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【ぷりかる】始まりは消えた花冠から……

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【ぷりかる】始まりは消えた花冠から……

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第三章 お姫様の救出


 四季の森、入り口。

 ルカルカの『テレパシー』でグィネヴィアの無事を確認した後。
「敵に襲われる前に早くグィネヴィアを見つけなきゃ。綾乃」
桜月 舞香(さくらづき・まいか)は森をにらんでから隣にいる桜月 綾乃(さくらづき・あやの)に声をかけた。突撃前の準備をしなければならない。
「任せてまいちゃん!」
 綾乃はすぐにすべき事を察し、『御託宣』でグィネヴィアの居場所をお告げで得られないかと試した。

「どう?」
 お告げが終わるなり舞香はすぐに綾乃に訊ねた。
「……泉の水が流れていない場所、色褪せて葉が黄色になりつつある木の裏側にいるみたい」
 綾乃が教えられたままお告げの結果を言葉にした。
「……葉が黄色になりつつある木はグィネヴィア様がいらっしゃるその木だけですの?」
 白鳥 麗(しらとり・れい)は綾乃に聞いた。なぜなら捜す場所は森なのでいくらでも木はあるからだ。
「そこまでは教えてくれなかったよ」
 綾乃の答えは残念なものだった。
 しかし、
「……あの、葉が黄色になっているのでしたら空から見れば分かりますよね。捜す場所の特定が空から出来るかもしれません。あ、あの、見て来ますね」
 恐る恐るリース・エンデルフィア(りーす・えんでるふぃあ)が捜索場所を絞るための提案をし、自ら空飛ぶ箒スパロウに乗って確認に行った。ナディム・ガーランド(なでぃむ・がーらんど)にグィネヴィアを助けたいと言われて来たのだが、リース自身もまたグィネヴィアのために自分が出来る事は精一杯やりたいと思い頑張っていた。
「お願い。情報はこちらでまとめるから。見えたまま教えて」
 綾乃はそう言ってリースを見送った。

 リースはマップ作りを終えるなりすぐに戻った。情報は綺麗にまとめられて皆の端末にデータとして送信された。
「捜索場所が絞られたとは言っても多いな」
 シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)はスマートフォン型の魔法携帯【SIRIUSγ】V2に送信されたデータを確認しながらぼやいた。ある程度は予想してはいたが、実際に目で確認すると余計に思う。
「……そうねぇ」
 セリーナ・ペクテイリス(せりーな・ぺくていりす)もうなずきながらデータを確認していた。
「闇雲に捜すよりはずっといいですわ」
 リーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)も細かく確認している。
「……捜す場所が多いわね」
 ヨルディア・スカーレット(よるでぃあ・すかーれっと)はあちこちに散らばる重要地点にぼやく。
「グィネヴィアさん、どこにいるんでふかね。心配でふね、リーダー」
 リイム・クローバー(りいむ・くろーばー)はデータを確認しながらちらりと隣の十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)に視線を向けた。
「あぁ」
 宵一はデータをにらみながらうなずいた。
「グィネヴィアのお嬢さんが移動していなきゃいいけどな。まぁ、まだ森に入っていないからどんな状況か分からねぇけど」
 ナディム・ガーランド(なでぃむ・がーらんど)はふと考えるべきもう一つの事を口にした。
「これだけの人数がいるのですから、移動していようがすぐに見つかりますわよ」
 麗はデータをにらみながら言った。
 この後、捜索区域の分担をしてから出発となった。
「アグラヴェイン、参りますわよ! これ以上グィネヴィア様に心細い思いをさせる訳にはいきまわせんわ」
 麗はサー アグラヴェイン(さー・あぐらべいん)を引き連れ、一番に森へ急いだ。
「お嬢様、花妖精対策はお済みですか」
 アグラヴェインは麗の装備を確認しながらグィネヴィアの分の道具も持ってしっかりと付き添っていた。
 麗の突撃を合図に皆も次々と森に入って行った。

 四季の森、東方。

「……グィネヴィア様のトラブル体質はともかく」
 麗は疲れのため息を吐いていた。原因は歩く度に襲って来る花妖精だ。ランタンで追い返してはいるが数が数だけに木の枝で攻撃されるわまとわりつくわでストレスがたまる。
「お嬢様、また花妖精が来ますよ」
 アグラヴェインが再びストレスの原因の到来を告げた。
「……また木の枝を持っていますわね」
 麗は忌々しそうに取り囲む花妖精達をにらむ。
「お嬢様、彼らもまた被害者ですぞ」
 アグラヴェインは麗が無茶をやるのではと感じ花妖精達を守るために麗に念を押す。
「分かっていますわ」
 麗は笑顔で答えるも目は笑っていなかった。もう限界に達していたのだ。
 それでもランタンを振り回して襲撃者を追い払うが、新たに現れた襲撃者の木の枝攻撃に遭った。それが限界をぶち破ってしまった。

 我慢の限界に達した麗は耳栓を外してから『龍の波動』による強烈な闘気を発しつつ
「いけない子達ですわね。わたくし達は大切な友人を捜しているだけですわよ」
 優しく語りかける。しかし、その際の麗の表情は影になってなぜか窺い知ることが出来ない上に発する声は抑揚が無く余計に恐怖を演出する。
「!!!」
 花妖精達の攻撃が一瞬にして止まる。
「あら……花妖精様達、何をそんなに怯えていらっしゃいますの? そんなに怖がらなくても宜しいのですわよ? もしかしてわたくしをお手伝いして下さるのですか。もしそういう事でしたらわたくし達も“暴れたりして皆様に迷惑をかけないうちに”この森から出られるのですけれど……。どうでしょう? 手伝っていただけませんこと?」
 麗は抑揚のない調子で話しを続ける。
「……」
 花妖精達は一様に持っていた木の枝を地面に落とし、恐怖に震える。
「……お嬢様、そのう、いくら毒々しい姿になった花妖精相手とはいえ、脅迫はどうかと思うのですが」
 花妖精達の様子を見かねたアグラヴェインが止めに入った。
「……わたくしはお願いをしていますのよ」
 麗は振り向かずに淡々とアグラヴェインに答えた。
「……お願いであると言い張られましても相手は怯えています……仕方ないですな」
 アグラヴェインは震えるばかりで何も語る気配の無い花妖精達を見てから耳栓を外してから動き始めた。

 そして、
「……よろしければ、お菓子でもいかがでしょうか。私達を助けて頂けないでしょうか」
 アグラヴェインは怯える花妖精達にハートのクッキーやシール入りチョコレート菓子を手渡した。正気でないためかお菓子を貰うなり逃げる者がほとんどで、残ったのはたった一人だけだった。
「……」
 口をもごもごさせながら草むらに向かって指をさしてからどこかに行ってしまった。

「……協力してくれる変わり者がいてくれて助かりましたな。この話を聞けばグィネヴィア様はたいそうお喜びになるかもしれません」
 アグラヴェインは草むらの方に視線を向けながら満足そうに言った。
「アグラヴェイン、まだ信用は出来ませんわよ。するのはグィネヴィア様を見つけてからですわ」
 ようやく麗の表情が元に戻ったが、不審そうな色があった。何せ聞き出したのは正気を失っている相手なので完全には使用出来ない。自分達を困らせる罠である可能性もあるのだ。
「そうですな。しかし、確認する価値はありますぞ」
「……そうですわね。この周辺はわたくし達の担当ですし」
 アグラヴェインと麗は何かと話した後、耳栓を装備し、示された道に進んで捜索を続ける事にした。アグラヴェインは他の捜索者にもきちんと情報を伝えた。

 森に入ってすぐ。
「リイム、大丈夫か?」
 宵一は花妖精であるリイムが対花妖精の道具に毒されていないか確認した。
「大丈夫まふ」
 リイムは元気に答えた。試しにと耳栓とランタンを使用中なのだが、不調を感じる様子は無い。
「対四季の森の妖精用に作られているのかもしれないな。何か不調を感じたらすぐに言ってくれ」
 リイムの様子に宵一は安心した。実は宵一が言った事は道具を運び終えてからグィネヴィアが説明するはずの事だったのだ。
「分かったまふ。その時は遮光器とハンドベルト筆箱を使うでふ。それより、リーダー、グィネヴィアさんの分は大丈夫でふか」
 リイムはこくりとうなずき、グィネヴィアの分の道具の確認する。
「見つけたら一番に渡すのよ」
 ヨルディアがすかさず言葉を挟む。
「……あぁ」
 宵一は気遣う仲間達にうなずくも複雑な感情故に実際会ったらどう声をかけたらいいのか分からないでいた。
 しかし、すぐに気を取り直して
「グィネヴィアを捜しに行こう。これ以上、独りにしておくわけにはいかない」
 宵一はグィネヴィア捜索作戦を実行する事に。心中は告白の返事よりもグィネヴィアの無事を願うばかり。もうグィネヴィアを守る事が出来れば、それでいいとすら思っているようでもあった。
「見つけるまふ」
「そうね」
 リイムとヨルディアもやる気に満ちていた。その意気込みはグィネヴィアだけでなく宵一のためでもある。
「ランタンで照らしつつ先導して行くわね」
 ヨルディアは『殺気看破』で警戒しつつ先導として里走りの術で素早くランタンで辺りを照らし歩く事に。

 ヨルディアはランタンを使い襲撃者を追い払いながら途中で得たアグラヴェインからの情報を元にして『野生の勘』でグィネヴィアの居場所を捜索する。
 宵一は『ダークビジョン』で視界の悪さを補強しアル君人形ストラップの素敵物引き寄せの力を頼りにしながらグィネヴィアの名前を呼びながら捜し続ける。
 道中で遭遇する花妖精は一度に大勢遭遇する事もあり、ランタンだけでは対応出来ない事もしばしば。その際、リイムは『風術』で吹き飛ばし、捜索のために先行させた機晶ドッグ、ラビドリーハウンド、ナナちゃんに威嚇攻撃を命じ、怯ませランタンの光を向けるための時間稼ぎをさせた。