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リアクション
▼序章 タイム・リミット
◆ハルピュイア深層◆
どことも知れぬ、エレクトラの核を担う本拠……その中枢部。
巨大なドーム状の壁面に覆われた空間は、
さながらプラネタリウムのように寒色系の光線で彩られていて、
よく見ると壁面には大小様々なケーブル・パイプ類が這い回っている。
その全てのラインは、最終的に室内中央の装置に接続されていて、
装置の内部では直径10m以上はありそうな半透明の球体、
エレクトラ・コアが鼓動を刻んでいた。
第一印象としては、まるでSF映画の世界だ―――といったところか。
……そんな場所に、エレクトラのトップ・ジルバーは佇んでいた。
近くにはエレクトラの幹部・シャウトの姿も存在する。
「教導……ジンのやつ……遂に尻尾を掴んできたか。
おそらくジュリエンヌ商会が遺した情報から辿り着いたのだろうが……」
「…………」
ジンというのは、シャンバラ国軍総司令・金 鋭峰(じん・るいふぉん)のことだろう。
その呼び名は彼を指して、普段から羅 英照(ろー・いんざお)が使用している。
ジルバーは独り言のような呟きからしばらく何かを思考していたが、
やがて意を決したように顔をあげて、宣言する。
「あの拠点にはハルピュイアに繋がるゲート装置がある。
ゆえに今は、どうしても教導団に押さえられるわけにはいかん。
大きな損失が出るうえ同胞が犠牲になるのは心苦しいが……切り捨てよう」
シャウトはその言葉に振り返ると、
「…………それは、教導団の突入を待つまでもなく、
包囲されているタシガン拠点を潰すということかしら?」
ジルバーはそうだ、と相槌を打って、
「タシガン拠点には多少の防衛機能があるが、包囲網を突破できる戦力ではない。
ゲート装置での脱出も不可能だ……量産型IRISでは起動に時間がかかりすぎてしまう。
そもそもタシガン拠点は、自壊させられるかどうかも神頼みだからな……厳しい展開だ」
手遅れになる前に手を打ち、次の手を考えたい。
ジルバーはそう言いながら、コア装置に備えられた大型の制御盤に手を伸ばしかけて、
「待ちなさいジルバー。諦めるのはまだ早いわよ」
シャウトの制止の声で、ぴたりとその動きを遮られた。
「何か策があるのか、シャウト?
言っておくが時間は無いぞ……今回はこちらの対応が遅れすぎた。
万一、拠点内の同胞が大量に殺されでもしたら、もう取り返しのつかない事になる」
「時間が無いのはわかってるわ。
だから、時間も稼げる策を考えた……相手が慎重なほど効果的なはずよ」
ふむ、とジルバーは顎に手を当てる。
普段は消極的なシャウトがここまで言うのだから、それなりに勝算はあるのだろう。
あるいは、失敗してもリスクが無い策なのか。
どちらにせよ、可能な限り同胞を失いたくないジルバーにとって、
シャウトが提示するそれは一つの希望となった。
「それで、その策の具体的な内容は?」
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