First Previous |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
Next Last
リアクション
四季の森、南方。
「カンナ、花妖精達を助けるよ」
「分かっている。ロゼ、急ごう」
ローズと斑目 カンナ(まだらめ・かんな)は花集めを他の仲間に任せ、花妖精達の救助活動を担当していた。しっかりとランタンと耳栓も装備していた。
「……ねぇ、起きてよぉ」
少女花妖精が心停止した仲間の体を泣きながら揺すっていた。
「助けに来たからもう大丈夫だよ」
ローズは少女花妖精に近付き、声をかけるなりすぐに蘇生を始める。耳栓はしたままだが、少女花妖精の表情から何を感じているのか分かっていた。
まずは『雷術』で手の平に微弱な電流を溜め、電気ショックを与えるために心臓がある方の胸に当て『蘇生術』として心臓マッサージを開始する。『医学』を持つローズの動きには無駄が無かった。
「あ、あっ」
少女花妖精は青い顔のまま体を硬直させた。凶暴化した仲間がローズの背後に迫っていたのだ。ランタンはあるが、向けている暇は無くされるがままだ。ちなみにカンナはローズが少女花妖精と接触したのを見た少年花妖精に連れられてローズから少し離れた場所へ行ってしまっている。
「……や、やめて」
少女花妖精は勇気を振り絞り体を引きずってローズにまとわりつき枝で攻撃する仲間を追い払いに行こうとするが、
「……私は大丈夫だから隠れていて」
ローズは少女花妖精の身を守るために強い口調で止めつつ治療を続ける。そもそもローズは治療に集中出来るようにと『痛みを知らぬ我が躯』で痛覚を遮断して『リジェネレーション』で傷を自動修復出来るようにしているので心配は無用だ。
「……う、うん」
少女花妖精は大人しく身を小さくして隠れている事にした。
「……もう大丈夫」
止まっていた心臓が動き始めたのを確認し、ローズは心臓マッサージの手を止めて安堵した。
ここでランタンを使って襲撃者を追い払った。少女花妖精を治療し、避難させるために。
「もう大丈夫。怪我を治療するから出て来て」
「……あ、ありがとう」
耳栓を外してからローズが呼ぶと少女花妖精は隠れていた場所から姿を現した。
ローズはすぐに二人の少女花妖精の怪我を『妖精の塗り薬』で治療した。倒れていた少女花妖精は無事に目を覚ました。
「私も何かお手伝いしたい。仲間を助けたい」
「助けてくれたお礼がしたい」
二人の少女花妖精はローズを助けたくて名乗りを上げた。
「ありがとう。それなら倒れている仲間の所に案内して」
部外者の自分よりも彼女達の方が要救助者の居場所を知っていると考えローズは手伝って貰う事にした。
「うん!!」
同時に返事をするなり、彼女達は案内を始めた。少年花妖精を救ったカンナも合流した。
少女花妖精の案内を受ける前、
「……コルトゥ」
少年花妖精は泣きそうな顔で仲間が目を覚ますのを待っている。
「……治療が終わるまでどこかに隠れていた方がいい」
カンナは襲撃者の事も考え、隠れているように指示をし、『医学』を持つカンナは手際良く人工呼吸の器具であるアンビューバッグを使用して蘇生を始めた。少年花妖精は大人しく身を隠した。
「……大丈夫?」
少年花妖精は襲撃者にまとわりつかれても治療を続けるカンナを不安そうに見ていた。「心配無いからそこにいるんだ」
カンナは構う事無く治療を続ける。耳栓をしたままだが、少年妖精が言っている事は何となく分かる。仲間を心配しているのだと。
ようやく心臓が動き出したところでカンナはまとわりつく花妖精をランタンで追い払い、自分の傷を手早く『歴戦の回復術』で治療してから呼びかけた。
「早く目を覚ますんだ!!」
少年花妖精が目を覚ますまで何度も呼びかけた。
「……ん」
ようやく目を覚ました。
「よし。もう大丈夫だ」
カンナは安堵の息を吐いて耳栓を外した。
「コルトゥ!」
少年花妖精は隠れていた場所から飛び出し、友人の側へ。
「後は怪我の治療だけだ」
カンナはそう言って予めローズから分けて貰った『妖精の塗り薬』で花妖精達を治療した。
治療を終えると
「ありがとう!! コルトゥと森の外に行くよ」
二人の少年花妖精は同時に礼を言ってカンナが大丈夫か訊ねる前に飛んで行った。
「ふぅ。こんな所で実家の教育が活きるとはね。律儀に覚えてる自分にも腹は立つけど」
カンナは息を吐きながらつぶやき、花妖精を救った両の手を見つめた。音楽を奏でる事を希望するこの両の手が医療で命を助ける事になるとは思いもしなかった。
「……今はそんなことを考えている時じゃないか。出来る事をしなければ」
両手から顔を上げ、カンナは耳栓をしてから急いでローズの元に戻った。今は自分の事よりも助けを求める人達が大事だから。
ローズ達は花妖精の案内に従う事にした。そのため耳栓は治療時のみに使用する事になった。次々と救助する中、難関がやって来た。
避難場所として花妖精が溢れる場所。
「心停止の蘇生は初めてではないけど、こんなに大人数は……」
「……避難場所として集まっていたのか」
ローズ達の視界には心停止をしている者の他に怪我で動けない者が多数いた。避難場所として集まったのはいいが、襲撃者に襲われたといった感じであった。
ローズ達は耳栓をしてすぐに治療を始めた。
「……人を呼んで来なきゃ」
最初に助けられた少女花妖精達はこっそり人を呼びに行った。ローズ達は治療に集中していて気付いていなかった。
しばらくして
「人を連れて来たよ!」
少女花妖精達が助けを連れて戻って来た。
「怪我人の治療を手伝いに来たぜ」
連れられて来たのはエヴァルトだった。
「助かるよ。えと……」
ローズは助っ人に感謝し、治療のための指示をしようとした時、
「ルカ達も手伝うよ」
「三人では手が足りないだろう」
騒がしい音を聞きつけてルカルカとダリルも姿を現した。
「ありがとう。ダリルは私達と一緒に蘇生をお願い」
ローズは医師で『博識』を持つダリルに心肺蘇生を任せた。
「あぁ。すぐに始めよう」
ダリルはすぐに蘇生に取り掛かった。
「それじゃ、俺は怪我の治療をしよう」
「あ、花妖精だ。ルカが追い払うよ。ランタン借りるね」
エヴァルトは『歴戦の回復術』で痛みで苦しむ花妖精を治療し、ルカルカはローズやカンナのランタンを借りて攻撃される前に襲撃者を追い払っていく。
無事に治療は終了し、ローズ達以外は皆祭司捜索に戻った。
「……何とか助ける事が出来た」
ローズは手助けを名乗り出た者以外、避難した今の状況に少しだけ安堵していた。
「……あぁ」
カンナも同じようにうなずいた。
「カンナ、次の場所に行こうか」
ローズは表情を引き締め、カンナと共に花妖精の案内の元次の場所に向かった。
南方での救助活動を終えて森を出た時、花冠消失の犯人や現在大変な状況である事を知らされ、多くの救助者の治療をする事となった。祭司捜索者は捜索途中にその事を知らされた。
First Previous |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
Next Last