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夏の雅に薔薇を添えて

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夏の雅に薔薇を添えて

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第6章 盆に踊りて縁に親しむ2





「キミ、そういう趣味があったの?」
「ちちち違うよ、アゾートさん! これはノエルに言われて…」
「どうです? 面白い姿でしょ?」


こちらも雅の夜の縁日を楽しむためやってきた風馬 弾(ふうま・だん)
付いて来たノエル・ニムラヴス(のえる・にむらゔす)、誘われたアゾート・ワルプルギス(あぞーと・わるぷるぎす)


どこからどうみても可愛い3人の女の娘なのだが……


「ノエルが『見た目がほぼ女の子なボクが、薔薇の学舎のイベントに乗り出すのはBL的な意味で危険ですわ』
 って言って、ボクに女装させたんじゃないかー!」
「でもその恰好に着替えたのは弾さん自身ですけど?」
「ノエル〜!」
「似合ってるからいいんじゃない?」
「へっ?」


アゾートからの意外な言葉に驚く弾。


「ボクには可愛い女の娘に見えるよ」
「ほーら、これで危険はなくなりましたわ」
「う〜……まぁ、アゾートさんがそういうなら…いっか……」


なんとなく丸め込まれた気がしながらも、3人…ではなく
2人の女の『娘』と1人の女の『子』の縁日が幕を開けた。


「ということでやって来ましたお化け屋敷〜ですわ」
「ここは薔薇学じゃなくて、地域の方の出したお化け屋敷なんだね」
「『薔薇侯爵と雅の館』…何だか怖い感じはしないね」


そして中に入ってみる。
突然お腹がいたくなったーと言うノエルは外で待ってることになった。


「≪ノエル、あれ絶対嘘だよな〜…≫」


そんな風に弾が心の中で呟きつつも、2人は順調にお化け屋敷を進んで行く。


このお化け屋敷の設定は単純で、入り口でもらった薔薇を最後まで持ってゴールするというもの。
この館の主が薔薇侯爵と呼ばれるほどの薔薇好きで、自身の最期に備えられた薔薇が少なかったために
悪霊化したそうな。 ということで、最後のお墓の場所に備えることでクリアだそうだ。


「お墓を通らせるのは日本っぽいけど、なんだか微妙な設定だね」
「そう? ボクはなんとなく分かるかも。 やっぱり錬金術を極めたとしたら
 賢者の石くらい備えてほしいかな。 それが完成してたらそもそも死なないけど」


変な設定のせいか、会話もはずむ。
弾も、こんな空気と女装の力か妙に緊張せずにアゾートと話せていた。


そして侯爵のお墓前。


「えっと、ここに薔薇を添えればいいんだよね。 アゾートさんのも一緒に置いちゃうね」


アゾートから薔薇を受け取りお墓に備える弾。 だがその時、アゾートの後ろから手が伸びてくる。


「もっと…もっと薔薇を……愛し、愛で、共にあり続けたい……」
「あ、アゾートさんに手を出すなぁ〜!!!」


備えようとしていた薔薇を思わず投げつける弾。


「ああっ、薔薇投げないで! 借り物で薔薇学さんに怒られるからー!」


そう言って、必死に乱れた薔薇を整える悪霊侯爵さん。
弾とアゾートは半分呆れつつ、お化け屋敷をゴールすることとなった。





「どうでした?」
「う〜ん…予想通りの微妙さ加減だったよ。 ね、アゾートさん?」
「……」
「アゾートさん?」
「…ゴメン、聞いてなかった。 何?」
「あはは…いや、何でもないや」
「ささ、そろそろ練習の時間ですわ」