校長室
平行世界の人々と過ごす一日
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イルミンスールの街。 「もう一人のルカがいるぅ? もしかして見たら死ぬっていうドッペルゲンガー!?」 エリザベートと茶会を楽しんだルカルカ・ルー(るかるか・るー)はすれ違った人に自分をつい数分前に見たと有り得ない事を言われ仰天。 「……絶対会わないようにしないとっ」 ルカルカはぷるりと肩を震わせた後、警戒しつつ歩き始めた。 一方。 「またここに来る事が出来るとは思わなかったなぁ」 平行世界のルカルカことルカはのんびりとこの世界を楽しんでいた。 通りを歩いていた時、 「あ、あれはこの世界のルカだ」 前方にドッペルゲンガーと勘違いしルカを警戒するルカルカの後ろ姿を発見。 そして、 「おーい」 片手を上げて陽気に声をかける。 しかし、 「!!」 相手は声を聞くなり振り向く事無く脱兎の如く走り出した。 「ありゃ? どうして逃げるのかなぁ」 予想外の反応にルカは手を上げたまま困惑したように逃げるルカルカを見ていた。 「あぁ、なるほど、追いかけっこカクレンボの挑戦状だね。ふふん、負けないよ!!」 すぐに事情を了解し、ルカはルカルカを追いかけた。了解した事情が間違いとも知らずに。 追いかけっこは案外続き、カフェテリア『宿り樹に果実』に立ち寄るルカはルカルカの時間稼ぎ作戦でモーニングを食べる嵌めになったり、舞台はイルミンスール魔法学校に及び、大図書室で司書に注意されたりと賑やかだったが。 最後に立ち寄った中庭にてルカルカは捕まるもダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が二人いる所を見てようやく理解した。 「あぁ、平行世界のルカだったんだ。よーし、今度はこっちが鬼するよ」 少し落ち込むもルカルカはすぐに元気になりノリノリのルカと第二ラウンド開始。 校内から街の外に出てすぐにルカルカ達は何やら悪戯中の双子達に遭遇した。 「ヒスミとキスミ、何してるの?」 「ヒスナとキスナ、その蝶、作ったの?」 ルカルカとルカはそれぞれの双子に声をかけた。 「ヒスナ達の作製した機械と俺達が作製した魔法の融合だ」 「今、鳥かご一つ空にした所」 ヒスミとヒスナ。 「少し時間が経ったら面白い事になるんだ」 「みんなびっくりだよ」 キスミとキスナ。 「ルカ達も飛ばしたい!」 「ルカもやる」 ルカはノリノリにルカルカはそれにつられるように悪戯に参加。残り一つの鳥かごを空にした。ひらりと飛ぶ大量の蝶に見惚れると同時にあちこちから悲鳴が飛んできた。 当然、原因は 「ヒスミ、やっぱりあの魔法薬の量多過ぎだったんだよ」 「ヒスナ、あの機械部分の調整やり過ぎだったんだよ」 双子の兄姉のやり過ぎによるものだった。 「キスミも乗っただろ。イベントは派手な方がいいって」 「そうだよ」 反論するヒスミとヒスナ。いつもの展開が繰り広げられた。 「それじゃ、平和を取り戻すために蝶捕獲開始だよ」 とノリノリのルカ。 「おー」 ノリノリのルカに乗り双子達もノリノリ。 「もぅ、四人は。きちんと蝶を捕まえるんだよ」 ルカルカは少し厳しく言い渡した。 とにもかくにも蝶採りが開始された。途中、双子達はルカルカ達と別行動で捕獲に勤しむもサボり仕置き人達に痛めに遭わせられながらも後片付けを終えて学校に帰還した。 校長室。 茶会を終え、ルカルカを見送った後、 「魔術師の件が片付いたとはいえ、まだ厄介な件が残っているな」 ダリルはエリザベート達と話し合っていた。 「そうですぅ」 とエリザベート。 「……調薬関連に名も無き旅団があるというのに、あの二人は……」 アーデルハイトは疲れの溜息を吐き出していた。 「平行世界の住人をこちらに呼び寄せた事か。今の所、クレームはきていないんだろう」 ダリルはアーデルハイトの溜息の理由を察した。 「うむ。それだけが救いじゃ。本当大変な時に……」 アーデルハイトは空笑いを浮かべてはまた溜息を吐き出した。 「あいつらは懲りないからな」 散々双子と関わった事のあるダリルはアーデルハイトの心中を察し、言葉に同情を込めた。 その時、 「ルカが行方不明になったのだが知らないか」 この場にいる皆の顔馴染みが現れた。 「お前も来ていたのか」 ダリルは顔馴染み、いや平行世界の自分に声をかけた。 「あぁ、お前か。それで知らないか?」 平行世界ダリルは再会を楽しむ様子は無くただ用件を聞くばかり。 「いいや、知らない」 ダリルは再会の挨拶が無い事など気にせずに問いかけに答えた。 「そうか。ここに立ち寄っていると思ったんだが、他を捜すしかないか」 用事を終えた平行世界ダリルはきびすを返し、部屋を出て行こうとする。 「せっかく来たのにもう行っちゃうですか? 少し休んでいったらどうですか〜」 エリザベートは同化現象事件の際に護衛をしてくれたお礼とばかりに誘った。 「そうだな。丁度……」 平行世界ダリルは誘いを受けるなりちらりとダリルの方に厳しい視線を注ぐ。 「またあの時の話か?」 相手の言葉の先を知るダリルは遮った。 「さすが俺といったところか」 「そうだな。しかし……」 ダリルと平行世界ダリルはまた同化現象で共闘した際のルカルカに対する態度、互いの差について口論を始めた。 「それでは剣として切れ味が鈍る」 「流石にそれは聞き捨てならん」 平行世界ダリルとダリル。平行世界ダリルはこちらと違い戦闘では前衛を担当しルカルカを主と認識しているのだ。 口論の末、 「ほう、では確認してみるか」 「あぁ、是非して貰おうか」 ダリルは平行世界ダリルの挑発に乗った。 二人は試合をするために中庭に移動した。興味と万が一を考えエリザベート達も付いて行った。 中庭。 「禁止事項は以上だ。異存は無いな」 「あぁ、無い」 使用出来るのは『光条兵器』だけと試合の説明を終えた平行世界ダリルはダリルに念を入れるも当然異存は無い。 「では試合を始めるですよ。いいですか?」 エリザベートの用意確認に 「あぁ」 「頼む」 ダリルと平行世界ダリルは剣術訓練用の片手剣それぞれ構え完了を知らせる。 そして、 「始めですぅ!」 エリザベートの試合開始の合図が空に響く。 同時に『光条兵器』を発動。 ダリルは外見籠手から伸びた剣の先端から射撃するも平行世界ダリルは回避し、両手剣で迫る。ダリルは身体をずらして難なく斬撃を避ける。ちなみに『光条兵器』は攻撃先を選べるため互いに非殺傷。 「……(やはり俺だな)」 「……(動きは読めるがこちらも読まれるな)」 平行世界ダリルとダリルは互いをにらみつつ、思考する。相手が自分であるため回避は容易いが攻撃は届かない事を。それから意表を突く攻撃を仕掛けるも意表を突く事にはならず、拮抗するばかり。 その末、 「……」 互いの剣を突きつける結果となり 「試合終了! 引き分けですぅ」 終わりを告げるエリザベートの声が響いた。 互いに武器を下ろし、 「……引き分けか」 「……当然の結果といったところか」 平行世界ダリルとダリルは言葉とは裏腹に互いの力を認め合った。 その時、ドッペルゲンガーに追い回され中のルカルカがやって来て今回の事情を知るなりまた飛び出し、再び戻って来たのは双子の悪戯が収束した後だった。ダリル達は双子達をみっちりと説教をし、怖い気迫が双子達を怯えさせたという。