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【まったり過ごそう、初夏のピクニック!】

 一通り丘の周辺をぐるりを回ってみると、麓の一画に設けられた調理ブースが目につく。
 ここではBBQなども楽しむことが出来るようになっており、これもまた人気があるようだ。

 今度はこの付近を中心に、様々な人々の祭りの様子に密着した。



 董 蓮華(ただす・れんげ)金 鋭峰(じん・るいふぉん)と一緒に卯月祭の会場を回っている。いつも忙しい鋭峰だが、今日は午後から半日時間を作って、蓮華と卯月祭に来たのだ。
 蓮華は鋭峰の護衛を兼ねながら、祭を案内していた。
「賑わっているようだな」
 鋭峰の表情から感情を読み取ることは出来ないが、息抜きになっているだろうか。蓮華は内心心配しつつも、丘の麓の調理ブースへと鋭峰を案内した。
「こちらでは、簡単な調理をすることができるようです。BBQなどもできるようですね」
 鋭峰は無表情のまま、周囲を見渡した。
「BBQをした事はございますか?」
「ああ。たまにはBBQをするのも悪くないな」
 蓮華の表情がぱっと明るくなる。
「はい! よろしければ、すぐにご用意致します」
 こうして蓮華たちは、調理ブースの片隅でBBQをすることにした。
 
 炭火の上にかけた網の上に、串に刺さった肉や野菜が並んでいる。近況などについてしばらく二人が話していると、次第に美味しそうな音と共に匂いが漂ってきた。
「お取り致しますね」
 蓮華は美味しそうに焼き上がっている、幾本かの串を取って皿に乗せる。鋭峰はいつも通り何を考えているのか分からないが、少なくとも不機嫌ではない。
「どうぞ」
 鋭峰に良く焼けた串を渡してから、蓮華も自分の分の串を数本取った。
 二人が少し遅めの昼食を取り始めると、風向きが変わって涼しい風が流れ込んできた。
 初夏の爽やかな空気が心地よい。
「炭火で焼いた物って、どうしてこんなに美味しいのかしら」
 蓮華はちょうど良い加減に焼けた肉を頬張りながら、そう言って微笑む。
「――たまには、こうして屋外で食事を取るのも良いな」
 そう言って、鋭峰は次の串を取った。
「一時の休息として、楽しんで頂けたなら幸いです」
 蓮華の言葉を聞いて、鋭峰はじろりと蓮華を見た。
「……そう思うのなら、自らも根を詰めすぎず休息を取ることを忘れるな」
「えっ……は、はいっ!」
 鋭峰の突然の言葉に、驚く蓮華。
「必要な分の休息を取り、次の軍務には万全の状態で励むことだ」
「はい!」
 鋭峰は再び口を閉ざしたが、蓮華は鋭峰の言葉を身にしみて感じていた。

 二人の間はゆったりと穏やかな風と時間が流れている。