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二章 チョコバナナ、チョコ抜き

 公園に入ってすぐ近くは屋台エリアとなっていた。
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)はDSペンギンを働かせながらせっせと冷やしチョコバナナを作っていた。
 冷やしたチョコバナナにカラフルなチョコスプレーがトッピングされたそれは、なんとも食欲をそそる色をしていた。
 地球にもある食べ物のためか、生徒たちはどこか安心した表情でチョコバナナを買っていく。
 DSペンギンたちもペタペタとゆっくりした歩みでチョコバナナを運び、女子生徒から「かわいいー!」と絶賛されている。
「順調そうですね」
 そう言って、美羽に声をかけてきたのはJJだった。
「あ、ゴリラさん! いらっしゃい! うん、予想外の売れ行きだよ。コハクくんに材料の買い足しお願いして正解だったよ。ところで、何か買って行く?」
「そうですね……では、チョコバナナのチョコ抜きを一つ」
「ゴリラさん……それただのバナナだよ」
「あ、バナナは棒で刺さなくても結構ですよ」
「いやだから、それただのバナナ……」
 そんなやり取りをしていると、突然地面を影が覆った。
 美羽と生徒たちが上を見上げると、そこには首にバナナの箱をぶら下げたレッサーダイアモンドドラゴンと上に跨がっているコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)の姿があった。
 コハクがダイアモンドドラゴンの首をポンポンと叩くとダイアモンドはゆっくりと下降して着陸する、
 男子生徒たちは身体の透き通ったダイアモンドドラゴンに歓喜の声をあげて、写真を撮り始める。
「すっげえ! これってなんていう動物なんですか?」
「えっと、これはレッサーダイアモンドドラゴンっていうドラゴンなんだ。大人しくて賢い奴だから少しくらいなら触っても大丈夫だよ」
 そう言われて、生徒の数人はダイアモンドドラゴンにおそるおそる手を触れては大はしゃぎを繰り返している。
「コハクさん、お疲れさまです。ドリンクはいかがですか?」
 生徒たちを見守っていたコハクに声をかけてきたのは、美羽の屋台の隣でドリンクを提供していた初那 蠡(ういな・にな)だった。
 コハクは声をかけられてゆっくりとふりかえり、
「う……」
思わず、低い声で唸る。
蠡は、白と黒のブチ猫のような姿をしていた。
 と、言っても着ぐるみを着ているわけではない。猫カチューシャを着け、白ビキニに黒の斑点をあしらい、手足には肉球付きの手袋とスリッパを装着していた。
 それだけなら、まだまともと言えたが、ドーランで片目と鼻を黒くし左右に三本のヒゲが描かれたその姿は、なんと形容してよいのか分からないものとなっていた。
「……蠡さん、その格好は一体……?」
 JJが訊ねると、蠡は自信満々に胸を張り、
「どうです? 完璧な白と黒のブチ猫でしょう?」
 堂々と言ってのけた。
「ううん……蠡ちゃん、やっぱりこの格好はまずかったんじゃ……」
「ああ、さくらさんも一緒だったのですか。いったいこれは……うほぅ!?」
 JJは蠡のパートナーの四十万 さくら(しじま・さくら)の方を見て、思わず叫び声を上げる。
 さくらの姿も蠡の姿とほとんど変わらなかった──黒猫をイメージしてるせいか顔が真っ黒なのを除いては。
 JJの反応を見てさくらは黒い……暗い表情を浮かべる。
「あたしたちは珍しい動物なんて知らないから、せめれ動物っぽい格好をしようってことになったんだけど……やっぱり変……だよね?」
「そんなことは無いよ、さくらちゃん。ほら、みんな笑いながら写真を撮ってるよ」
「それはどう考えたって笑われてるよ……」
「楽しんでもらってるならそれでいいじゃないですか、さあ生徒さん達に飲み物をお配りしましょう?」
 そう言って蠡は飲み物を持って生徒たちに飲み物を渡していく。
「うう……もう、仕方ないなぁ……」
 さくらも渋々ながら笑いの渦中に飛び込んで飲み物を配っていく。
 その光景を見ながらJJは嬉しそうに頷く。
「ここは活気づいているようですから、心配はいりませんね。他の様子を見に行くとしましょう」
 独りごちながら、JJは屋台エリアを後にして奥に進んでいく。