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水晶の花に願いをこめて……

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水晶の花に願いをこめて……
水晶の花に願いをこめて…… 水晶の花に願いをこめて……

リアクション

 
〜 一週間後 〜


発掘と研究スタッフが慌ただしく動いている森の入口
そこに久しぶりに雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)は一人佇んで様子を眺めていた

あの華々しいイベントを皆で終わらせた翌日から
用意を十分に整えた機関の面々は早々に準備を開始し、様々な建機が動く騒々しい場所となった
林道一帯まで発掘対象となった森は少しずつ木々の数を減らし、むき出しの地面と穴を増やしている
考古学分野から考えれば非常に前向きな事なのだろうが
そこに何の価値も見いだせない身としては、あの楽しかった野営も含めた森の情景が失われるのは忍びない

それでも一応大人として気を利かせる部分もあったのか
なんだか一連のこちらの行動を知って、発掘完了後に整地して、森を資料公園のような形にすると提案してくれたようだが
それでもあの木漏れ日溢れる木々が戻るわけでもないし、あの情景が戻るわけでもない

歴史を探求するものが、その歴史の連なりを壊していくというのも何とも皮肉だものだと思うが
よく考えれば、そうやって世界は回っているのだろう

 「あの手の主の女の子も……そんなこと考えてたのかしら?」

背後から近づく親しい影を感じ、雅羅はぽつんとそんな事を呟いてみる
その独り言のような声にアルセーネ・竹取(あるせーね・たけとり)はやんわりと返答する

 「そうですね……どのような想いだったのかはわかりませんけど
  ただ、どちらにも言える事は、空は変わらない……という事なのかもしれませんわ」
 「そうね、だから私達はその願いを受け継がないといけないんでしょうね」


霧島 春美(きりしま・はるみ)がギリギリ解明し、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)達が最後の一手として提出した
祭壇のレポート……水の記憶に対する事象は、ぎりぎり受理された
とはいえ、冷静に考えると非常にあやふやなものなので、殆ど移転のための言い訳に近いのかもしれない
重要である【水】が、あの場所では岩盤から伝わる清水である点からも、大がかりな土地破壊は水脈の破壊になりかねないとし
あの祭壇周囲で当初予定されていた手の入れ方はしない、という事になったのも僥倖だと思う

学園の研究等の一角に台座の水ごと保存されたスイレンの花も学園が研究機関から借り受けたものとし
定期的にレポートを提出することで学園側の管理となったらしい
いずれ発掘地が公園化されれば、在るべきところに戻される予定ではある
まぁ結局あの祭壇の光景は戻らないわけなので、憩いの地を求めてた小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)あたりは不満だろうが


 「ね、【願い】ってなんだろうね?
  【願望】とか【願掛け】とか似た言葉ってあるけど、どれも微妙に違うでしょ?それとどう違うんだろう?」
 「そうですわね……果てなく、人を想う気持ちがあるかないか……じゃないでしょうか?」

雅羅の問いにアルセーネが考えながら答える
あの4日間、多くの人の願いを目の当たりにしてきた

印象深かったのは皆、誰かをの事を願いにする事が殆どだった
自分に当てはめると【願いはない】あっさり言う者も多かった位だ

いつの間にか生徒のスイレンの水晶への意識も【願いを叶えて貰う】から【願いを守る】という意識に変わったらしい
水の記憶の説が生徒間で広まってからというもの
積み重ねられた祈りの記憶をその水面に宿し、人の誰かを想う気持ちを後押しする……という理屈が
夢に向かっう人にとって、心を前向きに励まされ、頑張れと応援してくれる象徴という印象を与えたらしく
まぁ願い事とは別のベクトルの形であやかる為に足を運ぶ人が後を絶たないらしい

奏輝 優奈(かなて・ゆうな)なんかはいつか祭壇の水に御賽銭入れられるんじゃないか……などと言っていたようだが 

いずれにしても、人の願いを重ねたものはいつまでも未来に向かって残っていく


空に向かって手を伸ばす
悠久の時を経てもこの空だけは変わらない

そこに祈りを届ければ、あの少女の伸ばした手と繋がっているのかもしれない
あるいは、この先の未来、同じように空に何かを願って手を伸ばした人がいたのなら
きっとその人の手にも繋がっているのだろう

今はそうやって繋がっていようと思う


いずれ、自分たちに時を超える程の強い望みが胸の内に生まれたのなら
その時はすでに戻されているであろうあの祭壇がまた空を移しながら伝えてくれるのだから

空に伸ばした手を握ると、指の隙間から眩しい陽の光が限りなく溢れていく中
祈る様にいつまでも二人は眼をつぶるのだった

 
 

担当マスターより

▼担当マスター

OGA-SAN

▼マスターコメント

今回当シナリオを担当させて頂きました、OGA―SANと申します。

最後まで読んでくださって、本当にありがとうございます。
今回で6回目のマスタリングになりました

原案からの完全オリジナルの初シナリオです
前回のシナリオが大作だったので、まぁゆったり参加できる一休み的なSS規模のものを、と考えました
ついでにみなさんと少しでも親しく近くいろいろ知る事ができたらなぁ……という感じです

魔法と神秘溢れるパラミタとしてはずいぶん違ったアプローチのギミックだった……というか
どっちかというと、神秘の種明かしより、まぁ皆さんの願いと、それと向き合う姿を見たい……と思っていたら
なんだか遺跡に対して保存や移転をしっかり望む方が多かったので
アクションを見ながら何度『みんなええ人や〜』と想った事も数知れずでした

一人ぐらいトンデモ野望を宣言するかな〜と思ってたら誰もいなかったもんで
まぁ見るからにネタ担当希望の方はいたのでよきにはからいましたけど(大笑)
基本警護の方は4日間いないといけないので全章(?)通しての出番となりました
またやっぱり人が多く集まって、それぞれの思いが交錯する場所なので
しっかり流れを組んだアクションでも、人とのかかわりで微妙に変わってます、ご了承ください

あとはもうね

こんなに賑やかに人がいて、ひそやかにお祝いなんか出来るわけないぞと
そりゃみんな、喜んでノっちまうだろうよと
のぞき見するくらいなら堂々と手伝うだろうよと
みんなでブーケ争奪戦ぐらいするだろうよと

そんな感じで降って舞い込んだブライダルを盛り上がらせて頂きました
一応、遺跡に関わった人は全員参加しております、デートオンリー組の方はゴメンナサイ(平謝)

称号は願望でのアプローチが強かった方数名に送っております



そんなわけで、また機会がありましたらよろしくお願いいたします
ちょっと次も忙しい時期なのでこんな感じの話になる予定です



………ちなみにこの水晶の花、また意外な展開を迎えるのだとしたら……きみはどうする?