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聴こえよ我が声 応え結びを

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解く者の覚悟

 フェリクスの封印地まで来た芭柘美たちとライラ。
 そこにはすでに裕輝と和輝、春華に氷苺がいる。

「あれ、そっちの人はだれ?」

 予め春華のテレパシーで和輝たちが封印地にいることを知っていた芭柘美は隣に居る裕輝を聞いてくる。

「どーもー。オレは裕輝っちゅうもんや」
「結構いろんな情報を持って来たんだよ」
「封印は弱まるけど、椿の花が無いと完全には解けないみたい」
「普通の椿じゃアカンみたいやで? 地祇の加護が宿った椿がカギみたいや」
「地祇の加護が宿った椿? でも、もうその樹はないんじゃないの?」

 裕輝が封印を解く方法を教えてくれるも、芭柘美はライラの話でその樹が無いことを話す。

「いや、あんねん。ここに」

 ライラを指さす裕輝。

「私? ……あ」

 ライラは自分の身に宿っている椿の存在を思い出す。

「もしかして地祇に蘇らせた時に埋められたあの椿なの?」

 セレンフィリティがそう聞くとライラは頷く。

「なら、早くフェリクスの封印を解こうよ。クエスティーナがさっき言ってたでしょ? ライラとフェリクスさんの誤解を解かす為に生き返らしたって」
「我もフェリクスさんの封印を解きたい。彼を自由にしてあげたい」
「そうね。触れれば崩れるのかしら?」

 薫と芭柘美の言葉にライラは水晶の柱の前へ行く。

「待て」

 ライラが水晶に触れる前に、アルツールが制止の言葉を発する。

「どうしたの?」
「芭柘美君。この山を登る時にも聞いたが、封印を解くリスクはちゃんと考えたのか?」
「そうじゃよ。封印されたフェリクスの記憶は当時のライラの偽りの裏切りの所で止まっている。封印を解いた途端に暴走……という事態に起こりかねないぞ」
「う……リスクを怖がってちゃ封印を解く事はできないもん」
「やはり深くは考えてなかったのだな……」

 呆れたようにアルツールはため息をつく。

「待ってください。私はライラさんの想いをフェリクスさんに伝えた方が良いと思います」
「暴れ出したその時は、我は全力で、彼を受け止めて、受け入れるのだ」
「ここにいる人たちみーんな暴走の事も覚悟の上でここに居るはずや。邪魔立てするなら容赦はせんで?」

 アルツールとルファンと対立するように向かい合うクエスティーナや薫、裕輝。

「……暴走してもそれには理由がある。その理由を、矛盾をうちは解きほぐしていきたいの。例えそれでうちが怪我をしようとも、ちゃんと相手の想いを受け止めたい」

 向かい合っているクエスティーナたちの前に出る芭柘美は、真っ直ぐにアルツールとルファンを見てはっきりとそう言う。

「…ふ。ちゃんと考えたようだな。だが、過去の伝説や逸話というものは、多くは後世の人間の都合のいいように解釈されたり意図的に捻じ曲げられたりしているものも多い」
「確かに都合の悪い部分は省いたり、書き換えたりはあると思う。でも、全部が全部偽りの話しって訳じゃないでしょ?」
「ならばなぜ集落ごと敵を消し飛ばす事が起きたのに、一体誰がその集落で起きた事を事細かに伝えたと言うのだね。この時点で既に、その本の内容には何らかのベクトルがかかっているそういうこともある事を十分踏まえたうえで行動するのだな」
「そうじゃよ。今回の書かれた神話も十分曲げられた話じゃった。ライラという存在がいたことで、正しい話を聞けたが、今後は今回と同じような事が起きるとは思えん。十分考えて行動するのじゃよ」
「うん。今度からはちゃんとうちが調べられる範囲で調べたうえで、どう対処するべきかちゃんと考えるよ」

 芭柘美の覚悟を聞けたことでアルツールとルファンは引き下がる。

 口論も終わり、フェリクスの封印は解くことになった。