いえ、あの、すみません」

 弥十郎に手を引かれ、立ち上がった樹は。

(出会ってからこれまで、色々あったな。
 たくさん思い出を作って、いっぱいドキドキして。
 こうやって一緒にいられる時間がとっても大切だと思う。
 幸せすぎるな……)

 いまの状況に、幸せを噛み締めるのだった。

 ちなみに。

 ●巻き寿司●
  ○1○ きゅうり、卵、しいたけ、にんじん、かんぴょう、菜の花、チーズの下ごしらえ
      にんじんと菜の花は湯がいて冷ます。
      にんじん、チーズときゅうりは棒状にカット。
      しいたけ、かんぴょうは甘辛く煮る。
  ○2○ 酢飯を作る。
      酢と砂糖、塩を混ぜた関東風の鮨酢を作る。
      梅酢を使った赤色、砂糖の変わりにブルーベリージャムを使用した紫色の酢飯も用意。
       *紫色の酢飯を用意したのは、薔薇学のイメージカラーのため。
        赤色と普通の酢飯で紅白をイメージ。

 ●手巻き寿司●
  ○1○ 出汁巻き卵を焼き上げ、巻きすで形を整えたらちょうどよい大きさに切る。
  ○2○ かんぴょう、キュウリ、お刺身も一口サイズに。
  ○3○ 酢飯の上へ綺麗に並べて、できあがり。