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平行世界の人々と過ごす一日

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平行世界の人々と過ごす一日
平行世界の人々と過ごす一日 平行世界の人々と過ごす一日

リアクション


本日の騒がしさは二倍です


 イルミンスールの街。

「……また平行世界と交流機会が来るとはね。こう平和だとお互い行き来出来る方法や通信手段を残せるといいよね。そうすれば向こうの植物にも気軽に会う事が出来る。ただこれの首謀者があの子達というのが……」
 エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は平行世界の来客が入り乱れる賑やかな通りを眺め植物愛好家らしい発言をしつつも首謀者の顔見知りの双子に溜息。
「……そうですね」
 エオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)はうなずきながら想像していた。平行世界で植物愛に振り回され溜息を吐く自分の姿を。
「……エオリア」
 エースは少し離れた前方に浮いた人物と取り囲む人達を発見した。
「あぁ、あれはロズさんですね。喫茶店に入って行きますね。もしかしたらこれからの事でも話すのかもしれませんね」
 エオリアは様子から事情を察した。まさにその通りだったり。
「何か悩んでいる感じだったね。とりあえず、少尉を捜そう。もしこっちに来ているならロズさんと接触する前に捕まえなきゃ。任務優先で真相を聞き出そうとその気が無くとも詰問調になる事は想像に難くないから」
 ロズ達を見送ったエースは来ているかもしれない平行世界の自分、あのポニーテールの少し理屈っぽい言動をする騎士な頑固を持つ真面目軍人を思い出していた。
「分かりました。捜しましょう。僕も事件が収束した所で波風を立てたくありませんし」 同じ気持ちであるエオリアはすぐさま『ディメンションサイト』で周囲を確認し始めた。
「さて俺は彼女達に聞いてみるよ」
 エースは通りの脇に咲き誇る花々達を発見。
「今回は早めに切り上げて下さいね」
 エオリアは念のためにと釘を刺す。目的は時間との競争である人捜し。
「心配無いよ」
 エースは軽く流し『人の心、草の心』で聞き込みを行った。
 そして、自分達に似た二人組がここを通過した事を知り、エース達は行った先を教えて貰い進む。エオリアは捜索を続けながら『テレパシー』で少尉の女性副官である平行世界の自分に話しかけた。自分と同じく穏やかな気性なので聞き入れてくれるだろうと。
 すると、返答があり話し合い合流する事にした。

 一方。
「またこちらの世界に来たみたいですね」
「前回までの事を報告書に上にあげたばかりというのに。ロズという輩が何かしでかしたようだな。まずは状況把握だ」
 事情知らぬまま呼ばれた平行世界のエースとエオリアこと少尉とリアは元凶がロズと思い込み、今回の報告書作成のため情報収集に動き始めた。
 しばらくしてリアの方にエオリアから声なき声が届き事情説明を受けるために合流場所に行き、再会を果たした。

 再会後。
「久しぶり、前回はお疲れ様。本当に助かったよ。そのお礼も兼ねて近くの喫茶店でも」
 エースは挨拶もそこそこに近くの喫茶店へと少尉が渋るのも構わずを強制連行した。
 それによって場所は喫茶店に移動となった。

 店内。

 来店するなりエースは少尉達に隙を与える事無くケーキと紅茶を注文してから事情説明を始めた。
「……つまり、今回の元凶はその悪戯好きという双子がやらせたと。しかし……」
 少尉はエース達の説明により今回の騒ぎについて真実を知る事が出来た。しかし、前回ロズが起こした騒ぎの処遇に対してまだ納得が出来ないでいた。
 頃合いよく注文した品が運ばれ
「ロズさんの事はもういいんじゃないかな。一連の騒ぎもイイ感じに処理出来たんだし、本人も気に病んでいる感じだったからそっとしておいた方が、そういう時に責められると思った以上に堪えるし、相手は民間人。苛めるのは可哀想だと思うけど」
 エースはと紅茶を飲みつつ少尉の説得を続ける。
「そうですよ。報告書はエースさん達から聞いた事で何とか作りましょうよ」
 リアはエース達の意見を汲んでしっかりと進言する。
「それがいいよ。今回ここに来たのは休暇だと思って観光でもどうかな。報告書の事なら二つの世界の違いについて書けばいい」
 ケーキを食べながらのんびりのエース。
「……確かに聞いた内容ではそちらの言い分に一理あるが……観光か」
 杓子定規の少尉は観光という言葉に難色を示し、厳しい顔。いくら両世界の差違に興味はあれど軍人は軍人。
 ここで
「少尉、元凶の双子についてですが、おそらくその辺をうろついているはずですから遭った際はお説教でも何でもして良いですよ」
 少尉を動かすためにエオリアが双子が怒るような事を言った。
「……確かにそうだな」
 少尉は納得した。
 ひとまず、ここでお茶とケーキを楽しんでから店を出てエース達の案内でイルミンスール魔法学校に行く事にした。

 店を出た後。
「そちらの世界がどうなのかは知らないけど、ここのイルミンスールの自然もなかなかに多様でね……」
 エースはイルミンスール魔法学校へ案内する道々、植物について延々と語っていた。
「……エースさんは植物がとても好きなんですね」
「優男だけでなく植物偏愛付きか」
 リアは性格から迷惑そうな顔は浮かんではいなかったが、少尉はもう一人の自分という事で多少複雑そうであった。
 これ以上はまずいと判断したエオリアは
「エース、話はそこまでにして下さい。もうそろそろ目的地ですから」
 いつものように止めた。丁度目的地も随分見えて来たので。
「ん……あぁ。あそこが学校だよ」
 止められたエースは間を置いて我に返り、近付く学校を指し示した。

 学校に到着し校内に入るなり
「あれが元凶の双子だよ」
 エース達は廊下を慌ただしく行くこちらの双子に遭遇した。
「……あれが」
 少尉は厳しい目で双子をにらんでいたかと思ったら双子達の前に立ち塞がり
「何をしようが構やしないが、他人に迷惑はかけるな」
 自分の紹介無しに開口一番に文句を垂れた。
 双子は少尉の言動に一瞬驚くも顔見知りのエース達の存在を知るなり
「……平行世界の人か、何かあったのか?」
「こちらの奴に会ったみたいじゃん。迷惑って面白くなかったのか」
 ヒスミ・ロズフェル(ひすみ・ろずふぇる)キスミ・ロズフェル(きすみ・ろずふぇる)は口々に口を開き好き勝手な事を言い出した。
「いや、別にこちらの自分に会うのが迷惑という訳では無いが……」
 キスミの言葉に少尉は微量ながら様子をおかしくし、歯切れが悪くなる。
 そんな少尉を見るなり
「なら、いいじゃん。行こうぜ」
「ヒスナ達、作業どこまでしてくれてるかな」
 双子達はさっさと実験室へ行ってしまった。

「行ってしまいましたね」
「いつもあのような感じです」
 見送るリアにエオリアは溜息混じりに言った。何せ双子の騒ぎに巻き込まれるのはこれが初めてではないので。
「……(さっきの発言、こいつツンデレか)」
 エースは少尉の予想外の反応に胸中でこっそり思っていた。
 ともかくこの後、観光は再開され、エース達は少尉達を大図書室へ案内した。

 大図書室。

「なかなか楽しいですね。色々と興味深い資料が沢山でもしかしたらこちらの大図書室の方が資料が豊富かもしれません」
 リアはあちこちの資料を満足げに見て回っていた。
「それは良かったです」
 エオリアは客人の満足な様子を見てもてなす方として嬉しく思った。
 しかし、
「ただ、ゆっくりと、詳しく見れないのが心残りですね。これからも行き気出来る方法はないのでしょうか」
 リアは翌朝の帰還の事を思い出し、表情を曇らせた。
「そうですね(ロズさんがいれば何とかなりそうですが)」
 胸中考える事はあれど明確には答えられないためエオリアは無難にうなずくだけだった。
 この後、エース達の案内で少尉達はあちこちを観光し、別れの際エオリアはお土産にと少尉とリアに必殺の牙と水霊の宝珠を贈った。