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【第五話】森の中の防衛戦

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【第五話】森の中の防衛戦

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 同時刻 パラミタ内海付近
 
 一方その頃。
 ローザの仲間である上杉 菊(うえすぎ・きく)はイルミンスールの森の外にいた。
 パラミタの内海付近のとある場所。
 そこが作戦の決行地点だ。
 
 遠目に菊の姿は見えないことだろう。
 ちなみに、彼女の他にもローザの従者達が近くにいるが、やはりその姿は遠目には視認できない。
 それもその筈。
 今の菊達は身体中に泥を塗りたくっているのだ。
 もちろん、停視認性を実現する為である。
 だがそれだけではない。
 彼女達はもう一種類の『目』からも隠れることを目的としているのだ。
 
 ――熱感知センサー。
 それこそ、菊達が欺こうとしている、もう一種類の『目』だ。
 前回、海京での戦いの際、“ヴルカーン”bisのセンサー精度を前に手痛い反撃を許したローザ達。
 その反省を活かし、菊達は熱感知センサーを欺く為に手を打ったのである。
 
 そして今、彼女達はここに作戦の要であるイコン用機晶爆雷を埋めているのだった。
 グリフィズ・エクトゥスのハードポイントから取り外し、運んできたイコン用機晶爆雷。
 既にこの爆雷には仲間の一人であるエシク・ジョーザ・ボルチェ(えしくじょーざ・ぼるちぇ)の手によって改造が施されている。
 起爆装置を踏んで起爆するか遠隔操作、その両方ができるように小改造しただけだが、それで十分だ。
 
 それ以外にもエシクは、ドーントレスに大量の銀紙を張り付けた吹き流しを取り付ける改造も行っていた。
 囮のドーントレスだが、別々に逃げた所でドーントレスの方が質量が小さい為、相手はレーダーを見れば一目瞭然だ。
 チャフを兼ねた銀紙――アルミ箔の吹き流しを沢山取り付ける事でレーダーに映るドーントレスの機影の大きさイコン並に見せ確実に攪乱させられるよう努めるのが狙いである。
 
 当のエシクはというと、今はグリフィズ・エクトゥスと行動を共にしている。
 菊達と同じく身体中に泥を塗りたくり、グリフィズ・エクトゥスのバックパックに張り付いている頃だろう。
 直接取り付き、ブースターの周りを氷術で少しずつ定期的に冷却し熱感知センサー的にもドーントレスと見分けが付かない様に工夫をする――無茶ではあるが不可欠な作戦の真っ最中に違いない。
 
 ローザは敵の未来位置をブレス・ノウで予測を立て、微妙に針路を修正しつつ退がり確実にこのポイントまで誘導してくる筈だ。
 頃合いからして、もうそろそろだろう。
 案の定、僅かな地響きと、キャタピラが地面を高速で走行する豪快かつ軽快な音が聞こえてくる。
 
 ややあってイルミンスールの森から何かが飛び出してくる。
 現れたのは囮のドーントレスだった。