イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

【神劇の旋律】其の音色、変ハ長調

リアクション公開中!

【神劇の旋律】其の音色、変ハ長調

リアクション

     ◆

 何とか敷地内、庭園の中へとやってきた彼女たちは、そこで一度作戦を練り直す事にしたらしい。さらに言えば、既に敷地内に潜入出来てる面々とも合流する事が叶った訳であり、此処で一度、整理をする必要性があった。
「私は無論、結っ子次女と一緒」
「え、何それ俺の意見とかどうなる感じ?」
フェイ・カーライズ(ふぇい・かーらいど)が発言した事により、匿名 某(とくな・なにがし)が反論してみるが、しかしどうやら彼女、そう言った言葉に耳を傾ける気はないらしい。厳密に言えば、自分の決めた事には比較的忠実。と言った体である。
「いやいや、だから、人の話を聞こうか」
「結っ子次女。当面の動きは何」
 結っ子次女。とは即ちシェリエの事らしい。彼女は苦笑を浮かべながらに応えるのだ。
「そうね。ワタシは此処に残ってみんなの情報を纏めてみようかなって、そう思ってるかな」
「わかった。じゃあそれを手伝えばいい」
「おおい……なんか俺凄い退屈そうなんだけどね?」
「知らない」
 きっちりと否定される某。がっくりを肩を落としながらもしかし、どうやらそう言う扱いを受ける事に慣れているのか、観念して言葉を呑む。
「ツカサ、ワタシたちも残りましょうよ」
「え、私たちもですか?」
「えっとえっと、これから何が始まるんですか?」
 月詠 司(つくよみ・つかさ)シオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)イブ・アムネシア(いぶ・あむねしあ)もそのやり取りを聞き、会話を始める。
「ほら、ワタシたちって此処、きた事あるでしょ?」
「そうですね」
「この前パーティしましたよねぇ!」
「って事は、もし不測の事態があった場合も何かと力になれると思うのよ」
「……はあ。なんか怪しい感じ、しますけどねぇ」
「でも確かに言われてみれば、シオンさんの言う通りですよぉ! ボクは名案だと思うけどなぁ!」
「ほら、イブもこういってるし。ツカサ」
「うーん、そうですね。まあ、わかりましたよ。シオン君やイブ君がそう言うなら、それもまたよしとしましょう」
 会話がまとまったらしく、三人もシェリエの元へと向かった。
「皆さんシェリエさんと共に行動、ですか」
 一同のやり取りを静かに聞いていた白星 切札(しらほし・きりふだ)は、誰に言うでもなくそう呟いた、呟いて、それぞれの会話を聞いてみる。自分は一体誰に手を貸すべきか。誰と共に行動すべきか。そしてこの局面、どこが一番解決までの最短距離に成り得るか。を。
「とはいえ、頼まれた以上は何とかしようとは思っていますよ? うーん……」
「あの、でしたらわたくしたちにご助力出来ませんか?」
 トレーネの言葉、だった。
「……良いですが」
「恐らく、わたくしたちがハープの在りかを調べる事がメインになりそうですの。戦いを避け、あらゆる罠から逃げて、ある場所を特定する。なので是非、お力を」
「わかりました。ならば私が出来る事を以て全力でお力添えしますよ」
「よし! せやったら俺はパフュームちゃんやな! よろしゅう頼むよ、お嬢ちゃん」
「お嬢ちゃん言うな! あしたも立派なれでぃなんですからね!」
「ほいほい、わかったから、そないご機嫌にがならんといてやぁ。“れでぃ”なんやろ?」
 にやにやと、まるで茶化すように言いながら、瀬山 裕輝(せやま・ひろき)はパフュームに言葉を掛ける。
「さて、じゃあこれで動きは粗方決まったわね。一応確認しておくけど、まずはトレーネ姉さんたちは、あくまでも水面下にハープの場所探索を優先。見つかったら全力で逃げてね」
「心得てますわよ」
「で、パフュームが陽動、かな。とりあえず普通に探してていいからね。ばれたら戦ってくれても構わないし、何だかんだで一番大変かもしれないけど……」
「大丈夫だよシェリエ姉! あたしを誰だと思ってんのさ!」
「ふふふ。それでワタシが、情報処理って感じ。みんな、オッケーかしら」
 シェリエの言葉に反応し、一同が返事を返した。
「ちょっと良いか」
 佐野 和輝(さの・かずき)アニス・パラス(あにす・ぱらす)が一同に近付いてくる。
「俺たちなら、もしかたらお前たちが求めている情報を渡す事が出来るかもしれんぞ?」
「わたくしたちの求める情報……?」
 トレーネが尋ね返すと、アニスがにこにこと笑顔を浮かべながら頷く。
「敵として対立する人がどういう人なのか、わかった方が便利かなって思うんだけど、どうかな?」
「そういう事だ」
「敵の情報……ねぇ。普通の学生さんじゃないの?」
「普通の学生、だって?」
 和輝が笑った。シェリエの言葉に笑ってから首を横に振る。
「どこが普通なものか。それで、どうする。聞くのか、聞かないのか」
「教えてよ! もったいぶってないでさ!」
「良かろう……あいつらはな――」
 ウォウルとラナロックを知らない面々も中にはいるわけで、和輝とアニスが今までの事を説明し、彼等の人となりを説明し始めた。
「兎に角その二人……特に女の子の方にさえ気を付けておけばいいんですわね」
 トレーネが聞き返すと、和輝は静かに頷いた。
「まあまあ、あたしたちに掛かれば余裕よ余裕!」
「そうだと良いな。ただ、多分その考え方で行くと怪我じゃあすまなくなるからな。あと、これはまだわからんがしかし、どうせ今回の事もウォウルが何かしら企んでいる可能性もある。くれぐれも気をつけろよ。あいつは何を考えて動くか、全くわからんからな」
「わかりましたわ。ご忠告、ありがとうございます」
 トレーネの言葉に、二人はそれぞれの反応を見せながら、しかし踵を返してその場を後にしようとする。
「あれ? 手伝ってくれるんじゃないの?」
 シェリエの言葉にいったん足を止める二人ではあるが、しかし再び足を進め、振り返る事無く返事を返す。
「もう既に協力ならした。それ以上の事を、俺たちはする気がないんでな。精々頑張れよ」
 ひらひらと手を振って、二人はその場を後にするのだ。暫く見送っていたシェリエはしかし、大きく一度息を吐き出すと、顔に力を入れて拳を握る。

 「じゃあ、それぞれ頑張って。ハープを持って帰りましょう」

 全員が、それぞれの役割を持って動き出すのだ。