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【ぷりかる】幽霊夫婦の探し物

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【ぷりかる】幽霊夫婦の探し物

リアクション

「マスター、鳥の霊が飛んでますよ!」
 フレンディスは楽しそうに鳥の霊と一緒に空を飛んでいた。
「ご主人様、探し物はすぐに見つけてみせますよ! まずは下等生物から情報を」
 ポチの助は上空にいるフレンディスに良いところを見せようと周辺にいる霊に聞き込みに行こうとする。
 そこに
「ぴきゅう!(着地なのだ!)」
 空を飛んでいたピカがポチの助目がけて降って来た。そして、ポチの助の背中で見事な着地を決め、ちょこんと地面に降りた。
「優秀な僕の背中を着地に使うなです!」
 ポチの助はピカに吠える。
「ぴきゅう~(面白いのだ~)」
 ピカはポチの助をからかい楽しそうに跳ね回っている。
「……フレイ、頼むから大人しくしていてくれ」
 ベルクは霊体を存分に楽しんでいるフレンディスにため息をついていた。
「おー、これは面白いな」
 又兵衛は、周辺に転がる石を使ってポルターガイストを発生させていた。
 分担が人影の無い場所のため霊体の四人は青白いままだ。人が通ればびっくりだろう。
「……人影の無い場所で良かったな」
 孝高は自由に行動する霊体組に対し、疲れたように言葉を洩らした。目は周囲に対して迷惑を掛けないかと光らせている。自由過ぎるためか捜索は現在いるヴァイシャリーしか進める事が出来ないでいた。
「もし人が来たら特撮と言えばいいのだ」
 孝高の横にいる薫は霊体になった四人を楽しそうに眺めながら言った。
「……特撮か」
 薫の言葉を口にしながら特撮出演者達を見る孝高。
「本当に見つかるのか。というか古城も気になるな。掃除と住人の救出に行った事があるからあそこが曰く付きなのは知っていたんだが」
 ベルクは捜索成功までの道のりが遠いと感じ、心労のため息を洩らす。
「何かあると?」
 孝高はベルクに聞き返す。
「……そんな気がするんだよな。汚すぎる以外に……ん?」
 ベルクが孝高の問いかけに答えようとした時、連絡が入った。
 エオリアから情報を得た舞花からだった。

「……マスター」
 フレンディスが話を終えたベルクを促した。
「あの夫婦と古城についての情報だ」
 ベルクは皆に手に入れた情報を話した。
「そんな事があったんですね。早く見つけてあげましょう!」
「ご主人様、この僕も頑張りますよ!」
 フレンディスは捜索に力を入れ、ポチの助は気合いを入れる。
「よく、そんな城に住んでるな」
 又兵衛は古城の住人に感心というか面白いと思っていた。
「ぴきゅうぴきゅ~(凄い城なのだ~)」
 ピカは古城の住人に感心と呆れの声を上げた。考えればそんな曰く付きなんか住まないのが普通なのだ。

 頭捜索に戻った途端、賑やかな通りから騒々しい音が響いてくる。
「……向こうから悲鳴や大きな音が聞こえるのだ」
 薫が音をする方向を指さしながら言った。
「……嫌な予感がするな。まだ、ヒスミに遭遇していないよな」
 ベルクは未だに悪戯小僧に会っていない事からもしやと思い口にした。
「……あれかもしれないな」
 孝高もベルクと同じ考えだ。
「行ってみるのだ!」
「薫、待て。危険だ!」
 何が起きているのか確認しようと急ぐ薫を孝高が慌てて追いかける。
 その後ろを
「マスター、行ってみましょう! もしかしたらヴァルドーさんもいるかもしれません」
「おう、俺も行くぜ」
 フレンディスと又兵衛。
「ぴきゅうぴ~(何かあるのだ~)」
「ご主人様! 僕も行きます」
 ピカとポチの助。
「人に見えないように姿を消せ!」
 殿を務めるベルクが霊体三人に完全に姿を消す事を要求。
 霊体三人は急いで完全に姿を消して、現場へ駆けつけた。

「へへへ、ポルターガイストだぞ!」
 ヒスミは完全に姿を消し、通行人の耳元で囁いたり近くの物を宙に浮かせたり飛ばしたりポルターガイストを起こして通行人を驚かせている。言うまでもなく、すっかり本来の目的を忘れている。

「……明るい内から派手にやっているわね」
 コルセアの声には、見知った光景に疲れと呆れを含んでいた。どれだけ説教と痛い目を見れば懲りるのか全く限界が分からない。吹雪達三人は、捜していた標的を無事に発見出来た。何度も双子に巻き込まれたおかげで速やかに発見する事が出来た。

 そして、
「少し脅かせて来るのだ」
 本日の仕置き人であるイングラハムが『隠形の術』で標的であるヒスミにも見えないようにしてから忍び寄る。

「頑張るでありますよ!」
「……きっとこれでも懲りないわよね」
 吹雪は少し離れた所からイングラハムを応援し、コルセアは今までの事があるためか一時の効果しか無いだろうと思っている。ともかく実体の二人は、静かに見守る事にした。

 『隠形の術』使用中のイングラハムはヒスミの背後から正面に移動し、出現。
「うぎゃぁぁぁぁ!?」
 突然現れたイングラハムに驚いたヒスミの顔は真っ白。
 逃亡を防ぐべく絡みつき、無言のままチョークスリーパーで締め落とした。
「……完了だ」
 イングラハムはヒスミの気絶を確認後、仕置き完了を吹雪達に告げた。

 その時、
「もう終わったみたいなのだ」
 真っ先に現場に辿り着いた薫は孝高達とフレンディス達に振り返った。
「……そうか。見事に気絶しているな」
 二番手の孝高は気絶をしているヒスミを見て本当に大人しくなった事を確認していた。
「ぴきゅうぴきゅうぴ(見覚えのある展開なのだ)」
 ピカは既視感に声を上げた。
「……とりあえず、ヒスミをどうするかは向こうで話さないか」
 又兵衛はヒスミをどうこうするのに長くなると判断し、通行人がいない場所へ移動する事を提案した。その方がいろいろとヒスミに痛い目に遭わせる事が出来るので。

 又兵衛の提案通り、人影の無い通りへ移動した。移動時はもしもの事を考えイングラハムがヒスミを巻き付けたまま運んだ。

「騒ぎを知って来てみたら……行ってみようか」
「そうですね」
 ヒスミの騒ぎを聞きつけやって来た陽一と舞花も続いた。

 人影の無い通り。

「……ん、はぁぁ、びっくりしたぁ」
 イングラハムに護送され、地面に転がらされたヒスミがようやく目覚めた。
「……ようやくお目覚めか」
 目覚めるのを今かと待っていた捜索者代表でベルクが迎えた。
「……すげぇのが目の前に……うぉっ!?」
 ヒスミはゆっくりと上体を起こし、衝撃的な先ほどのびっくりを思い出しながら周囲を見回し、イングラハムを発見するなり顔が凍り付いた。
「元気みたいね」
 コルセアが呆れでキスミを迎えた。
「……せっかく」
 ヒスミは大きなため息をつきながらぼやく。この言葉の先は誰もが分かっている。“せっかく、人を驚かせていたところだったのに”だ。
「……ヴァルドーさんの頭を捜すのを引き受けたんじゃないのか。一度引き受けた事は最後までやらないといけないだろう」
 現れた陽一がろくな事を言わないヒスミの話に割り込み、説教の匂いを押さえ、あくまでも諭すように穏やかに捜索に戻るよう促した。
「……捜してたさ……さっきまでは」
 ヒスミは陽一の方を見ながら不満そうにやるべき事はしていると訴えた。
「……さっき、か。どれぐらい前だ。どう見ても悪さをしていただろうが」
 ベルクが厳しい口調でツッコミを入れた。まさにその通りだ。
「街の人がとても驚いていましたよ。肝試しは暗くなってからです」
 フレンディスは通行人が驚き、時には青い顔をしていた事を思い出していた。それから考えると肝試しに見えなくもない。
「確かに肝試しは暗くなってからだよな」
 捜索に戻るかと思いきやまだ悪戯したりないヒスミは何とかこの場をすり抜ける方法を考えながら立ち上がった。
「……悪い事を考えているようだったらあの怖い熊さんが頭から食べちゃうぞ」
 又兵衛がヒスミに近付き、心に恐怖が宿るように脅してから孝高の方を見るよう促した。

「……熊!!」
 ヒスミは見覚えのある人物、痛い記憶を思い出し、後ずさる。

「そうなのだ」
「……食べはしないが、少しばかり痛い思いするだけだ。平たく言えばサンドバックだな」
 薫はにこやかに笑い、孝高はしっかりと脅す。
「……ちょっ、マジかよ!? さ、さぁ、探しに行くか!!」
 脅す孝高の目が本気である事を察するなり、ヒスミは背筋を伸ばし、一時だけ真面目に早変わり。

「ヒスミがやる気になったところで、これからどうする? こちらが引き取ってもいいのだけど」
 コルセアがこれからの事を皆に聞いた。ヒスミの引き取り相談だ。
「どうするって、俺一人で行くって」
 ヒスミは不満そうに声を上げた。誰かと一緒だと監視されてつまらないので。
「一人は無しだ。俺達が行った後、すぐに悪さをするだろう」
 ベルクはヒスミの意見をばっさり切り捨てた。
「はぁぁ、真面目にやるって言っただろ!」
 ヒスミは大声を上げるが、前科があるため誰も訴えを聞くわけがない。

 そこで
「それなら俺達が引き取ろう。いいかな?」
「いいですよ。二人なので目も届きやすいですから」
 陽一と舞花がヒスミ獲得に名乗りを上げた。

「えーーーっ」
 勝手に行き先を決定され、不満の叫びを上げるヒスミ。

「……本当に大人しくしないと」
 あまりの勝手さにベルクは『死龍魂杖』を取り出した。
「な、何だよ!?」
 殴られるのかと思ったヒスミは幽霊なのですり抜ける事を忘れ、両手で防御をする。

 ベルクは、『死龍魂杖』をヒスミに向け、
「……封印するぞ」
 ゆっくりと心身に入り込むよう脅した。
 魂を吸い込む『死龍魂杖』を使えば霊体のヒスミなど一瞬で杖の中だ。悪戯が出来なくなる事を想像させる方がヒスミには効果的である。幽霊とヒスミをよく知るソウルアベレイター(魂の逸脱者)のベルクがそこにいた。

「……あ、分かった。やるって」
 『威圧』を持つベルクの脅しにヒスミは両腕を下ろして大人しく口を閉じた。

「いつの間にか時間が随分経ってしまいましたね」
 舞花が広範囲の捜索とヒスミの相手で随分時間が経過している事に気付いた。
「もしかしてヒントかい?」
「えぇ、何か書かれているかもしれません」
 訊ねる陽一に答えるも舞花は霊体化の効果が切れ、実体に戻った。
 陽一の空飛ぶ箒シーニュから降りた舞花は不可思議な籠を手に皆の前に立った。

 皆が見守る中、ゆっくりと不可思議な籠を開け、中に入れた紙を取り出す。
「……紙を開けます」
 ゆっくりと紙を開け、ヒントを確認する。

「……何が書いてあるのだ?」
 薫がヒントを訊ねる。

「……水路、です」
 紙から顔を上げた舞花は答えて紙をみんなにも見せた。

「水路か。もしかして水路に落ちているとか。ゴンドラならゴンドラと出るはずだからな」
 又兵衛がヒントから考えられる事を言う。
「でもどこの水路でしょうか。たくさんありますよ」
 フレンディスが困ったように言った。書いてあるのは水路だけでどこの街なのかは一切書かれていないのだ。
「……そうですね……あっ」
 どうするかを考え始めていた舞花はエオリアから知らせが入っていた事に気付いた。

「……どこの水路か分かりました」
 エオリアからの知らせを確認した舞花はみんなに伝えた。
「そうか。そこに行ってみるか」
 陽一がうなずいた。みんなも同じだった。少しでも可能性がある場所ならば行ってみる価値があるから。
 そして、舞花はヒスミを見張るため再び霊体になってから目的の水路にみんなと向かった。ただ、残っていたのは吹雪達だけだった。

「吹雪、捜索の方は大丈夫そうね」
「となるとあそこに行くしかないでありますよ!」
 コルセアの言葉に吹雪はもう一つの仕事を任務とした。あの古城に向かうという任務だ。

 そして、吹雪達は、安全のため会場に戻ってから霊体になって古城へ向かった。霊体になったのは、以前発見出来なかった事に遭遇できるかもしれないからだ。何より霊体ならば幽霊に聞き込みが出来るので。