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リアクション
昼、海京。
「……平行世界の住人がこっちに来てるっていうけど」
「もしかしたら平行世界の私達がいるかもしれないわね」
「それなら私は機晶姫じゃない普通の人間の自分に会ってみたいわ」
榊 朝斗(さかき・あさと)とルシェン・グライシス(るしぇん・ぐらいしす)とアイビス・エメラルド(あいびす・えめらるど)は騒ぎの事を知るなりそれぞれちょっとした好奇心を抱きつつ賑やかな通りを歩いていた。
同街のとある通り。
「ここが平行世界か。全然普通だな……というかルシェン、アイビスはどこだ? 見当たらねぇんだけど」
服の胸ボタンを少し外してだらしなく着る青年は周囲を見回した後、隣の修道服をきっちりと着込んだ女性に問うた。
「そう言えば、アイビス様のお姿が見当たりませんね」
女性も小首を傾げるばかりで行方を知らず。ここまでで分かる通りこの二人は平行世界の住人達であり。ついでに二人が捜すアイビスという人物もまた同じである。
「どうせ、そこら辺で人をからかってるだろが」
馴染みの事なのか青年は軽く言って気にする様子はない。
「……そうですね。しかし、帰還が出来るのが翌朝というのが……まだお祈りの途中で終わっていないというのに」
女性は少々困惑の顔で今の状況について感想を洩らした。
「信仰深いというか真面目というか」
青年は信仰深く真面目な女性を呆れ混じりにからかった。
「朝斗様も少々真面目になられてはどうですか」
女性は真面目な顔を少しだけ険しくして反撃。
「他人の性格にいちいち口を出すのはいかがと思うぞ」
青年は肩をすくめ、言いたい事を言うだけで取り合わない。多少不真面目だが言いたい事は言うのがこの青年の性格らしい。
「私は……朝斗様、あそこにアイビス様が」
女性は前方に三人組の一人にからむ小悪魔な色気ある美少女を発見。
「ん? あぁ、だな。また人をからかって……本当にあいつはからかうのが好きだな」
青年は美少女を確認するなりすっかり呆れていた。
「……見覚えのある顔がありますよ。もしかしたら……」
「だな」
女性は見覚えのある顔がちらちらとある事に気付き、青年も同じく気付いた。
そして、二人は急いで向かった。
「ちょ、あ、あの」
朝斗は背後から美少女に襲撃された上に絡まれ困惑しまくっていた。さすが災難に巻き込まれ易い体質だ。
「うわぁ、その困った顔、かわいい〜」
美少女は小悪魔な笑みを浮かべますますからかう。
「よく知った顔ね、アイビス」
ルシェンは小悪魔で色気のある美少女の顔を見るなり隣のアイビスに話しかけた。
「……認めたくない……こんな不埒者が……私なんて」
アイビスは美少女いや平行世界の自分をにらみ、ぶつぶつと何事かをつぶやいていたかと思ったら問答無用で小悪魔なアイビスにアイアンクローをかました。
「きゃあ!! ちょっと何するのよ!」
小悪魔アイビスは突然の事と痛みで喚き始めた。
「……」
アイビスは手を離すも表情にはまだ不機嫌の色があった。
「何するのよ……ってこちらの私じゃない」
小悪魔アイビスは怒りで攻撃した人物に食ってかかった時にようやくこちらのアイビスだと気付いた。
「えぇ、そうよ。こちらの世界のアイビスよ。生身の人間だったらどんな風なのか考えた事はあったけど、これは違うわ。というか認めたくない……肌も露出して」
アイビスは小悪魔アイビスの活動し易くと肌の露出が多少ある服にも呆れていた。
「ただ動きやすいからよ。他意はないわよ」
小悪魔アイビスは色気のある笑みを浮かべ口元に浮かべるのだった。
「……(機晶姫にならなかったら私、ああなってたのかしら……そんなはずは)」
アイビスは溜息を吐きながら小悪魔アイビスに呆れて認めたくない気持ちは強くなるばかりだった。
丁度そこへ
「悪かったな、アイビスが面倒を掛けた」
「本当にアイビス様は」
平行世の朝斗とアイビスが登場。
「……もしかして僕というか朝斗?(もし違う自分に出会えるならと思ったけどこれは……)」
朝斗は恐る恐る訊ねた。すでに心は落ち込みかけ。
「あぁ、そうだが、もしかしてこっちの世界の俺か? 小さいな」
身長170cm程の朝斗はこちらの朝斗を見下ろし率直な感想を言った。
「……まぁね(この長身で大人っぽくて男らしいのが平行世界の僕……不公平だ、余りにも酷すぎる!)」
適当に流すも胸中はあまりの格差に落ち込み涙ダラダラ。
「……しかし大変そうだね。そちら側のルシェンとアイビスと過ごして疲れたりしない?」
朝斗は長身朝斗に訊ねた。
「まぁ、慣れたら大した事ねぇよ。ただ、面倒は面倒だけど」
長身朝斗は肩をすくめながら不埒を働いたアイビスを一瞥しながら答えた。
「そうなんだ。なんかそっちはそっちで色々と相手するのが大変そうだと思って」
朝斗は慣れた様子の長身朝斗に軽く笑った。
「ところでそっちの僕は誰と付き合ってるの?」
朝斗は最も気になる事を質問した。
「唐突な質問だな。そっちは恋人でもいるのか」
平行世界朝斗は質問に質問で返す。
「……いるよ。ルシェンだよ」
朝斗はそっと平行世界の自分と交流しているルシェンを示した。
「ふぅん、ルシェンか。やっぱり違うな」
長身朝斗は自分の世界のルシェンを見るなり思わず笑いを洩らした。やっぱり世界が違えば立場も違うのかと。
「という事はいないの?(結構、もてる気がするけどなぁ。こっちを見る視線、全部彼に向かってるし)」
話を元に戻す。朝斗は行き交う女性の視線が自分ではなくもう一人の朝斗に向けられている事をひしひしと感じていた。女性は多少不良な男子が好きとどこかで言うが。
「……結構、告白はされるんだけどな」
長身朝斗は少々困ったように話すのは朝斗の予想がドンピシャのもの。
「ふぅん、やっぱりもててるのかぁ。多少不真面目なのがいいのかな」
感心し不公平なもう一人の朝斗をじっとにらむも
「おいおい、こっちを羨ましがる必要は無いだろ。美人な恋人がいるんだからよ」
長身朝斗は呆れた。
「……そうだね」
朝斗はこくりとうなずいた。
「こちらのアイビス様がご迷惑をお掛けしました」
真面目ルシェンは丁寧に仲間の粗相を謝り
「いえ、ご丁寧に(平行世界の自分がどんな者か考えていたけど……これがもう一人の私?)」
ルシェンはまじまじと平行世界の自分を舐め見る。
「どうかいたしましたか、こちらのルシェン様」
ルシェンの視線が気になった真面目ルシェンが小首を傾げた。
「違いに驚いているところよ。割と地味な服装ね」
ルシェンは端正だが厳しい顔立ちを見て一言。同じ顔でも特徴が違うのはやはり別人の証拠。
「そうでしょうか。普通だと思いますが」
肌の露出のない修道服を真面目に着ている平行世界のルシェンはルシェンの言葉の意図が分からないという顔をしていた。
「厳しくて真面目ね。疲れない?」
ルシェンは溜息を吐きながらツッコミを入れた。
「……疲れるとはおかしな事を言いますね。私にとってはこれがいつもの事ですが」
真面目ルシェンは心外というように厳しく返す。
「……どんな生活を送っているの?」
とルシェンは興味から訊ねた。
「毎日、信仰に身を捧げています。それが私の生活で幸せです。ただ、本日は祈りが途中となり……」
何とも信仰深い生活を送っている事を話すなり表情を曇らせた。
「……厳格ねぇ」
ルシェンは溜息混じりに感想を洩らした。
一通り初対面の挨拶を終えるなり
「まだ時間もあるし、もう少し一緒に過ごさない?」
朝斗はこちらの世界代表でこの後の予定について提案した。
「あぁ、それはいいな」
長身朝斗は二人の顔を見て答えを得てから平行世界代表として答えた。
そのため過ごす場所は付近の喫茶店となり、そこでも大変賑やかに過ごしたという。
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