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祭りの終わり

「Are you ready?OK!All right!Come on!」
 ステージの前に集まった観客を目にしながら、ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)はそう観客と空気を同調させていく。
 そうした中でこのライブに経つまでのことを思い出す。
 瑛菜達と一緒にこのライブに参加すると決めてから打ち合わせは何度もした。今日村についてからも最終確認でライブでやる曲数をバンドメンバー全員で確認。昼からのリハーサルは特に入念にやった。パートごとの音は今できるベストだとローザ自身が思った。
 ローザのパートナーであるエリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァ(えりしゅかるつぃあ・にーなはしぇこう゛ぁ)も機器の持ち込みや調整を念入りにし、ライブに備えていたりした。
『うゅ……アテナ、えーな、とドラムとかギターとか、えんそーしたい、の♪』
『ぅー、にゃっ♪アテナといっしょのライブ、嬉しい、の♪ すっご〜く、たのしみ、なの♪』
 という調整中に言っていた言葉からは本当に楽しみにしているのは伺えたたし、それでいて目は真剣だった。それはパートナーが今回のライブに……もっと言うなら、ギター、音楽にかけている情熱を知っているからだろう。

 そうしたことを経て、ローザやエリー、そしてもちろん瑛菜やアテナもこの舞台へと立っている。みんながみんなこのステージを最高のものにしようと。
 少しローザが心配しているのは瑛菜の体調だ。昨日街道の方でゴタゴタがあったらしく、世話焼きな瑛菜はそちらの方を面倒見て今日の朝まで徹夜だったらしい。声の関係もあり仮眠を少し取っただけだ。それで本当にこのライブを乗りきれるのか心配になるが、リハーサルでの瑛菜のギターはいつも通り全力ベストのもの。声も徹夜明けとは思えない力強さがあった。
 どちらにしろ、自分と同じくらいの音楽への情熱を持っていると感じている瑛菜を信じるしかないとローザは思う。
 そして、瑛菜に目で合図を送る。コクリと頷いた瑛菜とタイミングを合わせ……
『『あたしの歌を聴けー!』』
 そして演奏が始まった。

(うゅ……たのしい、の……)
 自分のパートであるドラムを叩きながらエリーはそう思う。ドラムを叩くこと、そして自分の大好きな人達と演奏すること。それはとても嬉しいことだとエリーは感じる。その楽しさと嬉しさが皆に伝わればいいと、そう願いながらエリーは自分のベストを尽くしていった。

 瑛菜は自分の体に力がみなぎっているのが分かった。そして気力もいつも以上に充填されたていた。
(期待には応えないとね)
 野盗事件が終わった後、瑛菜はゴブリンキングから薬草をもらっていた。なぜそんなことをしたのか眠たい頭ではよく分からなかったが、少し仮眠を取り、ミナホより聞いた薬草の滋養強壮的な服用をしたら、なんとなく分かった。
 きっとゴブリンは、おそらくコボルトも瑛菜たちの演奏を楽しみにしているのだと。そう思ったら寝不足気味とは思えないくらいの体力と気力が湧いてきた。それをこのライブに全てぶつける。そう思い瑛菜はローザと一緒にギターを奏で、また歌う。

 気合の入った瑛菜のリードギターにローザは華を添えるように自分のリズムギターを重ねる。そして瑛菜に負けないようにダブルボーカルで熱唱する。
 自分のすべてを出しきれるように……この自分の情熱が観客に届くように。
 そして歌い終える。
「Thanks a lot!」
 そう締めくくると観客からアンコールの声が大きく重なっていく。
「やっぱり貴方との演奏は最高だわ、瑛菜」
「ならその最高をもっと聞いてもらおうか」
 そうしてアンコールのローザたちは応えていった。