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ナスティ・ガールズ襲来

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ナスティ・ガールズ襲来

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  VS ジャタの食人族


 零が送り込んだ次なる刺客、ジャタの食人族に挑むのは、ハイコド・ジーバルス(はいこど・じーばるす)
「俺はツァンダ東の森、鍛治の一族ジーバルスの者だ! ジャタの森の者よ、俺と話し合うことは出来ないだろうか!」
 ハイコドは食人族たちの群れに向けて宣告した。
 彼らは八紘零によって洗脳を受けているだけかもしれない。ならば、争いはできるだけ避けたいところだ。
「改めて思うが、パラミタって一ヶ月何も事件が起こらなかったら奇跡なレベルだよな」
 パートナーの藍華 信(あいか・しん)は、いささかうんざりしたように言った。
 ここ最近だけでも、子供たちの人体実験に、異常気象に、挙句の果てには核テロときている。パラミタの辞書から『平和』という言葉を削除したほうがいいのではと、信は思った。
「まあ、そこはさて置きだ。この食人族たちは、これで何とかならないだろうか」
 どうやら話し合いに応じる気配はないようだ。――というより、言葉がわからないのかもしれない。
 それならばと、ハイコドは干し肉やおにぎりを取り出し、食人族たちに見せる。
 おにぎりには見向きもしなかったが、干し肉には興味があるようだ。食人族たちは飢えた表情で、乾いた肉へと一斉に喰らいついていく。
「ちょっと待て! 肉はまだあるから、落ち着けって!」
 全員で襲いかかられたので、ハイコドは思わず干し肉を放った。肉に群がる食人族だが、瞬く間に平らげてしまう。
 ぜんぜん量が足りない。
 肉にありつけなかった者たちは、新鮮な人肉を求めて、子供たちのいる寝室へと向かった。
「だー! 建物内だと『蒼の十字架』をぶっ放す事が出来ねぇ!!!」
 信が悔しそうに叫ぶ。機関砲もグレネードランチャーも、ここでは発砲することはできない。
 それでも身の丈程の大銃は、敵の行く手を阻む盾となる。

 人数が多すぎるため、半分ほどは二階に侵入させてしまったが、それでも残りの敵は絶対に通さない。
 蒼の十字架によって進路を封じられた食人族へ、ハイコドは新たな肉を渡した。もちろん人肉は用意できなかったものの、豚や牛の生肉ならストックがあった。
「腹一杯になったら、ある程度落ち着いたみたいだな」
「ああ。このまま、うまく説得して……」
 肉をむさぼる食人族を、ハイコドたちが手懐けようとしたその時。
「うがぁぁぁ!」
 リーダーらしき若い女性が、ボロい布の服をはためかし、とつぜん跳びかかってきた。
 ハイコドはすぐさま左腕でガードする。
「残念だが、こいつは肉じゃないんだ」
 敵をなぎ払いながら、ハイコドは不敵に笑う。
「カーボンとチタン合金のお味はどうだい? 食人族のお嬢ちゃん」
「うぅぅぅ……うがぁぁぁぁ!」
 食人女は、口をおさえて崩れ落ちた。その隙をついて、ハイコドがすぐさま神速で接近。間髪入れずに、倍勇拳をみぞおちに叩きこむ。
 振り上げられた拳がめりこみ、食人女は血を吹き出して昏倒した。
「痛いのは我慢しろよ。殺さなかっただけ良かったと思えな」
 ハイコドは威力を倍増させていたが、死なないギリギリのところで加減していたのだ。
 いっぽう信は、【潜在解放】の後【熾天使化】していた。残った食人族をビビらせ、完全に戦意を喪失させるつもりだ。
 リーダーがやられ、目の前には擬似的とはいえ熾天使までいる。
 残された食人族はおずおずと両手を挙げ、抵抗の意志がないことを示した。


「お前たちに聞きたいことがある」
 熾天使化の効力が切れて元の姿に戻った信が、彼らに尋ねた。
「なぜ零の味方をする? 零の目的はなんだ? そして――零は何処にいる?」
 信の質問に、目覚めたばかりの食人女が応える。
「……私タチハ、零ニ、洗脳サレテイタ」
「やはり。そうだったのか」
 ハイコドが気の毒そうに言う。かつて寄生獣に乗っ取られていた彼は、意識を奪われる恐怖や怒りに共感しているのだろう。
「私ニハ、零ノ目的ハ、ワカラナイ。……ダガ、零ノ居場所ナラ、知ッテイル」
「本当か!?」
「アア。本当ダ」
 思いがけない手がかりに、ハイコドは思わず食らいついた。
「どこだ!? 八紘零は、どこにいる!?」
「教エテ、ヤッテモ、イイ。ダガ、ソノ前ニ……」
 食人女はハイコドを手で制すと、もったいぶった口調でこう続けた。

「……旨イ肉ヲ、モット、食ワセロ」