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【ぷりかる】始まりは消えた花冠から……

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【ぷりかる】始まりは消えた花冠から……

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第五章 花冠完成


 皆の協力で集まった花やエース達によって開花した種や球根を使い無事に花冠が出来上がった。凍り付いている花はノーンと理沙によって解凍された。冠にする前にダリルが世界樹の露で水を与え、『ホーリーブレス』で活性化し、花に色艶も与えた。同時に舞花達と理沙達が運び込んだヌギル・コーラスの被害に遭った花妖精達の治療も行われた。

「……これで大丈夫」
 『医学』を持つローズは的確に『石を肉に』で石化を解除し、『治療』で猛毒を解毒した。
「……ゆっくり休んで下さい」
「すぐに良くなるよ」
 ノエルと綾乃は『浄化の札』で治療した。
「もう大丈夫よ〜」
 セリーナは『ナーシング』で治療を施した。
「……仲間を助けて頂きありがとうございます……これで犠牲になった子達も少しは浮かばれるはずです。花冠をお願いします」
 フウラ祭司は異常状態に陥った仲間を治療してくれた救援者達に礼を言った後、北で犠牲になった花妖精達を思い出し、胸が痛くなっていた。すぐに悲しみを堪え祭司としてやるべき事を全うし始めた。花冠完成こそ犠牲になった者達のためだと思い直して。

「南はルカ達が持って行くね」
「これでようやく救われるな」
 ルカルカがダリルと共に『空飛ぶ魔法↑↑』で向かった。

「木枯さん、行きましょう」
「帰り道は素敵な秋だねぇ」
 西は稲穂と木枯。

「舞花ちゃん、行こう!」
「はい。ノーン様、空から行きましょう」
 北は舞花とノーンがそれぞれ小型飛空艇ヴォルケーノと氷雪比翼で空から向かった。

「甚五郎、行きましょう! 森が変わる姿を見てみたいです!」
 東は元の姿に戻った森を歩き回りたいホリイが名乗りを上げ、甚五郎達と共に向かった。

「……」
 みのりはじっと森を見つめていたが、また見えぬ者に誘われたのか森の西方へ入って行った。
「みのり?」
「行くのか?」
 アルマーとグレンは護衛をするために急いだ。

 木枯達が花冠を巨石に捧げたおかげで秋の風景が広がる中、
「……そう……ですか……君達に……落ち着きが……戻りましたか」
 みのりの目と耳には花冠が戻り、心を鎮めた亡き人達の姿と声が届いていた。
「みのり、この森はもう大丈夫なのね?」
 アルマーが宙に青い瞳を向けているみのりに訊ねた。
「……はい……そう言って……います」
 みのりはぼそぼそと答えると体を反転させ、森の外に向かった。
「みのり!」
 グレンは歩き始めたみのりの護衛をすべく急いだ。続いてアルマーも同じくみのりを守るために動いた。

 花冠を巨石に捧げに行った者達が戻るのを待つ間。
「……」
 エースはふと自宅から連れて来たあらゆる季節の種を取り出した。結局、出番はなかったが、それでいいと思っていた。花冠には元々森で咲いている子達を使う方がいいから。
「それは?」
 エースの手の平にある種に気付いたフウラ祭司は訊ねた。
「念のため自宅から連れて来た子達だよ」
 エースは笑みを浮かべながら事情を話した。
「……良ければ、この森の仲間にしたいのですが」
 何を思ったのかフウラ祭司は種を貰いたいと言い出した。
「それは嬉しい申し出だけど、いいのかい? 喧嘩をしたりしないかい?」
 エースに異論は無いが、森出身ではない子を加えて元々の住人である植物達に何か影響が出るのではと心配をする。
「優しい人ですね、森の南の一部が再生するのを見ました。あの子達のためにありがとうございました。この森にいる子達はいつもは優しいですからあなたが持って来た子達もすぐに仲良しになります。新しい子達の力が良いように作用するかもしれませんから。特に北は犠牲者も出て酷い有様ですから。元に戻るには時間が掛かるはずです。少しでも助けになればと」
 フウラ祭司は少し再生していた南方の感謝を述べると共にエースの植物への愛に嬉しくなった。
「植物達が困っているのを助けるのは当然の事さ。この子達を頼むよ」
「はい。大切に育てます」
 エースは種をフウラに託した。
 そして、花冠を捧げに行った仲間達も続々と戻って来た。再生の状況は南はものすごい勢いで元に戻るも北は元気を取り戻したのは一部だけで全てが元に戻るにはしばらく掛かりそうであった。

「いろんな花がたくさん咲いていて綺麗でした」
 ホリイは見て来た春の様子を思い出しながら嬉しそうに言った。巨石を中心に春の花が咲き乱れ、泉もゆるりと元に戻ったのだ。

「……ところでイルミンスールの森で起きた事を知っているだろうか?」
 甚五郎は祭司に会ったら聞こうと思っていた事を口にした。
「……知っています。どこかの魔術師が実験場として使っていた森で土が獣や人の形になって森に入った人を襲うという場所ですよね。気にはなっていたのですが、ここの森を何とかするので精一杯で……あの森を元に戻した人達がいたと耳にしましたが、もしかしてあなた達なんですか?」
 森の改革好きらしくフウラ祭司はしっかりと知っていた。まさか解決した人達に会えると思っていなかったらしく驚いていた。
「ちょっとした成り行きでな。何かあの森について感じた事は無いだろうか? あのような呪いがあるのかどうかとか」
 甚五郎は苦い笑いを口の端に浮かべていた。元々森を救出するためではなく、はた迷惑な双子の兄弟喧嘩に巻き込まれて関わったので。
「……土中に魔法の気配も感じられた」
 イルミンスールの森を元に戻す事に尽力したダリルが会話に加わった。
「……私見になりますが構いませんか」
 フウラ祭司は真剣な表情で集まった皆に念を押した。確実な確証を持っている訳ではないので。
「それで構わない。あの騒ぎの犯人は他にもとある石職人の店から石を盗んだり明確ではないが少女の幽霊にろくでもない事を吹き込んだりしているんだ。それなのに正体も目的も分からない。少しでも手掛かりがあれば助かる」
 陽一がグィネヴィアを巻き込んだ事件を挙げた。正体が分からない相手ほど厄介な事は無い。
「……そうですか。あのような呪いはありますが、呪いでなくても強い想いがある森であれば自然に起きる事もあります。大切なものを守るために妨害したりこの森も現にそうですし。ただ、あの森はそんな感じがしませんでした。私は現場にいたわけではありませんから本当に憶測に過ぎないのですが」
 フウラ祭司は陽一に促され、皆に正確に伝わるように言葉を選びながら考えを話し始めるもまだためらいがあった。自分の見立てが正しいのかどうかと。もし外れていれば、後々犠牲者が出るかもしれないから。
「その感じた事を教えてくれねぇか?」
「僕達はあのような結果を目指した実験をしていたのかもしくは実験の後自然とそうなったのか色々考えてはいるんだけど不明瞭な事の方が圧倒的に多いんだよ」
 白銀と北都も会話に参加。
「……人の手に余るような事を考えたりしようとしている気がします。ただ、節操のない気まぐれであの時はたまたま試してみたんだと言われたらどうにもなりませんけど。どちらにしろその犯人に関わるのはとても危険です。現にあの森ではたくさんの犠牲者が出たと聞きましたし」
 フウラ祭司はようやく自分の意見を言い終えた。
「節操のない気まぐれか何かの目的があるか。どちらも厄介だが、どちらがより厄介なんだろうな」
 ベルクがため息を洩らした。
「相手に目的があるのならこちらも対応のしようが少しはあるはず」
 事件に関わった事があるさゆみは不快そうに言った。
「気まぐれだとしたらおふざけが過ぎますわ」
 麗は憤慨していた。グィネヴィアがいくつかの事件に巻き込まれているので仲間としては絶対に許せない。
「まさかあの森に関わった人達もいたとは思いませんでした。四季の森の祭司だけでなく森の改革好きとして感謝します。グィネヴィア様、本当に良い人達に出会えましたね」
 フウラは改めてもう一度、丁寧に感謝の言葉を口にしてからグィネヴィアに笑いかけた。
「はい」
 グィネヴィアはにっこりと笑顔で元気に返事をした。
「次はあの子を助けないといけないね」
「フォリンの事だね」
 涼介とローザマリアは残った懸念対象であるフォリンの事を気に掛けた。
「今頃、何をしておるのかのぅ。思いとどまってくれていたらよいのじゃが」
 羽純は望みが薄いと分かりながらもそう思わずにはいられなかった。

 とりあえず、四季の森は魔人ヌギル・コーラスの被害を受け犠牲者を出しながらも無事に平和は戻った。エースに貰った植物の種はすくすくと元気に生長し、森の植物達と仲良く過ごしたという。森はこれまでよりも活気に満ちた。ただ、北方だけは他よりも浄化に時間が掛かりそうではあった。

 そして、四季の森から遠く離れた場所。

「……完成だ」
 フォリンの手にある小瓶の中の液体は以前の透明から奇妙な色に染まっていた。花冠が吸い込んだ黒々としたものが溶け込んだかのような色だ。四季の森の救い主達が危惧した通り薬は出来上がっていた。
『よし、これでいい。善は急げだ。手遅れにならない内に行くぞ』
 ペンダントから聞こえる男の声はフォリンを急かし、薬を使うべき場所へと導いた。

担当マスターより

▼担当マスター

夜月天音

▼マスターコメント

 参加者の皆様お疲れ様でした。

 皆様のおかげで何とか四季の森を救う事が出来ました。予想外のアクションもあり、とても驚かされ、賑やかな内容になりました。ありがとうございました。
 そして、とうとうフォリンの薬は見事に完成し、次なる事件の準備が完了してしまいました。予見された災厄はまだ終わらず、グィネヴィアの奮闘も少しだけ続く事となります。

 それではまた何かのシナリオでお会いする機会を楽しみにしております。