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【ぷりかる】幽霊夫婦の探し物

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【ぷりかる】幽霊夫婦の探し物

リアクション

「まぁ、誰か来ましたわ」
 いきなり登場した黒塗りのエアカーにびっくりするグィネヴィア。運転席から執事服のダリルが登場し、ゆっくりと後部席のドアを開ける。中から出て来たのは格好良い男性用服を着て男性としてグィネヴィアをエスコートする気満々のルカルカ。ルカルカもダリルもすっかり服装を整えていた。
「あら、ルカルカ様にダリル様」
 グィネヴィアはエアカーには驚いたが、知った顔にすぐにほっとした。
「……」
 ルカルカはつかつかと後ろにダリルを従え、グィネヴィアの側へ。
「……お久しぶりです、グィネヴィア様。また時間を共に出来る機会に恵まれ、本当に光栄です」
 流暢な挨拶に洗練された動きのルカルカ。
「はい。わたくしも光栄ですわ」
 グィネヴィアも丁寧に挨拶を返す。
「どうですか、お喋りを少しだけ一休みして体を動かしてみませんか」
 ルカルカはすっと手を差し出した。
「……あのぉ?」
 何をしようとしているのか分からないグィネヴィアは戸惑い気味に差し出された手を見つめている。
「……」
 ルカルカはすっとグィネヴィアの手を取って広い空間に連れ出した。

「……ダンスですわね。ただ、音楽が無いのが寂しいでございます」
 ルカルカ達のやり取りを見守っていたアルティアはダンス用の音楽が無い事に気付いた。

 そして
「音楽が無ければ……」
 歌うのが好きなアルティアがしっとりと歌い始めた。
「……」
 ルカルカはアルティアに目でお礼を言い、アルティアは微笑みで応えた。

「素敵ねぇ」
 ハナエが羨ましそうに踊るルカルカ達を見ていた。
「後でヴァルドーさんと踊ったらどうですか。それぐらいの時間はあるはずですわ」
 とリーブラ。
「そうねぇ、でも難しいわ。あの人、こういう事はなかなか出来ない人だから」
 ハナエはため息をつきながらヴァルドーを見た。

「リーダーもグィネヴィアさんにダンスをお願いしたらどうでふか。きっと楽しいまふ」
 リイムが新たな仲良し作戦を見つけたとばかりに宵一に助言をする。
「……それはそうかもしれないが、機会があればだな」
 宵一は踊る二人を見守りながらリイムの思いついた作戦に戸惑っていた。ようやく仲良くしたいという本音をなかなか言い出せなかったというのにダンスに誘うとなるとせれよりも難しい事のように宵一は思った。

「……なかなか見事だな」
 ダリルは邪魔にならないよう小さくつぶやいていた。先ほどからの所作といい、ダンス中の様子から本当に上流階級出のようだと思っていた。

 ダンスはアルティアの歌の中、静かに終わった。
「……終わったか。仕方無い、世話をしてやるか」
 ダリルは『行動予測』で飲み物が必要になると読み、『ティータイム』で用意した飲み物を持ってルカルカ達の元にやって来た。主人が言葉にする前に必要な物を用意するのが優秀な執事。

「……素敵でしたわ」
 胸に手を当て冷めやらぬ興奮に頬を上気させているグィネヴィア。良い運動になったようだ。
「それはこちらもですよ。そうだ、ダリル」
 ルカルカはグィネヴィアのために飲み物を用意しようとダリルを呼ぶ。
「……」
 先を読んでいたダリルはすっかり飲み物を用意してやって来た。

「どうぞ、グィネヴィア様」
 ルカルカの言葉でダリルがグィネヴィアとルカルカに飲み物を渡してからルカルカの背後に控えた。
「ありがとうございます」
 グィネヴィアはゆっくりとカップに口をつけ、一休みをしていた。

 調理スペース。

「あら、まだこんなにあるんですの」
「予想以上に大量ですね」
 麗とアグラヴェインはあまり減った様子の無いキスミの魔料理に声を上げていた。
「頑張って食べてくれてはいるんだけど、量が量だからね」
 近くで料理をしていた涼介が答えた。リース達やシルヴィアが頑張ってくれているのだが、一皿の量がかなりの物なのでなかなか大変。
「これは危ないですわね」
 何かの拍子にグィネヴィアの口に入ってしまうのではないかと麗は危機感を感じていた。
「危ないってなんだよ。料理を台無しにするし、つまらねぇ料理を作らされるし。姫さんなら喜んで食べてくれるのに」
 キスミが麗の言葉に憤慨し、食ってかかる。
「グィネヴィア様が優しいからですわ」
 麗はばっさりと言い放つ。まさにその通りでキスミをフォローする者はいなかった。
「ここから脱走してグィネヴィア様に悪戯を仕掛けさせる訳にはいきませんわ」
 麗は首を傾げながらルカルカと踊っているグィネヴィアを眺めていた。

「どうされますか、お嬢様」
「思いつきましたわ。アグラヴェイン、ダンスが終わり次第、グィネヴィア様に幽体離脱クッキーを勧めなさいな」
 案を訊ねるアグラヴェインに麗はとっておきの名案を思いついた。
「……は、グィネヴィア様にクッキーを、ですか?」
 アグラヴェインは何をしようとしているのか分からず、聞き返した。
「そうですわ」
 麗は口の端を歪め、不敵な笑みで答えた。
「ははあ、そういう事ですか。確かに幽体離脱をしている間は、怪しげな料理は口にしないで済みますな。時間を稼いでいる間に他の皆様がここにある料理を片付けると、そういう読みでございますね」
 麗の笑みに何を考えているのか察したアグラヴェインは、名案の内容を当てた。
「そうですわ。わたくしもクッキーを食べて霊体になりますから安心ですわ。アグラヴェイン?」
 うなずく麗は様子がおかしいアグラヴェインの顔を覗き込んだ。
「……お嬢様のご学友のお体を気遣うその気持ち……このアグラヴェイン、感銘を受けました。少々力技ですが……あぁ、お待ちを」
 至極感動中のアグラヴェイン。しかし、感動も何とか落ち着かせ行動を開始する。
 ちょうどダリルがルカルカ達に飲み物を勧めている時だった。

 グィネヴィアが落ち着いた頃、
「少々、よろしいでしょうか」
 幽体離脱クッキー片手にアグラヴェインが登場。
「アグラヴェイン様」
 グィネヴィアはアグラヴェインに気付き、振り向いた。
「グィネヴィア様、お嬢様がグィネヴィア様にお話があるとの事……つきましては、お嬢様は今幽体離脱されておりますので、こちらを」
 事情を話し、幽体離脱クッキーを差し出した。

 ここで
「グィネヴィア様」
 霊体となった麗が登場し、クッキーを食べる方向に誘い込もうとする。
「麗様……」
 麗に気付くもルカルカの事もあり、少し困った顔をするグィネヴィア。
「今度は霊体になって散歩を楽しんできたらどうですか。こちらは気になさらないで下さい」
 ルカルカは、麗が魔料理からグィネヴィアを遠ざけようとしている事を知り、静かな笑顔で見送る事に。
「はい。では」
 グィネヴィアはクッキーを食べ、霊体となった。
「わぁ、グィネヴィアおねえちゃんもオバケです。ボクと同じです〜♪」
 自分と同じ霊体になった事が嬉しくてヴァーナーはグィネヴィアに抱き付いた。
「一緒ですわ」
 グィネヴィアも嬉しそう。
「では、グィネヴィア様、せっかくですからご夫婦のお手伝いをいたしましょうか。アグラヴェイン、体は任せますわ」
 麗はグィネヴィアを連れてまずは夫妻の目的地である古城へ向かう事にした。途中で聞き込みも欠かさず。
「お気を付けて行ってらっしゃいませ」
「麗おねえちゃん、グィネヴィアおねえちゃん、気を付け下さいね〜」
 ヴァーナーは手を振って見送った。
「さてお二人のお体をお守りせねば」
 アグラヴェインは麗の体を抱えながら場所探しを始めた。
「……ここに寝かせてはどうだ」
 グィネヴィアを抱えたダリルが寝かせるのに最良である長椅子を発見していた。
「では、そこに寝かせるとしましょう。お二人のお体の見張りは私めがしますので」
 そう言ってアグラヴェインは悪戯小僧からしっかりと守っていた。

「流石、ダリル。ルカが言う前に飲み物を用意してるんだから」
 ルカルカは戻って来たダリルに嬉しそうに言った。
「俺を誰だと思っている。シャンバラの剣たるもの、あれぐらい出来なくてどうする」
 やる前は渋っていたが、今は執事を立派に務めているダリル。
「さてと、グィネヴィアが戻って来るまでにキスミの料理を片付けないと」
 ルカルカは息を吐き、席に着いた。
「……」
 ダリルは黙って調理スペースからキスミの料理をいくつか持って来た。
「……いざ」
 『肉体の完成』と『リジェネレーション』で身を守りながらキスミの料理をどんどん食べていく。遭遇した効果には、眠くなったり発する言語がおかしくなったりなど変な効果はあるものの怪我をするものはなかった。時々他の料理人が作った料理も食べたりして一休みを入れたりしていた。あまりの食べっぷりにダリルは調理スペースに駆け込んだ。

「よし、今の内だな。姫さん、大丈夫か」
 ナディムも魔料理破棄に積極的に動き始めた。まずはセリーナ達の元へ無事を確認しに行った。
 調理スペースでは幻覚茶を回収した北都達がキスミとやり取りをしており、ヴァーナーが優しい気持ちを抱えて調理スペースへ歩いて行った。

 調理スペース。

「……頭、こぶがあって痛いから、一休みしたいんだけど」
 作業をしていたが、イグナに仕置きされた箇所が気になるのか何度も頭を触っている。
「……仕方が無い。キスミを大人しくさせてくれ」
 イグナは調理場にいる人に協力を募った。
 呼びかけでやって来たのは、
「自業自得だと聞いたが」
 ルカルカの食べ物生産にやって来たダリルだった。事情はよく知っている。
「……それは違うって」
 キスミはイグナに恨めしそうな目を向ける。嫌な意味で大人しくさせる人が来たんじゃないかと。恐い目に遭わされた事があるので。イグナは無言で見張りを続けている。
「……これなら文句は無いだろう」
 ダリルが『ナーシング』で痛みを癒した。キスミの不安は杞憂で終わった。
「……痛みが消えた。というか何でここにいるんだよ」
 キスミはいつの間にか料理をしているダリルに聞いた。
「見ての通り料理をするためだ」
 ダリルは簡潔に答えた。
「痛みが消えたのならさっさと仕事に戻れ。幽体離脱クッキーとまともな料理を作り続けろ」
 イグナがキスミに仕事に戻るよう促す。
「……何だよ」
 キスミは恐ろしいので小さく文句を言ってから作業に戻った。
「……見張り効果絶大だな。さて俺も」
 ダリルはルカルカを待たせないよう調理を始めた。

 それからしばらく後、
「この幻覚茶の幻覚中和作用のお菓子を作って貰おうと思ってね。出来るよね?」
「使われている材料は危険な物じゃないよな」
 北都と白銀が幻覚茶入りのポットを持ってやって来た。きちんと全てのテーブルから回収済みだ。
「そりゃ、出来るさ。当然幻覚茶の材料は危険じゃねぇよ」
 北都に強気に答え、幻覚茶に使われている材料を二人に伝えた。