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ナスティ・ガールズ襲来

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ナスティ・ガールズ襲来

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  エピローグ1 子供たち


 核ランジェリーの活動停止を聞きつけ、ファット・ガールこと花澤 愛音羽の付近に契約者が集まった。

 なかでも、真っ先に駆けつけたのは酒杜陽一である。
「理子さん……。無事でよかった……」
 最愛の人の無傷を確認した陽一は、力いっぱい彼女を抱きしめた。
 理子もまた、感謝と愛情を込め、彼を抱く腕に力を込める。


 これにて、児童施設は核爆発の危機を免れた。
 しかし、施設内に仕掛けられた瘡蓋のレプリカのせいで、その放射線量は、すでに人が住めないレベルに達していた。
 しばらくは立ち入り禁止区域となった、ニルヴァーナの児童施設。子供たちの引取り先は、まだ決まっていない。



「あら〜! あんなところにショタがいらっしゃいますわ〜!」
 カリスマ講師との戦い後、懲りずにショタを探しまわっていた退紅海松が、体育館裏で瞑想する少年を見つけた。
 彼の名は金 龍雲(じん・そうめい)。《蠱毒計画》の被害者である上、計画の首謀者が実の父親だったという、なかなかの悲劇を背負った少年である。
 事件後もショックを隠しきれない龍雲は、精神を落ち着けるため、こうしてよく瞑想をしているのだ。
「きゃー! なんて可愛いらしいのかしらー♪」
「えっ。あなたは、誰ですか?」
「小さくて可愛い男の子が好きなだけの、ただの同人作家ですわ。んちゅ……んちゅ……」
 とまどう龍雲に、海松は濃厚なキスの嵐を浴びせていた。
「こんなところで瞑想するなんて、素敵な趣味をお持ちですのね〜♪ 私もご一緒させていただきますわー」
 龍雲のとなりに座って瞑想をはじめたパートナーを、フェブルウス・アウグストゥスはジト目で見下していた。
「貴女の場合は、迷走してるんですよ」
 呆れ返った表情で、彼はそうつぶやいた。



 いっぽう、独自に核兵器を作るため、瘡蓋のレプリカを集めていた葛城吹雪はと言えば。
「うへへ……。大量であります」
 墓場喜多郎を引き連れたかいあってか、レプリカの確保に成功していた。
「これだけあれば、リア充を爆発できるでありますな」
「そうだね! 吹雪ねーさん!」
 ため息をつくコルセア・レキシントンを尻目に、謎の結託をみせるふたりだったが。
「あー! 吹雪おねーちゃん、いいものもってるー!」
 最愛の兄と親しげな吹雪に嫉妬した、墓場 百合籠によって、吹雪は密告された。レプリカはあえなく教導団に没収される。
 大量のレプリカ回収については『あくまでも事件解決のため』と言い張ったので、罪に問われずに済んだのはよいのだが。
 吹雪の野望は、また一歩遠のいたようである。



 身寄りを失い、住むところまでも失ったソフィア・ドストエフスカヤ。
 富永佐那とエレナ・リューリクは、施設の責任者と交渉していた。
「私たちが、ソフィアさんの後見人になります」
「それは大変うれしいお話です。しかし……」
 施設側が渋っている理由は、ソフィアの後遺症だった。改造手術により、精神が不安定になっている彼女を引き取ってもらうには、施設側としても躊躇してしまう。
 それでも佐那たちは、粘り強く交渉をつづけた。
 彼女たちの誠意が伝わったのだろう。施設の責任者は、ついに首を縦に振った。
「あなたたちであれば、ソフィアを安心して任せられます」

 ソフィアの後見人となった、佐那とエレナが次にしたことは、天御柱学院超能力科への編入手続きであった。
 その出自から、なにかと困難が伴うソフィアだったが。佐那とエレナの交渉は、粘り強くつづいていた。
 ソフィアが天御柱学院で、人を救うための力を学ぶ日も、いつかは実現することだろう。



「――ジブリールさん。私たちの、家族になりませんか?」
 フレンディス・ティラが、ジブリールに素直な想いを伝えた。――家族として、葦原で一緒に暮らしていきたい。
「……うん」
 ジブリールは、俯きながらそう答えた。敬愛するフレンのそばにいられること。それが飛び上がるほど嬉しかったのだが、つい照れ隠しをしてしまう。
「ただ、ジブリールさん。ひとつだけお願いがございます」
「オレの性別を知りたいのか?」
「いいえ。貴方の性別は、どちらでも構いません」
(まあ。俺は気になるけどな!)
 ふたりの会話を聞いていたベルク・ウェルナートは、心のなかで突っ込んだ。
 恋人のベルクからすれば、そこはハッキリさせたいところである。
「……私。マスターと呼ばれるのがお恥ずかしい故。ぜひ、私のことは名前で呼んで頂きたいと」
(いや、お前が言うなよ!)
 またしてもベルクは心のなかで突っ込む。フレンディスもまた、ベルクのことを『マスター』と呼んでいる。俺の事も名前で呼んで欲しいんだがなと、彼は人知れずため息をついた。
「……わかった。これからは名前で呼ばせてもらうよ。……よろしく、フレンディスさん」
「はい! よろしくお願い致します。ジブリールさん」
 ジブリールは恥ずかしそうに俯いたまま、ベルクに向き直った。
「……ベルクさんも、よろしく」
「ああ。よろしくな」
 ベルクは、ジブリールの肩を、ぽんっと叩いた。
 暖かい歓迎。ジブリールは思わず顔を上げた。
 その表情は、新しい家族ができた喜びに満たされている――。

「って、こら! 僕への挨拶はどうしたです、このターバン!」
 ぷんすかと怒るポチの助が、ジブリールの足に体当たりしていた。
「あー……。とりあえず、よろしく。犬」
「犬とはなんですかー!」
 新しい家族の登場に、敵愾心のようなものを抱くポチ。
 一家団欒……とはいかない、複雑な犬心であった。