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第2章 その2


「ヴラド殿のパーティーといえば、わりとカップルがいちゃいちゃしている印象があるな。
 今回も、心ゆくまでカップリングの構想が練られるであろう」

 そんな妖しい目的で、パーティーに参加しているアーヴィン・ヘイルブロナー(あーう゛ぃん・へいるぶろなー)
 庭にて、いちゃらぶなカップル達をウォッチングしていたのだが。

「は、な、なんだあの怪しい奴はっ!」

 なんとなく、騒ぎになっていることは知っていた。
 屋敷の外では特に、戦闘が行われていることも。
 だが、まさか自分にまでこの脅威が襲いかかってこようとは想いも寄らなかった。

「うわーっ!」
「おっと!」

 アーヴィンの危機を救ったのは、ベファーナ・ディ・カルボーネ(べふぁーな・でぃかるぼーね)だった。
 【吸精幻夜】で血液を抜き、仮死状態へと追いやる。

「あ、ありがとう」
「礼には及びません……ところで、この魔ウミウシは食べられるみたいですね。
 活造りもいいですが、ここは一つ踊り食いも面白そうでは?
 ふふ……」
「馬鹿な……触手、だと……!
 触手ものはそこに愛があるのかという点で考えると、あまり好むところではなかったのだが。
 こういった形で、恋人達の愛のフラグ的には美味しいかもしれんな。
 美しい庭で愛を語らう恋人達!
 しかしそこに突如現われる無粋な輩のUMIUSHI…… ああ!
 愛しき人がその不気味な触手にじわじわと攻められていくのを彼はどうやってとめられるのか……!」

 と、妙なところで気の合う2人。
 アーヴィンの妄想は続き、ついにはベファーナの施した仮死状態も溶けてしまう。
 その後、2人は……いや。
 多くは語るまい。。。

「なんだあのウミウシ……でかくないかあれ!?」

 遅ればせながら登場した吉崎 樹(よしざき・いつき)は、驚きながらも剣を抜く。
 眼前の敵にどう対処すればよいか、頭をフル回転させて考えた結果。

「面倒くさい触手から対処しないとな!」

 初手は【驚きの歌】にて、敵を怯ませる。

「いいところを見せ付けてやるー!」

 そして地を蹴り、近接攻撃圏内へ……入ったのが間違いだった。

「……!?
 や、やめろおおおヒギィイイイキモチイイイイ」

 絡め捕られ、身体のあんなところやこんなところを舐め回され責め立てられる。
 思考が定まらず、なんだかもうどうでもよくなってきた。

「う〜ふにゃっ!?」

 そんな折、どこからともなく五百蔵 東雲(いよろい・しののめ)が現れる。
 だがしかし、なんとも足許のおぼつかない様子。

「これ、にゃに……ひゃんっ!?」

 つまずいたのは、樹が戦っている個体のようである。
 振り返り、ちょんちょんと突いていると、動いた。

「ちょ、まってはなしてっ、ん、ぁ、やめ……あんっ!」

 そもそも東雲は、パートナーと離れて独りで空中を散歩していたという。
 だが貧血を起こして気を失い、おとものガーゴイルともどもヴラドの屋敷で介抱されていたのだ。
 それから、中途半端に意識のある状態で出てきてしまい、この有様。

「そこっ、ぁ、いいっ!」
「も……好きにして……」

 東雲も樹も、ほどよくほぐれてきたらしく。
 仲間が敵を倒してくれるまで、短いながらも甘い時間を過ごした