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夏の雅に薔薇を添えて

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夏の雅に薔薇を添えて

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第4章 自然の中で





「えいっ!」
「おっ、やったなコイツ〜」


水を掛け合う2人。
ルカルカ・ルー(るかるか・るー)鷹村 真一郎(たかむら・しんいちろう)
丘から流れる川のせせらぎと共に2人の時間を楽しんでいた。


「真一郎さ〜ん、こっちだよ〜♪」
「待て待てールカルカ」
「捕まえてごらんなさいな〜」
「よし、行くぞー、それっ!!!」
「きゃ〜ん♪」


辺りの目なんかもろともせず全力でイチャつく2人。
他にもカップルが何組か付近で遊んでいたが、『勝てない』と悟ったのか
別の場所に移っていった。


それもそのはず、2人の周りは現実的にも雰囲気的にもお花畑であったので
ベッタベタなラブコメ展開はものすごく映えているのだ。
だが、当の2人はそんなことにも気づかないほど相手の事しか見えていなかった。
普段教導団で苦しい戦地で戦い抜いてきたからこそ、この時間を本当に大切に楽しんでいるのだろう。


「そらよっ、捕まーえた!」
「あは! 捕まっちゃ…うわっ!?」
「危ねっ!」





バシャン!





「いったた……真一郎さん大丈夫!?」
「ルカルカが大丈夫なら、俺は大丈夫だ」
「も、も〜! 真一郎さんったら……!」


真一郎が捕まえようとした時、ルカが足を滑らせてしまい川の中に転んでしまった。
幸い浅瀬だったので溺れるような事はなく、2人は笑いあう。
だが、ルカには咄嗟の事でも下になって庇ってくれた真一郎の優しさが嬉しくてしょうがなかった。


「ほ、ほらルカルカ。 一旦ホテルに戻ろう」
「ほえ? なんで?」
「このままじゃ風邪引いちまうだろ? それにその…あれだ。 ……見えてるぞ」
「ん〜……きやっ!?」


思わず胸元を隠すルカ。
そして2人もまたホテルへと戻っていた。





               ◇ ◇ ◇






「うん、プライベートって人を変えるもんだな〜」
「……ん?」
「いや、前にあった時はものすごく落ち着いてる感じだったからさ、ルカさん」
「あー! 正臣さん! ジョバンナさーん!」
「この声……ナオ? 久しぶり!」


川辺を見ていた正臣達に声をかけてきたのは千返 ナオ(ちがえ・なお)
隣にはエドゥアルト・ヒルデブラント(えどぅあると・ひるでぶらんと)もいる。
だが、2人のパートナーである千返 かつみ(ちがえ・かつみ)の姿はなかった。


「あれ? かつみはいないのかな?」
「かつみは今仕事中でね、私とナオは休憩を貰ってこの川辺で遊んでいたんだよ」
「そう、なの」
「はい。 正臣さん達も遊びに来られたんですか?」
「ああ、今回オレ達は評価委員の仕事でね」
「だったら俺達の仕事も見ていってくださいよ! ねっエドゥさん?」
「うん、そうだね。 かつみも久々に会ったら嬉しいだろうし。 それじゃ案内しますから、夜に縁日の入り口に来てください」
「夜の仕事なんですか、分かりました。 アンナもいいか?」
「う、ん。 いいよ」


こうして夜の約束をしてエドゥアルト達と別れた正臣達は、急いで仕事を再開した。


「夜までに仕事を終わらせないとね」
「ん……頑張る」





               ◇ ◇ ◇





その頃、雅のある島の周りを大型の飛空艇が飛んでいた。
雅の方で用意された空中遊覧のツアーである。
そこには隼人・レバレッジ(はやと・ればれっじ)
妻のルミーナ・レバレッジ(るみーな・ればれっじ)と参加していた。


「素晴らしい景色ですわ…」
「そうだね。 楽しく遊ぶのも良いけど、この雲海ツアーは昼の内しか
 やらないみたいだから先にこっちに行こうと思ったんだ。 ルミーナさんが楽しんでくれてたら嬉しいよ」
「わたくしも、タシガンでこんな光景を見られると思ってませんでしたからとても楽しいですわ。 ありがとう隼人」
「へへっ」


この孤島は気流の影響で霧がかかっていない不思議な空域である。
だが、基本的な環境はタシガンのそれと変わりのないものであるため、普段は中々見れないような
タシガンの鳥たち等を観察することが出来た。


振り返れば、タシガンの霧を外から見ることが出来、反対に施設には薔薇が咲き誇る美しき建築物。
さながら砂漠のオアシスの様に、霧の中の楽園はとても幻想的な美しさだった。


その時、2つの影が飛空艇に接近していた。
リネン・エルフト(りねん・えるふと)フリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)だ。


「勝手にこんな事しちゃっていいのかしら?」
「良いんじゃない? 折角だから私達も御もてなし、しましょうよ!」
「そうよね!」


2人は美しい毛並みを持ったフライングポニーで空を駆ける。
ただでさえペガサスに似たその風貌も、薔薇学によって美しく育て上げられた事と、
空賊として活動してきたリネンとフリューネのテクニックがその素晴らしさに拍車をかけていた。


「おおっ! こいつはすげぇぜ」
「こんなサービスもあるのですね、2人の飛ぶ様……美しいですわ」


飛空艇の周りを飛び回りながら、自慢のアクロバット飛行でツアー参加者たちを魅了する2人。
普通ならポニーから落ちてしまうような荒業も難なくこなし、相手が何か技を披露すれば
それに合うようにもう一方も飛ぶ。 息の合った2人のパフォーマンスはツアー参加者を楽しませた。


「お客さん、中々楽しんでくれたみたいね」
「ツアーも終わるみたいだし、私達も戻りましょ? フリューネ」
「ええ」


そしてリネン達は飛び去っていきツアーも終わり、隼人達は飛空艇を降りる。


「素晴らしいツアーでしたわ。 特にあの女性2人のパフォーマンスはとても良かったです」
「2人のパフォーマンス? お、お楽しみ頂ければ何よりですが…」
「さっ、お礼も済んだら行こうぜルミーナさん。 次は遊園地だぜ」
「そうですね。 それでは、失礼いたします」


ルミーナのお礼に首をかしげる担当業者の人であった。