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ナスティ・ガールズ襲来

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ナスティ・ガールズ襲来

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VS 激おこ糞糞丸


 零の不愉快な仲間たち。最後に残ったのは、キマクの激おこ糞糞丸である。
 まきぐそ姿という、かなりアレな外見のゆるキャラは、男の子と女の子、合わせて二人いた。

「あー。何か変なのがいるなー……。気が乗らね―が、ま、セレス達を護る為に頑張りますか」
 紫月 唯斗(しづき・ゆいと)が、ため息混じりに激おこ糞糞丸♂へと近づいていく。
「代王を襲って、しかも広域爆破までたくらむとは……。外道だな、おい」
「外道なのはお前たち人間おこ! 僕たち激おこ糞糞丸は、この見た目のせいでずっと迫害されてきたおこ! ゆるせないおこ!」
 叫ぶ激おこ糞糞丸♂の身体からは、メタンガスが発生した。威力小の炎攻撃《ムカ着火ファイヤー》ならいつでも放つことができる量だ。 
「まあ、そーいう事情があるんじゃ、同情の余地があるかもしれねぇけどな」
 唯斗はそう言いながらも、戦闘の構えをとる。
「ガス撒き散らして引火させられるのは勘弁だ。――さっさと潰させてもらうぜ」
 神の衣をまとって気配を消すと、素早く回りこんで『不可視の封斬糸』を投擲する。姿の見えない二重の攻撃に、激おこ糞糞丸♂は、まったく為す術がなかった。
「お、おこ……」
 封斬糸で絡め取られたまま、必死にもがく激おこ糞糞丸♂。そこへ唯斗は【武器凶化】を発動させた。
「このままだと、てめーの身体はバラバラになっちまうぜ」
「おこー! ……ま、参ったおこ! ……降参、おこ」
 激おこ糞糞丸♂はしおらしくうなだれた。敵の戦意喪失を見て取った唯斗は、封斬糸を緩める。
「……悪かったおこ。テロはもうやめるおこ」
 彼の身体からはメタンガスではなく、代わりにオーロラのような儚げな光が発生していた。



 対する激おこ糞糞丸♀に向かったのは、天貴 彩羽(あまむち・あやは)だった。
 彩羽にしてみれば、代王とはあくまでもシャンバラ体制側の象徴なので、さしたる興味はない。彼女にとって保護の対象ではなかった。
 だが、放射能汚染となると話は別だ。核ランジェリーは他の契約者にまかせるとして、激おこ糞糞丸による引火は防ぎたい。
 さっそく彩羽は、説得を試してみる。
「ねえ。あなた達はどうしてこんな事をする気になったの?」
「わたしは汚いと言われて、今までいじめられてきたおこ! だったらいっその事、この世界を汚してやるおこ!」
 激おこ糞糞丸♀はぷりぷりしながらメタンガスを大量発生させた。
 このままでは《カム着火インフェルノ》どころか、《激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム》まで発動してしまう。

「なら、そのビジュアルを生かしてみたらいいじゃない」
 彩羽はあくまでも冷静につづけた。
 彼女もまた唯斗と同様、ひどすぎる彼らのビジュアルには同情的だった。
 激おこ糞糞丸♀が迫害され凶行に走ったことを、話を聞く前から感じていた彩羽は、まきぐそ姿だからこそできる仕事を提案する。
「そのビジュアルなら、低学年の小学生とかに人気あるはず。私も、幼稚なガキは大好きだしね」
「……どんな役があるおこ?」
「そうね。例えば、肥料のマスコットキャラとかどうかしら。あるいは、トイレ系の魔人なんてのもいいんじゃない」
 その提案に、しばし考えこむ激おこ糞糞丸♀。
 相談者が現れたことに嬉しそうな表情をみせたが、やはり、まきぐそ姿には劣等感があるようだ。
「……わたしは女の子おこ。もっとカワイイ役がやりたいおこ」
 そう言いながらも、激おこ糞糞丸♀の表情は穏やかだった。
「でも、うれしかったおこ。わたしを受け入れてくれる人にはじめて会ったおこ。――わたし、汚くないおこか?」
「べつに気にしないわ」
 彩羽は何でもないというふうに、激おこ糞糞丸♀の身体に触れた。
「お……おこー!」
 激おこ糞糞丸♀は感極まっていた。はじめて自分が受け入れられたことに、嬉し泣きをしているのだ。
 すると、彼女の身体からは、なぜか花の香りが匂ってきた。
「わたし……変われる気がする……おこ」
 まばゆい光が、激おこ糞糞丸♀の身体を包み込んだ。その光が弾け、彼女の姿がふたたび現れたとき――。
 なんということでしょう。
 激おこ糞糞丸♀のビジュアルは、大輪の花に変わっていたのだ。

「これは……。《激よろ蘭蘭丸》じゃない」
 幻と言われていたゆるキャラの出現に、さすがの彩羽も驚きを隠せなかった。
 怒りから解き放たれた激おこ糞糞丸♀。彼女は喜びに満たされたことで、希少種である《激よろ蘭蘭丸》に、変化を遂げたのであった。