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婚活卯月祭、開催中!!

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婚活卯月祭、開催中!! 婚活卯月祭、開催中!!

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「お兄さん、一人でしょ。一人ならナンパされに来たんでしょ。それなら私とかどう? というかお持ち帰る」
 草原の片隅で、明らかに浮いているバニーコスの女が鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)を逆ナンしている。
「……え、いや……『持ち帰る』って断定されても……」
 確かに、数分――否、数秒前まで、貴仁はナンパされたいと思っていた。
 周りを見回せば皆カップルばかり。自分へのあてつけか、と憤りながらも、ナンパをする勇気はない。だから、可愛い子が声をかけてくれないかな――と、そう思っていたのだ。
 だが、決してこのような正体不明のコスプレ女に半ば拉致られるかのようなナンパされたいと思っていたわけではない。
「それでは、これで……」
 貴仁は再び、賑やかでまったりとした祭りの雰囲気を味わおうと人ごみの中に足を向けた。――しかし、前方に女は回り込んできた。
「一人でこの祭りに来たってことは、出会いを求めてるってことでしょ!? さあ、レッツエンジョイ恋人ライフ!」
「あんまり無理にナンパしたりするな。困ってるだろ」
 すばやく仲介に入ったのは、貴仁たちのそばを通った酒杜 陽一(さかもり・よういち)高根沢 理子(たかねざわ・りこ)だ。
 陽一たちはお化け屋敷などを見て回っていたのだが、何故か先ほどからやたらと周りで争いが発生するため、逐一警備員に通報しつつ諌めてきていたのだ。お化けよりも、よっぽど人間の方が恐ろしい。
 つい今も、決闘なんだかピクニックなんだか良く分からない二人の争いを諌めてきたところである。
「馬鹿な真似をして自分の価値を落とすのはやめろ」
「馬鹿な真似なんかじゃないわ……出会いというのはすなわち運命なのよ……」
 陽一の言葉に対し、女が謎の持論を繰り広げ始めたところに、ちょうど巡回していた警備員がやってきた。警備員とバニーの目が合う。

「「あ、お疲れ様です」」
 女の声と、警備員の声が、重なった。
「「……警備員だったのか!!!」」
 理子と陽一が同時に突っ込んだ。


「ようやく、よく分からない状況から解放されたな」
 陽一と理子は、屋台の立ち並ぶ区画を歩いて抜け、土産物屋の近くまで来ていた。職務怠慢のバニー警備員はもう一人の警備員に連れ去られ、貴仁は陽一たちに礼を言って人ごみの中に去って行った。やっと二人は平穏を手にしたのだ。
「土産物屋も混んでいるわね……ん?」
 理子が、店頭に置かれているお守りの前で足を止めた。
「ペアの恋愛成就お守りだって。これ、人気らしいわね」
「……しかし、カップルがペアの恋愛成就お守りを購入するという事は、そのふたりは既に恋愛成就しているのでは……」
 陽一がお守りを見ながら冷静に突っ込む。
「確かにそうね。――もしかしたら、もっと他に成就させたいこと全てを含んでいるのかもしれないわね」
「例えば?」
「うーん、もっと長い時間一緒に居られますように、とか?」 
 陽一は、そのペアのお守りをじっと見つめた。対になるウサギのお守りだ。理子と、このお守りを買って一緒に持てたらな……と陽一が考えていると、
「買ってみる?」
 と言って、理子がペアのお守りを手に取った。
「えっ、いいんですか?」
「何でダメなのよ」
 理子は笑いながら、そのお守りを手に店内へと向かった。陽一はその後を追って、周囲の土産物を見ながら店の中へと入って行った。