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6つの鍵と性転換

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6つの鍵と性転換

リアクション

 クリスティーとのデートから戻ってきたトレルは、タイミングよく紫月唯斗(しづき・ゆいと)とばったり出くわした。
「あ、ゆいとだ」
「……まさか、トレルか? うおおお、本当に男になってる!?」
 と、唯斗は目を丸くしつつ、トレルをじろじろと眺めた。いつもの小柄なトレルと違い、並んでみるととても違和感がある。
「で、機械っていうのはどこだ!?」
「あそこ。守護天使のリズィが持ってるやつだよ」
 唯斗はすぐさまリズィの元へ向かうと、性転換機の観察を始めた。
 彼はトレルを一秒でも早く女の子へ戻そうとしていた。性転換なんて許さない、と今にも言わんばかりである。
「ゆいと、やけにやる気満々だなぁ」
 唯斗の背中にいつもと違う何かを感じつつ、トレルはぼそりと呟いた。彼にどんな意図があるにせよ、トレル自身、元に戻りたい気持ちはあるため気にならなかった。
 それよりもトレルには、一つ気になっていることがあった。謎解きをしている輪から外れたところで、爆乳の美女が落ち込んでいる。
「俺たちがいない間に、被害者が増えたらしいな」
 と、トレルは恵の隣へ立った。
「まったくだよ……早く謎が解けてくれるといいんだけどなぁ」
「そうだな。でもさ……俺、まだやってないことがあるんだよねー」
「……着せ替え人形にはしないでよ?」
 と、恵はトレルを睨んだ。
 するとトレルはにやりと笑って、恵を背後から抱きしめた。いつもよりごつくなった手で恵の乳房をつかむ。
「うおー、やらけー。こんなにでかい胸見たら、触らずにいられないよなー。だって俺、今は男だし」
「うわ、やめて! も、揉まないで! ちょ、そっちはもっとダメー!!!」
 勝手なことを言って恵にセクハラをしまくるトレルは、とても楽しそうだ。

「あ、もう何人か人が集まってるみたいだね」
 と、佐々木弥十郎(ささき・やじゅうろう)は人だかりが出来ているのを見て言った。
「さっそく謎を解かないとトレルが……」
 と、弥十郎は女の子に抱きついている空色のショートカットの男の子に気づく。どうやらお楽しみの様子だが……。
「そうだな、さっさと解いてやろう」
 と、佐々木八雲(ささき・やくも)は動じる様子もなく言った。いな、彼はトレルの存在に気づいていなかった。
「え、ああ、そうだよね」
 どうやら兄は別の誰かと勘違いしているらしいと気づく弥十郎。しかしいつも兄にはやられっぱなしのため、教えるつもりはさらさらなかった。
「それが性転換機だな。少し見せてくれないか?」
 と、輪の中へ入った八雲はリズィへ手を出す。
「ああ、くれぐれも取り扱いには注意してくれ」
「分かっている」
 そう言いながら、機械を受け取った八雲はうっかりボタンを押してしまった。
「あ」
 白い煙に包まれた八雲はあっという間に女の子の姿になり、その場の空気は一瞬だけ凍りついた。……注意しろと言ったのに、なんて頼りない人だろう。
 兄の様子を離れたところで見ていた弥十郎は、ふと良案をひらめいた。
 そしてトレルの元へ向かうと、弥十郎はその耳元に『コールドリーディング』した。
「前回、君の唇を奪われちゃったから、兄さんかなり落ち込んでたんだ」
「え?」
「だけど、君としては嬉しかったのかなぁ? 嬉しかったのなら、スパッと振ってあげてよ。もし兄さんの事を今でも思っていてくれるなら『何であの時してくれなかったの?』という意地悪を込めて、キスでいたずらしてくれると嬉しいんだけどねぇ」
 トレルは動揺している八雲を見た。ぱっと恵から手を離し、彼の方へ近寄っていく。
 弥十郎はどんなことになるかとわくわくしながら、トレルの行動を見守った。
「……可愛い女の子見ーつけたっ」
 と、トレルは八雲に声をかけ、抱きしめる振りをして胸を触る。
「うーん、ちっちゃい」
「な、どこを触ってるんだ!? ちょっと待て、俺は男でっ」
 と、じたばた抵抗する八雲だが、今はトレルの方が大きいため意味がない。
 トレルはにこっと笑うと、八雲の額にそっとキスをした。
「!?」
「心の整理が付くまで、もう少し待っててね」
 と、トレルは八雲のそばを離れていった。
「え? き、キスされた……? 待てよ、そっちの趣味はないし、いかんせん、心に決めた女が……あ、でも今は俺が女で……」
 と、八雲は気が動転してただただ戸惑うばかりだった。

「やぁ、僕はこちらの方が好みだな。こんにちは、トレル」
 と、聞き慣れた声がしたかと思うと、トレルは唐突に顎を取られた。
 黒崎天音(くろさき・あまね)はトレルの顔を自分の方へ向けさせるなり、にこっと微笑んだ。
「……あまねくん。こんなところで何してるの?」
 と、トレルは特に動じる様子もなく尋ねる。
 すると天音は背後でむすっとしているパートナーを指差した。
「定時連絡を終えて帰ろうとしてたら、ブルーズがリズィの機械に興味を示してね。それがあんなことになっちゃったから、問題解決してくれる人が現れないかと観察していたんだよ」
 ブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)は一見しただけでは気づきにくいが、まつげがバサバサになって女のドラゴニュートになっていた。
「……じゃあ、まさかすべて見てたの!?」
 と、目を丸くするトレルに天音は意味深長に微笑んだ。
 トレルは一気に嫌気がさしてきてうなだれた。性転換するところから女の子をいじって遊んでいるところまで、すべてを見られていたなんて。
「ちなみに私もいるぞ」
 と、トレルの前に現れたのは毒島大佐(ぶすじま・たいさ)だ。
「うわぁ、たいさまで!? お前も全部見てたのかっ」
「さあ、それはどうかな」
 と、大佐は意地悪そうに楽しげな笑みを見せる。
「っつか、見てたんならさっさと機械の謎を解いてくれよ」
「まぁ、そうなんだが……組み合わせは全部で100パターンもないんだし、放っておいてもいいかなって」
「……さてはお前、答え分かってるな?」
 と、トレルは大佐を見下ろす。
 大佐は口を閉じると、わざとらしく首をかしげた。持っている情報を言う気はさらさらなさそうだ。

「へぇ。これがそーなのかー……」
 と、佐々良縁(ささら・よすが)は機械をまじまじと眺めて呟いた。
「押すだけで性転換っつっても、どうせ変わったところであれだしな」
 と、鈴倉虚雲(すずくら・きょん)はあまり興味がなさそうにしている。
 そこで縁は考えた。
「ねぇねぇ、虚雲くん」
「ん?」
 振り返った彼に不意打ちでキスをする縁。その手は彼の手を巻き添えにしながらボタンを押している。
「……よ、縁ねえ!」
 と、女体化した虚雲は叫んだ。一瞬で伸びた髪はポニーテールになっており、ミニスカートにニーソックスとそそる衣装である。
 一方の縁は男性の姿に変わった自分を確認しながら呟いた。
「わ、ホントにかわったねえ……背はちょっとしか伸びなかったけど」
 声は普段より低く、確かに男性である。
「まぁ、いいや。ちょっとこれで出かけましょうよ、お嬢さん」
「は!? ちょっと待って、縁ねえ!」
 と、慌てる虚雲にかまわず、縁はいつもより華奢な手を取る。いつもは手を引かれる側なため、とても新鮮な気分だ。
「性別が逆転するっていうのも面白いねぇ」
「お、面白くなんかねぇよ! 早く元に戻らなきゃっ」
 と、名残惜しく後ろを振り返る虚雲。
「おっと、よそ見はいけませんよ」
 と、縁は人にぶつかりそうになった虚雲を引き寄せた。ついでに貧しい胸にタッチする。
「ひぁ!? ちょ、どこ触ってるんだよ!」
「え、もっと触って欲しいの? 虚雲くんたら仕方ないなぁ」
 と、縁はさりげなく虚雲のスカートをめくりあげた。
「!!」
 黒のレース下着とガーターベルトが視認できた。
 虚雲は顔を真っ赤にし、慌ててスカートを押さえる。
「も、もう……! こんなことして、後で覚えてろっ」
 と、虚雲は強がるが、今の縁は男性だ。力ではかなわないことくらい、よく分かっていた。
 もちろん、縁もこの状況を楽しまないわけがない。
「ふふふ、逃げたって無駄ですよ、お嬢さん……」
 にやにやと意地の悪い笑みを浮かべながら、縁は虚雲へセクハラを繰り返すのだった。

「リズリズ〜、ちょっともう一人試してみたい人がいるんだけど〜?」
 と、師王アスカ(しおう・あすか)はリズィへ声をかけた。
 好奇心に負けてボタンを押したアスカは男性になっていたが、少し声が低くなったくらいで見た目はまったく変わっていなかった。
「今から呼び出すから、後でちょっと貸してくれるかしら〜?」
「ん、別に構わないぞ。元に戻れる保証はないが」
 と、リズィの忠告に耳を貸さず、アスカはさっそく恋人へ連絡し始めた。

 呼び出された蒼灯鴉(そうひ・からす)はそこはかとなく危機感を感じた。
「あのねぇ、この機械のボタンを押して欲しいの〜。ねぇ、やってくれる?」
「……いや、それよりもこれは何なんだ?」
 と、鴉は差し出された機械を疑った。
 いつもより声がハスキーっぽくなったアスカはかまわずに言う。
「大丈夫よ〜、ボタンを押すだけだからぁ」
「……はぁ」
 アスカにぐいぐいと迫られて鴉はボタンをしぶしぶ押した。
 白煙に包まれる鴉。アスカがキラキラと期待に目を輝かせていると……。
「え……? 何だこれ、視線低っ! しかも、胸重っ!?」
 185センチの身長は縮んで160ほどになり、その胸は軽く平均を超えている。声も可愛らしいアニメ声となり、服装はゆったりとした着物だ。
 鴉は状況を把握しようと自身の身体を確認する。
「まさか、これは……女体化、ってやつか?」
 アスカは呆然としていた。彼女の頭の中では、鴉はすらりと背が高くモデル体型の美女になるはずだったのだ。
「う、う、裏切り者〜〜〜〜!!!」
 と、アスカは涙目になって叫ぶと、鴉の胸へ飛び込んだ。
「待て待て! 何で俺が怒られなくちゃいけないんだよっ!」
「うるさぁい! むしろどうしてそんな姿になっちゃったのよぉ!!」
 アスカは鴉に怒りをぶつけながら、豊満なバストを両手でつかむ。
「胸をつかむな! 揉むな! うずめるなぁ〜!!!」

 男性化したイオテス・サイフォード(いおてす・さいふぉーど)は普段より小さく見えるパートナーを見てひらめいた。
「え、イオテス? ちょっと待って、さすがに昼間からお姫様抱っこは……」
 唐突に抱き上げられた宇都宮祥子(うつのみや・さちこ)は慌てた。
「恥ずかしいのなら、屋内へ移動しましょうか?」
「いや、だから、そういう問題じゃないんだけど……」
 と、祥子は返すが、イオテスの嬉しそうな顔を見ると強く文句も言えない。
 冬山小夜子(ふゆやま・さよこ)はそんな二人をデジカメで写真に撮っていた。
「でも、そうですわよね……やっぱり屋内の方がいろいろ試せそうです」
 と、イオテスは小夜子へ目を向ける。
「行きましょう、小夜子さん」

 そして祥子の連れてこられたのはホテルの一室だった。
 お姫様抱っこから解放された祥子はベッドへそっと下ろされる。
「男性として触れると、女性の身体は本当に柔らかいですわね」
 と、イオテスは祥子の胸へ触れる。
「んっ……何をしたいの、イオテス」
「試したいんです。男性はどんな風に女性に触っているのか……」
 恋愛小説や漫画などを読んで得た知識を、イオテスは実践しようと考えていた。
「いろんな衣装を用意しましたから、お着替えしませんか?」
「まさか……今ここで?」
 イオテスはにっこり笑った。
 祥子はベッドを降りると、二人の視線を感じながらも服を脱ぎ始める。
「ふふっ、祥子さん」
 と、小夜子は彼女のお尻をそっと撫でた。
「ちょっと、小夜子まで何するのよ……っ」
 と、祥子は少し頬を赤らめたが、口で言うほど嫌がっている様子もない。
 そしてセクシーな服へ着替えた祥子は、再び小夜子からデジカメを向けられる。
「似合ってますわ、祥子さん」
「スタイルがいいので、絵になりますね」
 褒められた祥子はちょっと調子に乗ってポーズをとってみた。
 するとイオテスと小夜子の目の色が変わる。
「もっと色っぽいポーズもしてみてください」
「こ、こう?」
 と、祥子はイオテスの腰に抱きついてみる。
 イオテスはそっと腕を伸ばすと、祥子の胸を触った。軽く揉んで反応をうかがう。
「っ……触られるのは、ちょっと……あっ」
「祥子さん、こっち向いてください」
 と、小夜子は彼女の太ももをさわさわと撫でながらカメラを向けた。
「えっ、あ……」
 なるべく変な声を出さないように気をつける祥子だが、二人に触られてしまうと上手く行かない。
「祥子さん、裸になってみませんか?」
「え? それはちょっと、やりすぎじゃ……」
 と、イオテスを見上げる祥子。
 イオテスは彼女の顎を取ると唇を奪った。
「美味しいですよ」
 と、イオテスは小夜子に視線を向ける。小夜子はすぐに祥子へキスをすると『吸精幻夜』で惑わせた。
「さあ、祥子さん。次は二人で裸になって抱き合いましょう。良い構図になりますよ」